特集
育児シェア、ポイントは見える化とコミュニケーション
2019.01.21
「保育園の送り迎え、我が家だけでなく、お父さんが来ている率は年々上がっていると思う」「ダンナが育休取ってくれた!」――。ジブンらしさ研究所の女のホンネアンケートで「育児シェアする男性、周囲でふえてきた?」と尋ねたところ、こんなコメントが寄せられました。YESの回答は62%。育児は家族が協力・分担して進めるということを、ようやく日本でも認識されてきたようです。でも、まだまだという声もあります。シェアと言われても...と戸惑う方もいるでしょう。どのように考えていけばよいのでしょう。育児に関する情報サイト「コモドライフ」の編集長を務めるピジョンの平田武さんに聞きました。
家庭ごとに分担法を相談

「厳しいコメントもありましたが、パートナーも一緒に子どもに向き合うんだという意識は高まっているようですね」。結果をみた平田さんは切り出しました。「最近のパパは子育てに積極的だと思う」といったホンネもあるように、「育児は女性」といったひと昔前の思い込みは解消されているようです。
一方で、NOという方の意見をみると「『頼まれたベビー用品を仕事帰りに買って帰る』だけだったので、あきれ果てました」との声も。パートナーは「俺も頑張っている」と自信を持っているけれど、女性から見れば「これだけ?」と突っ込みたくなることもあるようです。
だったら、どうすればいいのかと疑問が出てくるでしょう。平田さんは「こうすべきといった決めつけは育児には不要です。それぞれの家庭でシェアする方法を考えていきましょう」とアドバイスします。共働きかどうか、祖父母が近隣に住んでいるかどうかなど、事情は様々。職場環境も違います。自分たちの最適解を見つけていけばいいそうです。
そこで大切なのが、見える化とコミュニケーションです。日々どんなことが待ち構えているのか。仕事でいう「業務の洗い出し」を進め、タスクシートをまとめます。当然、家事も入ります。「お宮参り、入園など節目の行事は想像しやすく、教育費はどうするといった長期的なビジョンもイメージできるのですが、毎日のことは意外と知らないものです」(平田さん)

とりわけ男性は育児に関する情報が入りにくくなっているので、「こんなこともやるんだ」との気づきが生まれます。そのうえで、どうシェアするか考えます。どちらが担当するのか、出張時はどうする、発熱時の対応は、などを話し合うわけです。
工夫しながら楽しむ
ここでもう一つ大事なのは「自分たちだけで完璧にしようと思わないことです」と平田さん。祖父母、友人などに協力を仰いでも構いません。専用の機器をうまく活用するのも手です。例えば授乳。ママが直接授乳できないシーンがあったら、搾乳器を使ってあらかじめ母乳を取って冷蔵庫に保存すれば、ママでなくても乳児に母乳を与えられます。ベビーシッターをはじめとする各種サービスを利用するのも、もちろんOK。タスクを見える化し、パートナーをはじめ、周囲の人としっかりコミュニケーションをとって分担する。グッズやサービスもうまく活用する。もちろん想定外の出来事は起こりますが、対応できるはずです。

ここまでみてくると、仕事に通じることが多いと感じる人もいるでしょう。子育てという目標に向けて、それぞれの役割で最大限の能力を発揮する。そう、「チームビルディング」と言われる手法に通じるのです。ピジョンではチームビルディングという考え方を基にし、夫婦で育児に関して考えるワークショップを開く試みをしています。
コミュニケーションの相手は会社も含まれます。男性にも育休取得が広がってきたとはいえ、いざ休みとなると同僚の目が気になったり、仕事を家に持ち込んだりといったこともあります。そうではなく、抱えている業務を見える化し、不在時も滞らないようにスムーズな引き継ぎをするために、上司などと話し合うのです。

「最初が特に大事です」と平田さんは指摘します。育児なら出産後の数カ月です。最も大変な時期にシェアができれば、自信にもなり、その後も対応できます。
「育児に関われば、子どもの成長がより明確につかめます。新しい視点も見出せます」。平田さんはこう強調します。わが子の写真を撮影するうちに、カメラにのめりこむようになったなんて方もいるとか。工夫して楽しみながら、一歩ずつ成長の階段を上っていく姿を目に焼き付ける。現代の育児の極意のようです。