STORY アフラック vol.7

育休8カ月取った「ファーストペンギン」、ワーパパの両立モデルに

アフラック生命保険 契約管理企画部
大津 慶一郎さん

アフラック生命保険の大津慶一郎さん(37)は、埼玉総合支社に勤務していた2019年に8カ月間の育児休業を取得した。2018年から男性社員の育児参画に力を入れている同社だが、8カ月という長期の育休取得者は初めてだった。育休経験で大津さんは育児の大変さを身をもって知り、復職後は子育て中の女性社員に対する見方が変わったという。共働きの妻とともに育児とキャリアの両立を目指し、アフラックの「ファーストペンギン」として男性社員の育児参画に弾みがつくことを期待する。

手厚い育児休業制度~給付金は夫婦ともに支給

日本で育休を取る男性はまだまだ少ない。厚生労働省によると国内の男性の育休取得率は6.16%(2018年度雇用均等基本調査)。前の年より1.02ポイント上昇したものの、8割台で推移する女性とは雲泥の差がある。アフラックは男性社員の育児参画を促す取り組みを2018年から本格化。育児休業の最初の5営業日を有給にし、退職金算定の勤務年数にも算入する制度を始めたところ、男性の育休取得率は2.6%から94.5%へと一気に高まった。ただ取得期間は大半が1週間程度。厚労省調査でも男性取得者の7割強が2週間未満の短期にとどまる。

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大津慶一郎さんは通信教育で社会保険制度を勉強中。育休を取得するきっかけになった

大津さんは入社5年目の2009年に結婚。大手銀行に勤務する妻が2018年に待望の第一子を妊娠すると、育休の取得を思い立った。「ともに実家が遠く、簡単には両親にサポートを頼めない。妻ひとりに育児の負担を負わせたくない」というのが第一の理由。また自己啓発のため社会保険労務士の資格勉強をちょうど始めた頃で、国の育児休業制度は手厚いと感じていた。「社会全体で働き方の意識も変わってきている。社会保険を学ぶ一環として自らも育休制度を活用してみよう」との思いもあった。

「僕も半年以上の育休を取ろうと思う――」。自宅で妻に提案すると、喜んでくれると思いきや驚いた顔で質問された。「男性がそんな長い育休を取れるの?」。そして、2つのことを心配されたという。「2人とも休業したら収入は? それにあなたのキャリアに影響しないの?」

育休中の家計のことは「心配はいらない」と伝えた。結婚して10年間、夫婦2人で頑張って働いてきて経済的に困っているわけではないこと、育休中は賃金の一定割合(67%または50%)分の育児休業給付金が2人とも国から支給されること、社会保険料が免除されることなどを説明。妻も制度の内容を知ると納得した。ちなみに大津さんが復職後に同僚から受けた質問で多かったのも育休中のおカネの話。「共働きの夫婦で給付金が2人ともに出ることを知らない人は多いですね」

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「国の育児休業制度の内容を詳しく知れば、育休取得を考える人は増えると思う」

半年前に会社に相談、上司は取得を後押し

自らのキャリアパスについては正直、少し逡巡した。入社してこれまで仕事優先で生きてきた。同期入社のなかで昇格ペースも先頭集団に入っている。このときは埼玉総合支社でグループリーダーとなる支社次長を務めていた。ただ14年間懸命に働き続けたからこそ「子供が生まれるタイミングで、少し立ち止まってもいいのかな」との気持ちが芽生えたという。「他の人がしないことをする人も組織には必要だろう。働き方改革が叫ばれているし、男性社員の長期育休取得の先例になろう」との思いで決断した。

妻の妊娠が安定期に入った2018年初夏、上司に育休取得について相談した。相談を受けた埼玉総合支社の中井陽子副支社長(当時、2020年1月よりショップ推進部長)は、男性社員が育児をすることを大歓迎。「育休は取得しなさい。期間も希望どおり取るといい。あとに続く後輩のためにも」と全面的に背中を押してくれた。「育児という、このうえもなく大変で、そしてかけがえのない時間はなぜ女性だけのものなのか。男性が望むのであれば、ぜひ経験してほしい。人生でやりたいことを公私ともに実現していく社員が増えることで、会社はもっと強く魅力的に成長していく」と中井さんはいう。

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育休取得は半年前に上司に相談した。中井陽子副支社長(当時)は「組織の準備期間としてありがたい」と話す

大津さんの家庭に男児が生まれたのは師走になってしばらくしてから。半年前に上司に相談したのに続き、2カ月前からは身近な同僚に育休の取得予定を伝え始めた。実際に育休に入ったのは妻の出産から3週間後の年明け2019年1月から。「年末は最も忙しい季節。人事異動がある1月のタイミングに合わせれば現場の混乱は少ない」との判断があった。育休入り後、大津さんが担っていたチームリーダーの役割を引き継いだ細井美枝支社長補佐は「早めに伝えていただいたので気持ちの準備ができた。業務の引継ぎも負荷なくできた」と振り返る。

大津さんがもう一つ心配したのは、育休明けに自分が「浦島太郎」にならないかという点。業務から離れている間、会社で起きていることを長期間知らずにいるのはやはり不安だった。アフラックのダイバーシティ推進部はこうした社員の不安を減らすために、会社のイントラネットを閲覧できるタブレット端末を休業中に貸与する制度をスタートさせていた。大津さんは端末を借り受け、育休中はときどき自主的に社内情報を参照。「会社全体の大まかな動きを把握できたので助かった」と話す。

育児を経験し、初めて見えてきた世界

初めての育児は最初の3カ月が特に大変だったという。夜泣きにどう対処したらいいか分からない。ミルクが足りていないことに気づいたのはしばらくしてから。慣れるまで慌てることもあった。夫婦で役割分担は決めずに何でもやったが、寝かしつけと妻が母乳を与えているときのミルクづくりは大津さんが担当した。「不思議ですね。息子と一緒にいる時間が長くなるほど愛情がどんどん深まるんです」。仕事中心の生活からの転換。妻と息子とたっぷり過ごす時間は家族の絆を深めた。

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育児に積極的にかかわることで子供への愛情も深まっていくと感じている

8カ月間どっぷりと育児を経験したからこそ見えてきた世界がある。「夫婦で協力する子育てでも苦労する。これを一人でこなすワンオペ育児は孤独感やストレスを生むという世間のママの悩みが分かるようになった」。大津さんは当初、育休6カ月で復職しようと考えていたが、妻の希望もあって2カ月延長した。9月に復職してからは妻がワンオペを感じないようにフレックス勤務にして朝の子供の世話をしたり、週末は妻が自分の時間を取れるようにしたりするなどのサポートを心がけている。「もし育休を取っていなかったら、もっと横柄だったかもしれませんね」

復職後は会社でも女性社員に対する見方や接し方が変わったと自覚する。社内には子育て中の女性社員が多くいるが、子供の病気などで急に休んだり早退したりすることに、以前は心から共感することが少なかったと打ち明ける。「仕事だけに集中できる環境では、育児・家事と仕事を両立する大変さを実感として理解できなかった。働くママにもっと優しくしておけばよかったと反省した」

いまは子育て中の働く女性、ワーママに対しては、限られた時間でマルチタスクをこなす能力に尊敬の念に近い感情を抱く。さらに働く人それぞれに多様な価値観があることを意識できるようになった。「仕事だけがすべてではない人もたくさんいる。仕事をもっとしたくても、できない人がいることに気付いた」と相手の気持ちに寄り添えるようになった。「イクメン」の経験は「イクボス」としてのマインドを養う効果がある。

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育休から復帰してからは「以前よりも部下や同僚に共感する力が養われた」と感じている

男性の育休、社会の理解広げたい

男性の長期育休をめぐる世間の見方はまだ一様ではない。大津さんの育休取得について取引先などからは「さすが先進的でいい会社ですね」「これからはそういう時代でしょう」と好意的な声が多かったものの、一部からは「8カ月間、何していたの? 暇だったでしょう」と皮肉を込めて言われることもあったという。それでも社会全体では男性の育休に対する理解が広がっていることは肌で感じた。大津さん自身も育児の苦労を経験したからこそ、育休の必要性を実感したところがある。だからこそ自らの経験を、社会の理解がさらに広がる方向に役立てたいと思う。

育休取得は「周囲に迷惑をかける」と後ろめたさを感じる人も多いかもしれない。しかし大津さんの仕事を引き継いだ細井さんは「役職が一つ上の方の仕事を任せてもらえたのはありがたかった。ピンチではなくチャンスととらえてモチベーションになり、自分の成長につながったと思う」と話した。細井さん自身も子育て中のワーママであり「男性の育休はもっと広がってほしい」と願う。「これまで女性の育休のしわ寄せが男性にいっていたとするなら、男性も育休を取って平等というのがあるべき姿ではないでしょうか」

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周囲の仕事と育児の両立をサポート。自らも「第2子が生まれたら間違いなく育児休業を取得したい」

最後に大津さんに、これから後に続く男性の育休取得者へのアドバイスをお願いした。「育休は最低1カ月以上取らないと、一緒に子育てをしたという実感が得にくいと感じました。個人的には生後の3カ月間がしんどかったので、その期間の育休は配偶者にとっても大きな支えになると思います」。大津さんにとって8カ月の育休経験は家族と向き合うとともに、キャリア人生を見つめ直すいい機会にもなった。2020年1月に契約管理企画部業務管理課の課長代理となり、また新たなキャリアがスタートした。仕事と家庭のバランスを大切にする「ワーパパ」として自ら両立を目指すとともに、部下や同僚の両立もしっかりとサポートしていくつもりだ。

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