STORY アフラック vol.1

女性社員の活躍で新たな価値創造を

アフラック
古出 眞敏社長インタビュー

アフラックは1997年に国内生保業界で初めて女性役員を登用、2014年に「女性の活躍推進プログラム」をスタートさせるなど、他企業に先駆けてダイバーシティ推進に取り組んできた。7月1日付で就任した古出眞敏社長(57)は「多様な考え方を持った人財による新たな価値の創造が、アフラックの成長戦略に欠かせない」と男女問わず活躍できる環境整備の意義を強調する。

ダイバーシティ推進「成長戦略に欠かせない」

――女性社員が全体の約半数を占め、多くの女性が活躍している企業というイメージが強いですが、なぜダイバーシティ推進に力を入れてきたのですか。

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1998年に銀行からアフラックに転職。「男女対等の職場は新鮮だった」と語る古出眞敏社長

「生活者のライフスタイルが多様になるなか、大きく変化しているマーケットのニーズに対応するには、私たち自身が多様化していかなければなりません。高度経済成長期やバブル経済期のように、企業が一致団結して1つの目標に向けて突き進むほうが強みが出る時代も確かにありましたが、今はそのような経済環境ではありません。多様な考え方を持った人財による議論を通じてイノベーションを生み出し、アフラックの企業理念でもある『新たな価値の創造』につなげていくことが成長戦略だと考えています。特にアフラックであれば、女性活躍の推進が最大の力になります」

――古出社長が1998年にアフラックに入社した時、どう感じましたか。

「私は、当時4年制大学卒の総合職女性が少なかった銀行から転職してきました。アフラックでは一般職と総合職の区別もなく男性と女性が全く同じように仕事をしており、非常に驚いたと同時にとても新鮮で強い印象を受けました。主要な部署に女性の部長や課長がいて、職場では男女が対等にやりあっていました。いつの間にかその状況に慣れていましたが、2013年の終わりごろから14年にかけて改めて(幹部に占める女性比率などの)データを分析してみたら、目立つポジションに女性がいるものの、全社的な数値でみれば低いことが分かりました。これを契機に14年9月から具体的な数値目標も盛り込んだ『女性の活躍推進プログラム』をスタートさせました」

女性のキャリア形成を積極的に支援

――女性の活躍推進プログラムでは「2020年末時点で(課長代理以上の)指導的立場に占める女性社員の割合を30%以上とする」との目標を掲げていますが、具体的な施策はどのようなものですか。

「重要6領域を定めています。まずは社長による『経営トップのコミットメント』です。ダイバーシティ推進が重要な経営課題であることをトップが宣言し、全役職員の共通認識としてきました。次に『推進体制の強化』です。14年10月にダイバーシティ推進室を立ち上げ、16年には部格に昇格させました。また社長が委員長を務めるダイバーシティ推進委員会も設けています。さらに『女性のキャリアアップ支援』にも注力してきました。初年度は課長代理手前の女性社員に対し、キャリア意識の醸成を目的とする研修を重点的に実施し、2年目からは対象を若手社員や課長、部長、役員など各層向けに広げたほか、キャリアアップを支えるスキル研修も強化しました。新入社員や内定者にもダイバーシティ研修を実施しています」

「社員のキャリア形成を後押しするためには上司の理解も欠かせないため、『管理職向けのダイバーシティ研修』を継続的に実施しています。また、ダイバーシティ推進と両輪の関係にある『働き方改革』にも本格的に取り組んでいます。アフラックは外資系でありながら日本的な会社でもあります。夜遅くまで残業している社員を、それだけで単に頑張っていると評価することにならないよう、『業務プロセスや評価プロセスの見える化』も進めています」

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アフラックはダイバーシティ研修を女性社員だけでなく管理職、新入社員、内定者などに対象を広げている

――結婚や出産などライフイベントに影響を受けやすい女性社員のキャリア形成を、どのように支援していますか。

「キャリアアップを考える場やキャリアアップに挑戦する機会がなかったために昇格をあきらめていた女性たちがいます。会社の支援で『それならやってみよう』と昇進を目指す女性を1人でも多く生み出していきたいと考えています。例えば、キャリアアップを考える場では何年後までに課長代理になる、といったような具体的なキャリアプランを、上司である管理職には部下の育成計画を作ってもらいます。そしてこの2人がキャリアプランと育成計画を持ち寄って面談をし、その内容をダイバーシティ推進部がチェックします」

「この取り組みを始めたことで、管理職と部下とのコミュニケーションが不十分だったことも浮き彫りになりました。管理職が女性社員とキャリア形成を考える機会を設けることは、女性だけでなく男性部下とのコミュニケーションや育成、ひいては管理職自身のキャリアプランにも生きてきます」

女性の視点、経営や商品開発に生かす

――コーポレートガバナンスや経営判断に女性の視点をどう生かしていますか。

「現在6人の女性役員がいて、うち2人が常務です。アフラックの最高位の審議機関である経営会議にはこの女性常務2人が出席しており、非常に活発で建設的な意見が出ています。女性部長もたくさんいます。正直申し上げて、女性のほうが頼りになる局面もあります(笑)。保険の新商品開発では女性だけのワーキンググループを作り、女性の意見を吸い上げる仕組みにしています。それでもまだ発展段階であり、真のダイバーシティではありません。本来であれば、男性と女性が議論をして当然のプロセスとして女性の意見を取り入れる仕組みでなければなりません」

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「ダイバーシティ推進の波及効果は大きい。会社組織と人財の活性化につながる」と強調する

――長時間労働が社会問題になる中で、多くの企業が取り組みを急いでいる「働き方改革」の手ごたえは。

「当社では、2014年に本格化したダイバーシティ推進との両輪の関係にある働き方改革にも積極的に取り組んできました。これは、単なる短時間労働、柔軟な働き方にとどまりません。『視野を広く持つ』『目的を考える』『自分から動く』『対話を重ねる』『時間を意識する』の5つを仕事の進め方基本指針とし、それぞれの英語の頭文字を取って『SMART』となることから、当社ではこの取り組みを『Work SMART』と呼び、推進しています。当初、会社全体の1カ月あたりの平均時間外労働時間を前年比で15%減らす目標を掲げ、15年は22%の大幅減を達成しました。16年はさらに前年比10%減の目標に対し、15%減らすことができました。かつてノー残業デーを設けていましたが、効果は一過性のものでした。今回はダイバーシティとWork SMARTという大きな文脈の中で単に残業を減らすだけでなく仕事のやり方を変えたことで達成できました。いい意味でびっくりしています」

「例えば午後5時以降は部をまたぐ会議を禁止しました。会議の目的をはっきりさせることに加え、開始、終了時間の厳守も徹底しています。また在宅勤務を実現するため、テレワーク用のノートパソコンを社員に貸与しています。昨年は管理職全員に在宅勤務を経験させ、今年から全社員に対象を広げて実験中です。在宅勤務に向いている部署かどうかや不便な点はないかなど、様々な意見を吸い上げ改善していきます。当社には片道40分ほどかかる東京都新宿区と調布市に大きな拠点があり、それぞれに自由に使えるオフィスを設けています。例えば調布勤務の社員が新宿に来たら、わざわざ調布に戻らなくて済むようにしています。そもそも社員がわざわざ他のオフィスに来なくていいよう新宿、調布や地方支社をつなぐテレビ会議システムも積極的に活用すべく、体制を整備しています」

――新社長としての抱負をお願いします。

「アフラックがダイバーシティ推進に大きな一歩を踏み出した2014年、私は担当上席常務として当時の社長とともに関わってきました。特にダイバーシティ推進の波及効果は大きいと実感しており、女性の活躍推進や時間外労働の削減など、目に見える成果が出ています。例えば女性のキャリア形成支援が上司と部下のコミュニケーションの改善をもたらすように、会社全体の組織、人財の活性化にもつながるよう、私も社長として引き続き強力にダイバーシティを推進していく姿勢を示していきます」

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