日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。" alt="日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。 日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。" alt="日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。 日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。 日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。

チームワークで営業の前線に――子育て経験もキャリアの礎

「成功体験を積み上げて欲しい」。15人の部下と営業の前線に立つ。

 下町の新名所、東京スカイツリーに程近いJR錦糸町駅。2013年夏の猛暑を目前に控えた7月1日、プラットフォームに降り立った東京海上日動火災保険の三浦時子さん(47)の表情はいつもより緊張していた。この日は慣れ親しんだ横浜の営業拠点を離れて東東京支店での勤務初日。だが、心の高ぶりはそれだけが理由ではなかった。

 「自然体でいくしかないな」。営業所の入ったオフィスビルの入り口でそう自分に言い聞かせた。そして初日の朝礼。営業チームの中心にいたのは三浦さん。15人の部下を抱える管理職に抜擢されたのだった。「主役は皆さん。全力でサポートするから失敗を恐れずにやりましょう」。チームのマネジャーとして初めての「方針」だった。そして自らの信条を披露。「謙虚な姿勢、真摯な態度、誠実な対応でベストを尽くす」。この信条に従った三浦さんのチーム運営が始まった。

 課長として着任した専業第5チームは、江東区や墨田区で保険代理店の顧客拡大を支援する。就任早々に新マネジャーとして動き出した。着手した取り組みのひとつが地震保険分野だった。11年3月の東日本大震災から2年余りが過ぎ、地震保険に対する意識はやや薄れてきたといわれる。顧客との加入状況を確認して地震保険のメリットを改めて訴えることにした。欠かせないのが代理店の協力。若手の営業担当が代理店に必要性をうまく伝えきれない時には代理店主との面談に同行。理解が得られた後は部下に任せた。チームワークを重視し、仕上げは「主役」である部下を前面に出す。この姿勢の背景には周囲に支えられ、今のポジションを築いた三浦さん自身のキャリアがある。

■事務から営業へ、一歩踏み出す

勤務時間帯を1時間繰り上げられる制度を使い、子育てと仕事を両立した。

 東京都内の短大を卒業した三浦さんが東京海上日動に入社したのは、会社説明会で接した社員のはきはきした話しぶりや明るい社風に魅かれたため。東京都世田谷区の支社で一般職として保険の契約事務に就き、25歳で結婚した。転機が訪れたのは、その3年後だった。

 「営業担当をやってみないか」。上司の提案を受けた当時、営業担当はほとんどが男性。女性の多くは事務担当だった。外回りの経験はなかったが、背中を押したのは新人時代の成功体験だった。何か代理店の役に立てないかと、契約で間違いやすいポイントなどを自分なりに考え、見やすくまとめて配った。「分かりやすい」と喜ぶ声が届き、社内報にも紹介された。一歩前に進むことで周囲にも喜んでもらえる、そんな手ごたえを覚えた。

 30歳で出産した際も職場の仲間や家族に支えられた。産休後は勤務時間帯を変更できる「マイセレクト制度」を使い、通常より1時間早く出勤し、1時間早く退社した。子供が急に発熱し、保育園にすぐ迎えにいかなければいけないこともある。「限られた時間の中で仕事の優先順位をはっきりさせ、仲間に仕事をお願いするときは言葉で感謝の気持ちをきちんと伝える」。新人時代に指導役だった子育て中の先輩女性の姿も思い出し、チームワークを大切にする働き方を模索し続けた。

 後輩を指導する立場になると仕事の重圧は増す。「自分で成果を上げるのではなく、いかに皆で結果を出すかが問われた」。忘れられない思い出が数々ある。クレーム対応に追われた際、後輩が「営業の数字は私たちがカバーします」とスクラムを組んでくれた。横浜時代、タクシー会社への営業では、後輩のアイデアで運転手の接客研修を提供。信頼を得て大口契約につながり、チーム一丸となった取り組みが実を結んだ。成約時にはタクシー会社の担当者が営業所までお礼を言いに訪れ、思わず目が潤んだ。

■多様な働き方を支援、広がる女性登用

 現在、部下15人のうち14人は女性だ。主任の水下純子さん(30)は「公私ともに色々な経験を積んだ三浦さんからは具体的なアドバイスを受けられる」と話す。女性が活躍できる背景には会社全体で進めた改革もある。04年に東京海上、日動火災の2社が合併し、人事制度を変更した。国内外に転勤する可能性がある「全国型」、転居を伴う異動のない「地域型」の2通りの働き方を用意し、どちらの社員も同じ基準で評価する仕組みを整えた。また、保険商品・システム・事務手続きを徹底してスリム化する「抜本改革」を実施。事務時間が減ったかわりに新たな営業時間が創出され、女性社員の活躍の場が広がった。08年からは「役割改革」として「男性は営業、女性は事務」という固定概念をなくし、個々人の強みを生かした業務分担を始めた。

オフの日は食べ歩きや体を動かすことで気分転換を図る。

 女性を中心とする地域型の営業担当は約1350人。08年度との比較で約11倍に増え、課長以上の役職に就く女性も145人と同3倍に上る。地域型である三浦さんは管理職として、同じ働き方を選ぶ後輩の相談相手になることが多い。東東京支店の中里克己支店長(50)は「部下の立場で仕事を考えられ、明るい性格と周囲への気遣いで代理店さんの支持も集まっている」と評する。

 「お母さんってキャリアウーマンなの?」。学生時代の三浦さんと同じ、バスケットボール部に所属する高校2年生の息子とは仕事の話もする。試合で自分の役目を果たせたという話を聞くと、「チームワークを大切にすることが伝わっているのかな」と少しうれしくなる。仕事と家庭の両立だけでなく、休日は食べ歩きやスポーツにいそしむ。今後の目標を聞くと「英会話も学びたいし、せっかく赴任したのだから下町グルメも開拓したい。欲張りなんですね」。キャリアウーマン以外の顔がのぞいた。

育児休業の取得者は4倍強に

 東京海上日動は04年から育児支援の制度を拡充してきた。現在では「育児フルサポート 8つのパッケージ」と呼ぶ仕組みで、妊娠期から子供が小学校低学年に育つまできめ細かく支える。同社の育児休業者数は12年度で538人。制度改革直後の05年度(118人)に比べて4倍強に増えた。会社の制度設計ばかりでなく、休業中の女性社員が情報交換して復職への意識を高める「すくすく会」、復職後に短時間勤務を選んだ女性社員が「育児をしながら仕事で成果を出す」ことについて意見交換を行う「カンガルー会」などでもママ社員の活躍を後押ししている。
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