イベントリポート

理系学生・高校生が社会貢献への思い語る~大阪でバーチャルシンポ

理系学生や高校生を応援するイベント「日経ウーマノミクス フォーラム2020バーチャルシンポジウム」のプレゼンテーションコンテストの決勝大会が9月30日に開かれました。「描け!未来予想図」をテーマに、大学生・大学院生は将来の夢や社会への貢献、高校生は普段取り組んでいる研究の成果などを発表。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から今年はオンラインでの参加も取り入れ、大阪市内の会場では舞台上のほかオンラインを通じて、熱い思いが語られました。

決勝には14のチーム・個人が参加

決勝大会には予選審査を通過したチーム・個人が参加。大学生・大学院生の部では8つのチーム・個人、高校の部では6つのチーム・個人が発表しました。

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大阪市立大で物理光学と居住環境材料学を研究する2人は「異分野融合が作るカラーフィルム」を発表

大学・大学院生の部で、オープンキャンパスでの偶然の出会いから発案に至った「異分野融合が作るカラーフィルム」について発表したのは大阪市立大学の「OCU Science Girls」チームの磯見麻衣さんと井筒由紀さん。物理光学と居住環境材料学という異なる分野を研究する2人が、「理系女子学生による進路相談会」での出会いから話を進め、「それぞれの分野を融合させて、色に制限されない暮らしをつくるカラーフィルムを提案することができた」といいます。フィルムを眼鏡に装着して文字を識別しやすくするなど、様々な生活用品などへの展開を意欲的に探っています。このシンポに協賛する企業からの賞として三洋化成工業特別賞を受賞しました。

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大阪府立大のチームは再生可能エネ普及に向け「送電効率の最適化」「蓄電技術」に着目

「国産エネルギー100%?!日本のエネルギー自給率向上プロジェクト」を発表したのは、大阪府立大学のチーム名「IRIS10期生」の坂野文香さんと山口穂多瑠さん。海外からのエネルギー輸入に依存し、化石燃料による火力発電の比率が高いといった日本のエネルギーについての課題を、「再生可能エネルギーを普及させることで解決したい」と強調。そのために「送電効率の最適化」と「蓄電技術の向上・効率化」の2つに着目して日本のエネルギー自給率向上の道筋を示しました。住友電気工業特別賞を獲得しました。

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オンラインで個人参加した京都大の円尾さんは宇宙技術の医療への応用を目指す

オンラインで個人参加した京都大学の円尾芽衣さんは「宇宙から医療へ」という壮大なテーマで発表しました。宇宙物理学を専攻し、東アジア最大を誇る光学赤外望遠鏡の装置の設計開発や観測に携わってきた円尾さんは、「全過程を行うことによって、見えてくる問題や解決方法がある」と話します。社会に出るにあたっては「宇宙と同じように複雑な問題を一つずつひもといて解決していきたい」と考え、医療分野で進路を選びました。宇宙技術を医療に応用することにも意欲的で、一見壮大なテーマに経験の裏付けがあることを示しました。東和薬品特別賞が贈られました。

水質浄化、砂漠化の防止、ロボット開発ーー。高校生の取り組み続々

三洋化成工業特別賞(神戸高校・上中さん).jpgのサムネイル画像
兵庫県立神戸高校から個人参加した上中さんは世界中の水を簡単に浄化できる手法の確立に取り組む

高校性の部では、SDGsの「安全な水とトイレを世界中に」という目標に向けて、兵庫県立神戸高校から個人参加した上中美羽さんが「高分子化合物による水質浄化」の研究成果を発表しました。「きっかけは納豆に含まれる物質に水をきれいにする効果があると知ったこと」という上中さんは、手に入りやすく安価な水質浄化物質をみつけるために、「凝集力のある高分子化合物」に着目。様々な実験を、世界中の水を簡単に浄化できる手法の確立を目指して進めています。

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砂漠化の防止に向けて海水の淡水化に着目した奈良県立奈良高校「砂漠班」チーム

「砂漠での海水の淡水化」をテーマに掲げたのは、奈良県立奈良高校「砂漠班」チームの阿部美咲さん、尾崎麻衣さん、澤田真緒さん、須川絢加さん、坂井充さん、藤本大翔さん。砂漠化の防止に向けて海水に着目、比較的コストが低く簡易とみられる「蒸発による淡水化を行い植物栽培に利用」することを考えたといいます。昼と夜の寒暖差を利用して、効率的に蒸発した水を回収できるような装置の材料や形状を、身近な材料などを使って様々な方法で実験・追究している様子を説明しました。

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追手門学院大手前高校から個人参加の倉冨さんは社会的な効果を考えたロボット開発の軌跡を発表

追手門学院大手前高校から個人参加した倉冨星衣さんは、「SDGsを達成するロボットの開発・研究の4年間の軌跡」として、中学生時代を合わせた4年間での4つのロボットの研究開発成果を語りました。SDGsの目標を達成することを具体的に考えたロボットで、「陸の豊かさを守ろう」との目標に向けては森林の手入れなどができる枝打ちロボット、「すべての人に健康と福祉を」のためには食事介助ロボットを開発するなど、社会的な効果を考えてロボット開発に取り組んできた軌跡を発表しました。

上中さんには三洋化成工業特別賞、奈良高校砂漠班には住友電気工業特別賞、倉冨さんには東和薬品特別賞が贈られました。

今回の理系学生・高校生応援イベントは理系女子学生・大学院生チーム「Cheers!」による進路・進学などの相談会、高校生WEB座談会も併せて実施。イベントは新型コロナ感染症の拡大防止のためオンラインで開かれ、プレゼンコンテストも会場の座席を発表者と引率者に限定して実施しました。決勝大会の模様は以下のURLからアーカイブ視聴も可能です。

https://channel.nikkei.co.jp/e/nwpf2020

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