日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。" alt="日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。 日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。" alt="日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。 日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。 日経ウーマノミクス・プロジェクト 女性一人ひとりが、自分らしく生きる。女性が、柔軟に、働き方や暮らし方を選べる、そんな日本にしたい。だから、日本経済新聞社は、女性が今よりもっと活躍できる環境づくりを応援します。

1枚の提案書に込める顧客への思い――プロ意識が支える設計の力

入社2年目で本社の設計部に配属され、「先輩らと全国の物件を見て回った」ことが設計士としての引き出しを広げた

 “武器”はイラストを描く際などに用いる水性ペンだった。2007年、大阪府北部地域を代表する住宅地として知られる高槻市で、他社との競合になった二世帯住宅の設計プラン。入社3年目で一級建築士の資格を取得して1年ほどの若手設計士だった森田久美さん(33)は、A3版1枚の手描き図案に顧客への思いを込めた。

 「家への出入りや部屋間の移動など、人の動線にはこだわりました」。親子といっても生活サイクルが違えば互いへの配慮は必要だ。1階に配置した親世帯のリビングを子世帯の動線から外してプライバシー性を高めるなど、敷地の制限の中で可能な限りの工夫を施した。開放感のある屋上にも両世帯からアプローチできるようにし、住む人の楽しさも追求した。プロとして最大限の努力をしたかった。

 気がかりだったのが、設計にこだわったあまり費用が競合他社より1割以上高くなってしまったこと。多くの人にとって人生で最大の買い物となる住宅では、設計内容に関係なく価格差で顧客の選択から外れることもある。「この価格差では厳しいかもしれないが、設計に込めた気持ちをお伝えしたい」。要望を踏まえた上で住みやすさを突き詰めた提案であるとの思いを伝えるため、プレゼンテーション用の図案を水性ペンで手描きした。動線へのこだわりなどは文字にして書き込んだ。そこには通常のプレゼンで使う、CAD(コンピューターによる設計)図面にはない温かみと実際の生活をイメージしやすい分かりやすさがあった。

■成功で生まれた信頼と自信

顧客の使いやすさを盛り込むだけでなく、視覚的なイメージを提示することに力を入れる

 「このプランを見てしまうと、他社で建てたいとは思えない」。提案の結果は顧客からの言葉に表れていた。「自分たちがこの家に住んでどう生活するのか、すごくイメージが湧きました」。顧客と思いを共有できた瞬間だった。さらに、実績を上げたことが設計士としてのキャリアを切り開くことになった。営業マンの信頼を獲得したことで、顧客訪問に同行してほしいという営業部門からの依頼が増えた。それまでは顧客の視線に「なんだ、若い女の子か」というニュアンスを感じることも多かったが、成功体験によって自信を持って提案できるようになった。今でも手描きへのこだわりは強い。「お客様への思いを込めやすいんです」

 住宅設計に興味を持ったきっかけは幼稚園に通っていたころ。自宅を新築した際に、様々なプランを検討する母親の姿を見て「家の設計って何だか面白そう」と思った。数学が好きだったこともあって神戸大学工学部に進んだ。大学では建築学を学び、積水ハウス入社後はグループの建設会社で施工なども学んだ後、本社の設計部も経験した。建売住宅の設計や住宅展示場の設計の手伝いなどを重ねて、顧客本位の視点と設計士としての腕を磨いた。

■管理職だけがキャリアアップの道ではない

構造材や外壁など建築部材の知識も豊富に蓄えて、理想の家づくりを貫きたいと話す

 設計士としてのスキルは会社も認めている。その証がジャケットの左襟にある「CA(チーフアーキテクト)」と刻まれたバッヂだ。CAは積水ハウスの社内資格で、設計業務に携わる一級建築士の中から、顧客や社内の評価が高い人材を厳選して任命する。現在勤務する阪神支店(兵庫県西宮市)では唯一の存在で、全社的にも女性のCAは4人しかいない。上司の勧めで資格審査に挑戦したものの、4年前に受けた1回目の審査では不合格だった。こだわりの強い顧客と向き合いながら経験を積み、12年に受けた2回目の審査で合格した。

 CAには営業からの依頼が多く舞い込むため、常に複数の仕事を抱えて「いつも仕事のことを何か考えている」。多忙な日々を送るが、まとまった休みが取れれば友人らと旅行に出かける。昨年(13年)はスペインへ渡航。アントニ・ガウディの設計した建築物を見て回った。有名なサグラダ・ファミリアだけでなく、一般住宅でもデザイン性などの優れた点がいくつもあった。優れた設計を見ることは仕事への刺激になるという。

 同世代の社員には設計長などの管理職への昇進を意識する人も多いが、「自分は組織を管理するよりもお客様に最高の住まいを提案し続けたい」。会社への貢献の仕方は管理職になることだけではない。「CAのような技術の専門職としても道もあり、会社もそれぞれを評価してくれていると思う」。自分の生かし方しだいでキャリア形成の選択肢は広がる。自分が入社したころと違って、最近は社内に女性の設計士も多くなった。「先輩から教わったことをしっかりと伝えていきたい」。次の世代の活躍にも期待している。

チーフアーキテクト(CA)

チーフアーキテクトは胸の社員章に専用の「CAバッジ」を着けられる
 全国の支店で働く設計社員のレベルアップを図るため、積水ハウスが08年に導入した社内資格制度。支店で設計業務に携わる一級建築士のうち、顧客や支店内で信頼されているかを評価する1次審査、年間に手掛けた数だけでなく、少なくとも4軒の設計プランの質を評価する2次審査を経て選抜される。認定者には、さらに感性を磨くための「特別研修費」が支給される。有効期間は2年間で、取得後もCAとしての評価や一定以上の高いレベルの仕事が継続できれば資格を延長できる。13年末現在で同社のCAは全国に100人弱、女性は4人のみという。
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