日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。" alt="日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。 日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。" alt="日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。 日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。 日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。

社業のグローバル化を支える――地域型社員にも赴任の道

法人営業の中村知子さんを支えるのは同僚とのコミュニケーション(ニューヨーク)

 自宅のアパートメントは小船のように揺れる。停電が発生し、スマートフォンの電池が切れると何もできなくなるんじゃないか――。米ニューヨークの現地法人に赴任してわずか3カ月。まだ慣れぬ地で見舞われた巨大な自然災害に、東京海上日動火災保険の中村知子さん(42)の心は不安感に包まれていた。

 2012年10月に米国東部を襲った巨大ハリケーン「サンディ」。上陸が満潮と重なったこともあり、世界の金融市場の中心地であるウォール街や国連本部も居を構えるマンハッタン島を襲った高潮は4メートル以上に達した。スマホを握り締める中村さんの不安は自身に対するものだけではなかった。「(保険契約を結ぶ)お客様は大丈夫だろうか」。顧客企業や自社から届くメールを開く際にスマホを操作する指が緊張で震えた。

 翌朝、地下鉄が止まったマンハッタンを中村さんはジーンズとアウトドアシューズで歩いた。信号機が消えて人通りの少ない五番街を抜け、20分余りかけてオフィスに到着。顧客企業がいち早く業務を再開できるように、被害状況の把握を急いだ。オフィスや倉庫が浸水した顧客もあった。水が引いてもすぐにオフィスが使えるわけではない。床や壁を洗浄し、電気系統も修理が必要だ。傷んだ什器や設備は交換を迫られた。保険の支払い金額を速やかに査定すると同時に、困り果てた顧客に比較的低コストで請け負ってくれる災害復旧サービス会社も紹介した。「おかげで助かりました」。現地の顧客から寄せられた声に中村さんは「保険金の支払い以外にも、損害保険会社が果たせる役割を改めてかみ締めた」。

■本音で話せる仲間に

「米国で学んだ経験を日本でもしっかり役立てたい」と話す中村さん

 東京海上グループは11年末から米デルファイ・フィナンシャルグループ、マレーシアのMUIコンチネンタル・インシュアランスと海外企業の買収を立て続けに発表。日本企業の海外展開を保険業の立場で支えることを中心に、グローバル展開を加速している。総合職で入社し、主に法人営業のキャリアを積み重ねてきた中村さんにも昨年(2012年)、米国赴任の話が舞い込んだ。「どこに行っても新しい発見はあるはず。せっかくのチャンスだから頑張りたい」。正直な気持ちを打ち明けると、はじめは言葉を失っていた夫も「頑張ってきなよ」と背中を押してくれた。

 世界最大の保険市場である米国では、各国の大手保険会社がネットセキュリティーに対する補償など最先端のノウハウを競い合う。管理職の中村さんにとって、仕事のやりがいと厳しさが交錯する日々を支えるのは同僚たちとのチームワークだ。赴任前は人間関係がドライなんじゃないかというイメージを抱いていたが、「日本と同じで、ちょっとした気遣いが職場の連帯感を強くすることに気づいた」。保険の契約条件を決める専門職の社員にどうしても早く特定の案件を優先してほしいときは、「忙しくて大変ね」と話しかけ、「こういう風にやってみたら」とさりげなく仕事の優先順位を振り分ける。仕事が終われば、一緒にグラスを傾けることも。残りの赴任中に、どれだけ現地社員と本音で話せる仲間になれるかが大きなテーマだ。

■勇気をくれた上司の言葉

 「これは私がやるべき仕事なんじゃないか」。ニューヨークから北米大陸を横断した西海岸のロサンゼルス。今年(2013年)7月に赴任した石川直美さん(45)は使命感を持って海外勤務に挑戦した。19年間にわたる岡山支店勤務で培った「事務のプロ」としてのノウハウを現地流にアレンジしながら移植することがミッションだ。

石川直美さんは岡山で培った事務ノウハウをロサンゼルスでさらに磨く

 本来なら転居せずに同じ地域での勤務を続ける「地域型社員」の石川さん。海外赴任を実現したのは「JOBリクエスト」と呼ばれる人事制度だった。地域型社員でも立候補すれば他の地域で働ける可能性がある。昨年末に社員専用サイトで「LA(ロサンゼルス)における事務プロセス改革」の人材募集を見つけた。保険会社にとって、事務部門は契約書類や手続きのミスを極限までなくすことで顧客満足と収益を生み出す重要な役割を担う。岡山であらゆる事務業務に精通してきた石川さんのなかで、いつか違う場所でも腕試しをしたいという気持ちに火がついた。

 前向きな意欲だったものの、ひとつ不安なこともあった。「右足が少し不自由なんですよ。本当に海外で働けるかなと」。揺れる気持ちに勇気をくれたのは米国勤務の経験がある上司の言葉だった。「普段から足のことを言い訳にせず、努力して働いているじゃないか。ぜひチャレンジしてほしい」。気持ちは固まった。過去数回の五輪観戦をはじめ、海外でのスポーツ観戦が大好きで、外国人の選手や観客との交流を楽しみたい一心で通信教育の英会話を続けていたことが新天地でも役立っている。

■小さなことにも誠意を

 キャリアを重ねてから海外に羽ばたいた2人の女性社員に仕事に対する姿勢を尋ねてみると返ってきた答えは同じものだった。「小さなことにも誠意を尽くす」。ニューヨークの中村さんは、これまでの仕事を振り返れば壁にぶつかったり、敗北感を味わったりしたことの方が多いと話す。それでも日々の仕事を丁寧にこなし続けることで「周りの人が必ずどこかで見ていて支えになってくれた」。

 石川さんも渡米を決意させた上司の言葉を思い出し、「普段の地道な努力がチャンスをつかめるかどうかを決める」と話す。最近、現地スタッフからロサンゼルス支店内の勉強会に参加しないかと声がかかるようになった。同僚の問い合わせにすぐ返答したり、分からないことを恥ずかしがらずに聞いたりするうちに、「何とか事務プロセスを改善したいという私の気持ちや立場が伝わり始めたのかもしれない」。国境を越えても、毎日の仕事の積み重ねが人と人のつながりを生み出し、大きなプロジェクトの原動力になっている。

社内公募で希望の地域へ異動

 東京海上日動は2002年から、約7,800人の「地域型」社員を対象に「JOBリクエスト制度(Iターン・Uターン異動)」を立ち上げた。通常、転居を伴わず、特定の地域内で働き続ける地域型社員に対して「配偶者の転勤で勤務地域を変えたい」「大都市の拠点で管理部門の経験を積みたい」といった要望にこたえられるようになった。希望する地域や役割は社内公募を経て決定。13年度は女性社員102人が活用した。急な退職などで人手が一時的に足りなくなった地域の支社などに異動する「短期JOBリクエスト制度(お役に立ちたい)」も11年に開始。北海道や東日本大震災の影響が大きかった東北を中心に、20人の異動が実現している。地域型社員であっても様々な風土や環境を経験することで視野が広がり、成長につながるきっかけになっている。
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