イベントリポート

QUICK、女子高生に資産形成を講義~カードゲームで学ぶお金の話

日本の証券金融市場の情報インフラを担うQUICK(東京・中央)が2021年12月、私立中高一貫女子校の洗足学園中学高等学校(川崎市)で、お金や資産形成に関する特別講義を開きました。「株式や投資信託って何? 金融工学って何?」と、リアルな金融・経済についてまだ馴染みが薄い高校生たちが、QUICKが考案したカードゲームを楽しみながら市場の仕組みや資産形成の大切さについて考えました。人生100年時代と言われる長寿社会を迎える一方、長年続いた日本の企業の終身雇用制度は揺らいでいます。若い世代への金融教育は生きる力を養うために大切との思いが特別講義には込められています。

楽しみながら金融の基礎知識を理解

特別講義の前半はQUICK事業開発本部の佐々木優実さんが教壇に立ち、「カードゲームで遊んでもらい、資産形成を考えるきっかけになれば」と話して始まりました。まずは生徒が4人1組となってカードゲームに挑戦します。

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QUICK事業開発本部の佐々木優実さん。カードゲームの前に「日経平均株価を算出したり、証券会社で働いている投資のプロが使うツールを提供したりしています」と会社を紹介

カードには『現金』『株券』『投資信託』と書かれた「資産カード」と、『給与』『ボーナス』『配当』『分配金』『相続』『ブラックマンデー』など様々な金融関連イベントが書かれた「イベントカード」があります。プレーヤーは『現金』3枚をあらかじめ手札に持ってゲームがスタート。最初に『現金』を『株券』か『投資信託』のカードと交換し、「イベントカード」を1枚引きます。引いた「イベントカード」には、イベントごとの説明とプレーヤーへの指示が書いてあります。例えば『ボーナス』だったら、好きな「資産カード」を獲得できます。カードの指示に沿ってゲームを進めていき、最後に「資産カード」が一番多い人が勝ちとなります。

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切っているのは「イベントカード」。『相続』なら「資産カード」を2枚追加できる
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全員が手番を10回繰り返したらゲーム終了。白地の「資産カード」を一番多く貯めた人が勝ち

ゲームが始まると、「おっ、ボーナス」「資産を減らす? ひどーい」といった声や拍手が教室の中に響きわたり、盛り上がりました。なかには「日経平均株価が過去最低」を引いて、思わず頭をかかえ込んでしまう姿もありました。

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「日経平均株価が過去最低」に思わず頭を抱える。ゲームとはいえ、リアルさも体感できる

ゲームを介した学びは理解度を抜群に高めてくれるようです。「複利とか現代社会の授業で学んだことがある。授業で学ぶことも大切だけど、ゲームの形でやってみるとより深く理解できる」「イベントがたくさんあり、リアル感があると思った」「投資信託と株式の違いがわかった。大人になったら実際にやってみたい」――といった声が生徒から聞かれました。

知らないことは大きなリスク

QUICKがカードゲームを開発したきっかけは「子どもたちの間ではやっているカードゲームを使って金融のユーザー体験ができれば面白いのではないか」という社内での議論でした。発案したのは事業開発本部の吉野由希さんです。そこから社内の有志が集まり、株式や投資信託の違い、金融市場の仕組みなどを学べるゲームの開発が始まりました。吉野さんは「(自分自身が金融の)何を知らないのかさえ分からないのは大きなリスク」と、早い時期から金融や資産形成に関心を持ってもらう意義を説明します。

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カードゲームを発案したQUICK事業開発本部の吉野由希さん。株式と投資信託の違いや金融市場の仕組みなどが分かるようにルール作りに取り組んだ

開発メンバーのひとり、QUICKリサーチ本部資産運用研究所のファンドアナリスト、望月瑞希さんは、最近は20代と30代の「つみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)」の口座数の伸びが大きく、若者層が長期の資産形成に積極的になっていると指摘します。「(金融庁のワーキンググループが老後の30年で2000万円が不足すると試算した)老後2000万円問題や新型コロナウイルスの感染拡大によって将来への不安が高まり、資産形成に関心を寄せる若者層が増えている」とみています。

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QUICKリサーチ本部資産運用研究所の望月瑞希さん。投資情報部ファンドアナリストとして、主に投資信託の分析を担当する

カードゲームの講師を務めた佐々木さんは以前、銀行に勤務し、窓口で投資信託や保険などの金融商品の販売を担当していました。その時の経験談として「20〜30代で金融商品の相談に来る方は、女性のほうが多かった印象があります。子どもの教育資金や老後資金に関心を持たれることが多いと思います」と話してくれました。

「お金を知ることは生きる力につながる」

さて、洗足学園での特別講義はカードゲームの後、コンサルティング営業本部の鈴木優太さんがカードに記載されていた金融用語を解説しておさらいをしました。「人間はなぜ経済活動をするのか。それは経済や金融によって『豊かさ』を求めるためです」と生徒に語りかけます。

講義の後半は金融工学と数学がテーマです。QUICK資産運用研究所の大野三郎さんが講師となり、複利・積み立て投資のことと、金融工学が引き起こしたと疑われている1987年10月19日のブラックマンデー(ニューヨーク株式市場の大暴落)のことについて解説しました。「複利・積み立て投資には等比数列が出てくるし、ブラックマンデーがらみでは中学校で学ぶ連立二元一次方程式が出てくる」など、投資や金融の出来事と授業で学ぶ数学が関係しているとの話に生徒たちは真剣に耳を傾けていました。

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講義後半は少し難しい金融工学の講義。「金融工学とは、金融関連の様々な仕事で用いる計量的手法、数理的手法およびモデルを研究・開発・実用化すること」と説明

学習指導要領の改訂により、高校では2022年4月から新科目「公共」で金融経済、「家庭科」で資産形成の視点を入れた授業が本格的に始まります。

洗足学園中学高等学校では実体経済を理解しないと金融をどう考えたらよいかわからないため、これまでも経済団体などの力を借りて生徒たちが授業の中で多くの講演を聴き、対話する機会を設けています。同校の宮阪元子校長は「長寿化社会になるとあらゆる場面でお金が必要になります。こうした時代を生きる子どもたちにとって、金融教育は大切。お金を知ることは子どもたちの生きる力につながっていくと考えています」と説明してくれました。

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洗足学園中学高等学校の宮阪元子校長は「長寿化社会を生きる子どもたちに対して金融教育は大切」と様々な取り組みをしている

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