STORY 大和証券グループ vol.3

多様な「私」がつくり出す、未来志向のリーダーシップ

大和証券キャピタル・マーケッツ アメリカ
賀 贏さん

大和証券グループ本社の米国拠点、大和証券キャピタル・マーケッツ アメリカの賀贏(が・えい)さん(34)は昨年4月、東京から米ニューヨークに赴任した。それも、まだ2歳の長男を連れて。目標を見つけたらまずやってみる。考え続ければ必ず解決策が見つかる――。生まれ育った中国から日本企業に就職したときも、子連れで海外転勤したときも、困難を乗り越えるのを前向きに楽しんできた未来志向の心が持ち味。めざすのは、多様なバックグラウンドをもつ「私」ならではのリーダーシップを海外を舞台に発揮することだ。

異国の地で育児と両立

賀さんに取材したのは新型コロナウイルスの流行で外出が難しかったころ。ニューヨークの賀さんの自宅と東京を電話会議で結んでインタビューが実現した。

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賀さんは2019年4月、長男を連れて東京から米ニューヨークに転勤した。母子二人の"子連れ単身赴任"

自宅で子育てをしながらの仕事――。新型コロナの影響で在宅勤務が広がり、世界中の多くの人が四苦八苦しながら体験したが、賀さんにとっては日常茶飯事。いつも朝早くに起き、東京からのメールをチェックする。時差の関係で夜になりつつある東京と、まだ連絡がつく時間帯。急ぎの案件に返信をしてから、長男と朝食を取り、保育園に連れて行く。長男の体調が悪いときはリモートで自宅から会議に参加することもある。

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ウォール街を舞台に活躍中。写真奥は街の象徴である牛の銅像「チャージング・ブル」

財務部の駐在員として月末や四半期の締め作業をアシストするほか、現地法人の予算や実績について、東京の担当者への説明なども担う。「東京から現地、現地から東京に何か相談したい場合は必ず私を通して話すことになる。自分があいだに立つことでスムーズに進むと、本当にやりがいを感じます」。保育園に通う料金やベビーシッターの費用補助、リモートで対応できる業務システムなど、社内のサポート制度を活用しながら賀さんはフルタイムで働くことができている。

賀さんにニューヨーク転勤の辞令があったのは、長男の育休から職場復帰して1年がすぎて間もないころ。同社で女性が子どもを連れて海外に赴任するケースは初めてではないものの、1~2歳という幼少の子どもは、日本に残すにしろ、連れていくにしろ前例があまりなかった。当時の上司には「大丈夫か?」と何度も心配されたという。一方、転勤を相談した夫の第一声は「やったね、おめでとう」。もともと夫は性別にかかわらずキャリアをどんどん築いていくべきだという考えの持ち主で、子どもが生まれてからも賀さんを海外出張に送り出すなど、積極的に家事・育児を分担しながらキャリアアップを応援してくれていた。米国での生活は長男にもプラスになると夫婦で結論。子連れ駐在のチャレンジに踏み出した。

カルチャーギャップに直面

賀さんが異国の地に飛び出すのは2度目のことだ。中国で生まれ育ち、上海外国語大学で日本語を専攻した。日本に興味を持ったきっかけは中学生のころにテレビで見た人気アニメの「美少女戦士セーラームーン」や「名探偵コナン」。大学で語学だけでなく文化や古典作品などを学ぶうちに、日本で働いてみたいと考えるようになった。

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生まれも育ちも中国。中学生のころ友人と日本のアニメを楽しみ、日本に興味がわいた

卒業を控え、上海で開催された日本企業が集まるキャリアイベントに参加。いろいろな業界について学べると考え、金融機関のブースを中心に見て回り大和証券と出会った。「日本屈指の証券会社で自分を成長させて、トップレベルの国際人材になろう」。そう心に決め、2008年に入社。さっそく得意の英語力を生かし、海外のファンドを顧客に日本株のセールストレーダーとしてキャリアをスタートさせた。

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上海外国語大学の卒業式で、同級生とおどけたワンシーン

その後、投資家向け広報(IR)関連の業務を経て財務部に移ってからも海外とやり取りする仕事が続いた。国際的なポジションで経験を積んだ賀さんだったが、ニューヨークに赴任してすぐのころにカルチャーギャップに直面する。

ある日のこと。業務で必要な資料を、現地スタッフが管理するパソコンの共有フォルダから何の気なく取り出して使った。しばらくして、賀さんの席にやってきたそのスタッフに注意されたという。「ここは私のフィールドだから」。そう言われてハッとした。日本では仕事のチームメンバーでさまざまな情報やメールのやりとりなどを共有して仕事を進めるのが当たり前。しかし現地の考え方は違った。自分の担当業務に対して「この分野のプロだ」という意識が強い。「確かに担当者に確認しなければ、それが最新版の資料なのかどうかもわからない。質問や相談をすればフレンドリーに応じてくれる。相手の担当を尊重して仕事を進めるスタイルを学んだ」(賀さん)

自分の多様性を広げて

賀さんの強みは新たな世界に飛び込む勇気だけではない。生来の好奇心の強さ、何かを達成する努力を惜しまない性格からさまざまな目標に挑戦してきた。

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休日は長男と地元の友人宅を訪ねたり、郊外でリンゴ狩りをしたり。カナダ国境にある「ナイアガラの滝」など遠方まで足を伸ばすことも

産休・育休中には簿記と宅建の資格を取得。簿記は業務の上でわからない知識をクリアにしたいという動機があったが、「宅建は趣味」。合格率十数パーセントという難関資格に駆り立てたのは、夫が仕事の関係で不動産の専門用語を賀さんとの会話で使い、「わからないでしょう」と冗談交じりにからかうから。悔しくて、なじみのない日本語の法律をひたすら頭に叩き込んで一発合格した。今は夫との会話だけでなく、仕事で一緒になった人と共通の話題になることもあると楽しげだ。

異文化を伝えていく活動にも力を入れる。日本で勤務していたころから人気を集めていた賀さんの「中国語クラブ」。中国語を学びたいという同僚の一言がきっかけで、朝の始業前の時間を使って30分程度の講座を始めた。テキストを作って、発音や簡単な文法を教える。ニューヨークでも「開講」して、現在メンバーは8人まで増えたという。

賀さんがニューヨークに赴任する前、子どもを連れて海外で拠点長として活躍している先輩女性に相談する機会があった。賀さんもいつか中国、日本、米国というバックグラウンドを武器に、海外拠点長としてチームをまとめ、会社に貢献していきたいという未来を描く。ニューヨークに駐在しているうちに、顧客対応などにあたるフロント部門がどう回っているのか、リスクをいかにモニタリングすればいいのか、資金はどのように動いているのかを細かく知る。東京に戻ったら、企画部門で会社の全体を見られるようになる――。賀さんのキャリアデザインは膨らんでいく。自分の中にある多様性をますます豊かにし、新たな挑戦に向かって周囲をぐいぐいと引っ張っていきそうだ。

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「トップレベルの国際人材になりたい」。社会に出たときの目標を着実にかなえつつある

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