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海外女性監督が短編映画に込めた思い ~ ウマノミ会員が作品レビュー

米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)2020」が9月16日に開幕するのを前に、日経ウーマノミクス・プロジェクトでは会員100人限定で映画祭上映作品の一部を先行鑑賞できるオンライン試写会を開催しました。映画界で活躍する女性を応援する「Ladies for Cinema Project」で上映する6作品のなかの3作品を先行上映。いずれも海外の女性監督の強いメッセージが込められています。作品を鑑賞したウーマノミクスの会員からは、自らの体験を重ね合わせての感慨など、心のこもった感想が多く寄せられました。だれもが自分らしく生きられる社会を――そんなことを考えさせられます。

■『水に浮かぶ 浮かんで』(Afloat) 2019年 フランス

【あらすじ】ギャランスは姉とその子供たちの面倒を見るため、夏の地中海に戻ってきた。ここ数カ月の間で容姿が大きく変わった彼女はある男性と再会する。

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監督 Ève-Chems De Brouwer / 上映時間 20分23秒

【感想】randomさん(30代) 「自分の容姿にコンプレックスを感じて好きな人に本当のことが言えない気持ちが痛いほど感じられました。今回の描写は容姿についてでしたが、容姿に限らず、信条や宗教を含めた自分の考え方や自分の家族のことなどについても同様のことが言えるように思いました。相手がどう思うのか、どう反応するかを考えると、怖くて言えなくなってしまう、そういった場面は、考えてみると会社の上司や友人、家族との関係性の中にも常に存在しています。勇気を振り絞って、本当の自分を表現したあとにどんな結果が生じるのか分からないけれど、後悔するよりはよいのではないか、主人公が腹を決めた時の様子から、そのように感じました」

【感想】ぽんぽこぽんさん(50代) 「私は更年期や職場のストレスもあり、一時期、頭髪が随分と抜け、結構多かった髪が少し薄くなったことがありました。元々のストレスに加えて頭髪についての不安や心配が増え、より一層のストレス過多で、お化粧やおしゃれをするのが億劫になって、全般的に何事に対しても積極的になれない時期がありました。映画の主人公の女性のなんとなくアンニュイな感じ、男性との恋愛も心から楽しめないノレナイ気持ち、何かわかるような気がしました。つま先から髪質・ヘアスタイルも含めての「私」なので、自分の思い描く「私」からかけ離れていくことに戸惑いやら納得できないやらで心が追いつかなくて当時は混乱状態でした。「いっそのこと坊主頭にしたらどんなに気が楽だろう」と何度か思ったことがあります。ふと、ある時から「現実を受け止め」、「執着を手放す」ことに気持ちを切り替えたことでだいぶ気が楽になり、髪も一時期に比べ、抜ける量は減りました。映画のラストシーンでの主人公の行動が非常に印象的で、見ている側の私も不思議と少しホッとしちゃいました。ショートフィルムですが、記憶に残る良い作品だと思いました」

【感想】ナムギラーさん(50代) 「希望を感じられるエンディングに救われた。容姿が変わった主人公に対する、姉とその家族、再会した男性の、何と自然で大らかな接し方。性的マイノリティーへの理解を深めるべきだという認識にもつながる、素晴らしい作品だと思った」

【感想】CAPさん(30代) 「ありのままの自分を受け入れてくれる存在のなんと心強いことか! 大切なものをなくしてしまった自分の悩みを、そんなことか!と笑って受け止めてくれる(大前提としてそう言われても許せる)人。そんな人に出会いたいと思った。あと無性に海に行きたくなった」

【感想】romiさん(20代) 「爽やかな映像だった。主人公が他人になかなかに言えない重い症状であるにも関わらず...。ラストシーンのようになかなか潔くなれない。でも、すっきりと見える明るい映画であった。とても良い作品!!」

【感想】じゅんころさん(40代) 「映像がとても美しかったです。主人公の症状の原因が何であるかはわからないけれど、苦悩や葛藤がすごく伝わってきて「あなたの人生はこれからだ、がんばれ」「きっと大丈夫」と声をかけたくなりました。彼女はきっと乗り越えられる。未来は明るいはずだと信じます」

【感想】usagiさん(50代) 「地中海を背景に若く初々しい女性の悩みが、美しい映像と音楽と共に描かれた作品! 周囲の人々の優しさやきれいな自然に癒されながらありのままの自分を受け入れてもらい、ついには自分自身も自らを容認し、歩んでいこうとする姿が感動的でした」

【感想】よっしーさん(50代) 「女性にとっても男性にとっても、大人でも、子どもでも、髪がなくなっていくって想像以上にショックなんじゃないかなあ。私も彼女がウイッグを外した時、一瞬ドキッとした。ただ、子どもは無邪気にウイッグを外してとねだり、その姿をみて面白いと笑う。しかしそれ以上でも以下でもなく、母の妹を今までどおり慕う。また、昔からの知り合いの男性に再会し、お互い惹かれつつも髪のことで彼女が一歩先に進めないシーンがせつなかった。夜の海で裸で浮かびながら彼女は何を考えていたのだろうか。ラストシーンのその先、おそらく彼は一瞬ハッとするだろうが、それだけのことで恋が進んでいく気がした」

【感想】磯部詩帆さん 「きれいな女優さんでした。どんなにきれいな人でも、人には隠したくなることがある。女の命である髪の毛がなくなるほどの何か重大な出来事があって、それでも、家族はそれをわかってくれているのが救いだった。姉の子供達が、ウイッグをとってと言って、とった瞬間、固まらない子供たちが好きでした。びっくりさせまいと、寝起きで抜けた髪の毛を、枕でさっと隠すところは、嫌なことを隠すのではなく、子供たちをびっくりさせまいとする優しさ。海で再会した彼と、もっと深くなりたいのだけど、髪の毛のことが気になり、海辺で泣いて。でも、どこかで吹っ切れるもんなんだなあ。人生は、その時はどん底に感じても、また明るい未来がやってくる。ただ、ちょっとした勇気が伴わないとね!! きれいな素敵な映画でした」

【感想】伊藤愛子さん 「夏の地中海の日差しの強い中、ギャランスは姉の家に行き子供たちの面倒をみる。子供とのやり取りをする日々、のんびりした夏休みの風景だ。美しい海の景色と波の音が心地よい。ギャランスはそんな晴れ渡る中、いつも浮かない表情だ。悩みを持っている時は、天気がいい日でも心から楽しめないものだと思う。しかし子供たちを連れていく水泳レッスンのコーチに会いながら、少しずつ気持ちが変化していく。月の夜、素の自分の姿を開放して、海に浮かぶ。ゆらゆらと揺れながら自然の中にいること、海と一体になること、吹っ切れていく姿が気持ちよかった。彼女は心を閉ざしてふさぎ込んでいるけれど、気づかないけれど、周りには温かく見守ってくれる人たちがいてくれる。自分の周りも実はそうなのかもしれない。見えてないだけかもしれない」

【感想】なーこさん(40代) 「コロナ禍のなかで映画そのものから遠ざかっていた今年。ショートフィルムを観て真っ先に感じたのは、映画って非日常へ連れて行ってくれるものなんだなぁ、という再認識でした。あと、この作品に描かれた海外の空気感や色彩・光に、この夏は色や輝きを感じる間もなく過ぎちゃったんだなぁ、という気づきもありました。純粋に映画の良さに思いを馳せるなんて、子供の頃に戻った不思議な感覚です。ショートフィルムも初めての経験でしたが、教訓めいたことも、劇的なこともない日常の切り取った時間を同時体験する感覚も新鮮でした。機会があればまた触れてみたいです、ショートフィルム」

【感想】ちりさん(40代) 「背景の事情も、結論の行方もわからないまま、自由な想像のもとに見られることがショートフィルムの醍醐味ですね! ありのままの自分と向き合う結末はどこに向かうのか...。いつのまにか自分の生き方と重ねていました」

■『置いてはいけない』(Removals) 2019年 オーストラリア

【あらすじ】土壇場になって女は引っ越し業者の男とそのやる気のない息子にピアノを運び出して欲しいと頼む。

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監督 Greta Nash 監督 / 上映時間 12分57秒

【感想】よっしーさん(50代) 「荷物運搬の仕事をする父。亭主関白を貫き、息子も妻も口を出せない。娘の年齢も正確に言えない。そんな家族を描きながら、もう一方の家族が描かれる。ピアノを処分して欲しいと頼んだ老女。娘の言うとおり家を出る決意をしておきながら、思い出のピアノの処分を頼んで時間をとってしまう。そこへ夫が戻ってきて大声を出している。その様子に気づいて老女の家に戻る荷物運搬の仕事をする父は、大声を出している老女の夫に自分を重ねたのであろうか。「置いてはいけない」のは老女にとってはピアノであり、娘にとっては母親なのだろう。最後に老女と娘が車に乗っているシーンで心が落ち着いた」

【感想】ゆめおいぶたさん(30代) 「"威厳のある父親"になろうとする父親のやり方は、子どもからしたら不愉快で、本人もうまく行ってないことは理解している。けれど、どうしたらいいか分からない姿を子どもに晒す勇気はない父親の葛藤。共通のピアノを通して、別の家族のあり方に接することで、ヒントを得る――父親の気持ちの変化が非常によく表現されていると思います。何歳になっても、自分の中の違和感に対して、変えてみようかなと思う「小さな勇気」を持つ大切さに気付かされました」

【感想】ちゃりこさん(30代) 「多くの女性が、自ら受けている恐怖から逃げ出すのはとても勇気のいることだと思います。新しい人生への一歩を踏み出す時の葛藤と、すべてをリセットするという意気込みと共に、それまでの自分の人生を作ってきた身体の一部のような思い出の品を一緒に持っていきたいと思う気持ちにすごく共感しました。多くの男性は知らず知らずのうちに威圧的になり、支配的になってしまっていることを、自覚はしていないのだなというのも実感しました」

【感想】あおさん(40代) 「日常の、社会の、世界のやるせなさを画面から感じてしまう作品でした。でも最後に見えるいくつかの希望が一番心に残りました。原題のRemovalsは、主人公の仕事であるピアノの撤去(Removal)だけではなく、主人公と客先の家族内でのRemovalも示唆していて、でも、Removalして失うことへの恐れから、邦題の「置いてはいけない」という気持ちになってしまう人の心の弱さが描かれていたように感じました。Removalがいつでも最善の選択とは限らないけれど、時に一歩踏み出してRemovalすることが必要なときも絶対にあって、それを助けることになった主人公のおじさんの行動に感謝。主人公の家庭は、移民家庭特有の帰属意識、子供たちのアイデンティティーなど、問題山積みと最初思いましたが、意外とそうでもないのかも、と思えるラストでよかったです」

【感想】ペルナさん(20代) 「一人の人間の人生が約13分の短い時間の中に凝縮され描かれている映画。女性に焦点を当てながらも、ある男性の人生の末路をほのめかす巧みなストーリーが練られているように感じられた。ストーリーのキーパーソンとなっている引っ越し業者の男性の態度からは、女性の仕事は「家庭で家事をすること」であり、それ以外は求めていないように思えた。そして、急きょピアノの引き取りを依頼した老齢の女性に聞かれても娘の年齢すら正確に答えられないことから、この男の家族に対する態度が垣間見えた。この老齢の女性の存在を鏡に男性の人生のその後が映し出されているようだ。男性はこの女性が夫と思われる男を残し、自宅を後にするからピアノの引き取りを依頼したことに気づいた。女性の家に戻り、女性を怒鳴りつける男の姿を見て、男性はそこに自分の姿、そして未来を重ねたのではないだろうか。短い映画は全てを語りきっているわけではなく、観る人の想像に委ねる部分もある。老齢の女性は夫と思われる男性を置いて自宅を出ることを決意したが、ピアノだけはたとえ自分の新たな住まいに持っていけなくても、その家に置いて残すことができなかった。女性はこのピアノにどんな思い入れがあったのだろうか。男性とのつらい思い出を和らげてくれたのか、それとも、男性との懐かしい思い出があったのか。想像の余地があることで鑑賞後も作品に深く浸れた。女性を鏡に男性の人生を観る者に語りかける部分と観る者の想像に任せる部分との絶妙なバランスがこのショートフィルムをより魅力的なものに仕上げていると感じた。現在、監督は長編作品を制作中とのことで完成が楽しみ」

【感想】はるさん(70代) 「横暴な(?)父と暮らす、娘・息子の家庭。引っ越し業者の男に急な仕事が入り、いやいや腰を上げた息子を連れて、女性の家に向かう。高齢女性の依頼はピアノの運び出し。訳ありの引っ越しがたまらなく寂しさを感じさせたが、女性の娘の温かさに彼女も救われる。そして、自分本位なだけと思えた男も、実は思いやる心を持っている人物だと分かった。妻を亡くした家庭のありようも少し明るさが見えてきて、ほっとした。好感の持てる良い映画でした」

【感想】どらじろうさん(40代) 「二つの家庭の複雑な状況が、あまり詳しくは語られなくても、感じることができた。ケンカをしても分かり合えないことがあっても、家族は最後にはつながっていることが感じられる映画だった」

【感想】Frankoさん(30代) 「ショートフィルムあるあるで状況説明があまりないので、最初は「おばあちゃん=皿洗いしている女の子?家政婦?娘?」と随分と混乱したが、だんだん状況が分かってきて、そしてのめり込んで、エンドロールで「素晴らしい!」と叫んでしまった。巧みな演出と俳優のうまみの引き出し方。唸るしかない。中でも、ピアノ引取業者の父親が、何かを悟った瞬間の表情がなんとも言えない。ブラボー!」

【感想】ナムギラーさん(50代) 「いろいろな解釈が可能な作品だと思った。引っ越し業者の男とそのやる気のない息子が、急な依頼を受けて、ある女の家のピアノを運び出す。女は娘の力を借りて、高圧的な夫の元から出ていくところだった。業者の男はきっと、かつての自分の家で起こったことを思い出したのだろう。恐らくこの後、娘や息子に対する態度を少しは改めたはずだ。10分ちょっとの作品なのに、人生の転換点とでも言ったらいいのか、とても大事なことを見せてくれた」

【感想】usakochanさん(50代) 「新しい生活に向け、再出発する女性の姿が娘と共に描かれ、おそらくは娘が使ったピアノを置いていくことに忍びなく、運び出すだけの業者に最後に託したものにジーンときました」

■『母と花』(Mother, Flower) 2019年 韓国

【あらすじ】初出産数カ月後の産後うつの女性。うつが原因で休職を余儀なくされた彼女は母親や夫、様々な人たちの意見に翻弄される。

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監督 Eunhye Hong Kim / 上映時間 15分58秒

【感想】ゆめおいぶたさん(30代) 「自分がやりたいことをやりたいときにやれる生活から、エンドレスにイレギュラーに発生する赤ちゃんのお世話をする日々。ある日を境に一気に世界が変わってしまう。ゴールのないマラソンが始まったように、先が見えず、今一瞬一瞬をもがいて生きてゆく。どこに向かうのか分からない不安、今を生きることの疲れ。同じ母親として、泥のように眠りたくなる気持ちも非常によく分かります。でも、始まってしまったマラソンは終わらない。自分が覚悟を決めること、そして周りに助けてもらうことが大事だと思いました。「妊娠・出産・復職と、女性の身体と環境は一気に変わる」。それが周知されるようになることも必要であり、このショートフィルムで子持ち女性以外の方にうまく伝わることを願います」

【感想】spassさん(30代) 「出産によって、身体的にも社会的にも在り方が大きく変わってしまう女性の痛みが伝わる作品だった。産後うつは、特別なものではなく、誰にでも起こりうること。世界に、そう理解してほしいと思った」

【感想】randomさん(30代) 「主人公の苦しさを、状況は全く異なる別の形として、自分にも投影させて考えることができました。主人公の女性が「犠牲」ではない、と自分の母に言いましたが、この言葉は彼女自身と、彼女の母の両方に向けて、確かめるように言った言葉のように感じました。彼女は確かに今は身動きが取れなくて、どうしようもない状態かもしれませんが、眠っているときすらも心のどこかで圧力を感じており、ご主人などのやさしさも感じているけれど、どうしても抜け出せない、そこから逃れたい、逃れようと、もがいている葛藤が伝わってきます。これから前に進もうという強い気持ちがあるからこそ、彼女は犠牲ではないと口に出すことができ、歩きだし始めているのかな、そうであれば良いな、いえ、そうであって欲しいと感じながら鑑賞を終えました」

【感想】AKIYAMAさん(40代) 「産後、社会のレールから外れ、孤独に子育てをし、どこにも相談できず、現状も抜けられず、日本にも該当する社会問題。搾乳するシーンが、ひとりの人間が機械化していくように見えて、自分の価値に自信がなくなる映像を見た気がしました。映画の中で答えを出さず、観た人が各自で考えることに重点を置いたのは、ショートフィルムの良さが出たと思います」

【感想】だるまんさん(50代) 「見ていて苦しい気持ちがヒシヒシと伝わってくる映画でした。この映画を見て、どうしたら皆が救われるのか考えたが答えが出なかった。たくさんの人に見てもらう!そして、理解してもらう!必要性を感じました。他人ごとではなく、自分ごととして、特に全ての世代の男性にぜひ見て欲しい!」

【感想】chirorinさん(30代) 「現在育休中です。幸い、私自身は産後うつなど追い込まれた状況ではないですが、生活の仕方・社会から求められる姿など板挟みで大変な女性が多い中、エンディングがアンハッピーエンドで救われないというか心苦しく感じました。問題提起であることも理解できますが、もう少し救われる可能性を匂わすシーンがあればという感想(というより希望)です」

【感想】泉澤淑子さん 「産後うつには自分もなりかけたので、映画の中の主人公と何が違ったのかと考えながら鑑賞した。薬のせいで常に眠くだるいのだろう、職場復帰を焦る気持ちもわかった。今までキャリアウーマンだったのだろうか、ご主人が彼女の病気を理解できず一人で治療を焦っているようなところが切なかった。テレビ番組でタコの生態を見た彼女が最後につぶやく。回復を予感させるラストシーン。産後うつになったことを受け入れたように感じられた。出産して変わり果てた自分は犠牲者ではなく、女性が昔から行ってきた命を生み出すことを成し遂げた、大きな仕事だったと受容できたようだった。夕方になると、ご飯をつくらなきゃなと思いながら、泣く子をあやした記憶がよみがえってきた。夕暮れ時はなんとなく母も子も心細いのだ。そんな心細さに涙がでて泣いたことは誰も知らないだろう」

【感想】だいがくよねんせいさん(20代) 「今年6月就職活動を終えたものです。母親が専業主婦であることもあり、自分もいつかは専業主婦になるのだろうとずっと思っていました。しかし就職活動を通して、この世の中、そうはいかないこと、また、様々な人のお話を聞く中で仕事をする価値観を知り、できれば生涯働きたい、と思うようになり、幸いにもそのような環境の整っている会社に内々定をいただきました。環境が整っているといっても今回見たショートフィルムのように産後うつになってしまう可能性は誰にでもあるなと改めて感じました。どれだけ環境が整っていてもそうだし、整っていないのであればなおさらだと思います。そういう意味では自分のキャリアについて少し不安になりましたし、まだまだ考えが甘いのかなとも思いました。いつかはこのような不安を女性が抱くことなく安心して働ける社会になればと思います」

【感想】rieさん(30代) 「私は結婚もしていないし子供もいない。だけど多くの女性が抱える悩みにはひどく敏感で、他人事と切り離せずに自分ごとに置き換える節がある。何ら特別でない「産後うつ」という、出産後の女性が抱えがちな闇に対する恐怖は計り知れない。すぐそばにある光に包まれた存在との対比が一層悲しい。産む性である以上、発症する確率をゼロにすることはできない。この映画全体を包むトーンは決して明るいものではないけれど、かすかな希望を見出すことができるのはなぜだろう。子供のような純真無垢な表情の母は、何かを取り戻すに違いないと、最後まで見放さない優しい目線が監督を通して伝わってきたからかもしれない」

【感想】ナムギラーさん(50代) 「産後うつではないが、引きこもって3年目となる実の妹もこんな風に日常を感じて過ごしているのだろうか。彼女の視点から見ると、実の母も、夫も、医者も、ちっとも親身になっていないことがよくわかった。自分は妹に親身に接しているだろか。とても考えさせられた。たった15分の作品でも、こんな風に考えさせられるとは、ショートフィルムの威力に改めて驚かされる」

【感想】みかんさん(50代) 「冒頭の生後2カ月の子供を抱えている女性の表情がすべてを表しているようでした。夫も決して、非協力的なのではなく、妻を心配しているし力になりたいと心底思っているけれど、家計を支えるためにも仕事をしなければならない。だれもが、精いっぱいギリギリのところで、問題に向き合っている。その結果、心を病んでしまうことも少なからずあるのだと、改めて感じた。こういう時こそ「人の手を借りる」ということに慣れていかなければならないし、社会としても困っている人に手を貸すというサービスを充実させていく必要があると、私は感じている。韓国のストーリーではあったが、日本でも全く同じと感じた。登場人物で言えば、主人公の母親がもっと介入してもいいし、育児サービスも考えて欲しいと客観的にはそう感じた。そして何よりも、育児休暇中の職場が、もっと彼女に親身になる必要があるのではないかと、少々怒りを覚えた。だいぶ世の中が変わってきたとはいえ、この映画が現状に近いのは確かだと思うし、残念。個人的なことを言えば、先月、親の介護サービスを受け入れて、実家での介護から大部分が解放され、現在は自宅に戻ってきている。親の介護でべったり張り付いていることも逆に良くないことが分かった。ほんの少しの介護サービスでも、周りの負担は大きく削減されることを実感した」

【感想】rabbitさん(50代) 「若い母親の産後うつが美しい映像で描かれた作品。ラストシーンの主人公の姿からは、人として母親になったことにより、自分の人生を犠牲にすることなく、懸命に生きていこうとする予感を感じさせられました!」

【感想】atsu2さん(40代) 「主人公の女性の苦悩がよく表現されていました。うつで、一切笑顔がなく、不安にさいなまれ、母親として頑張らなくてはと思い直し、でも生きているのが怖いという苦しい姿。色のない映像が、とてもその状況を連想させました」

【感想】ちいまめさん(30代) 「3つの作品とも、とても痛々しい身につまされるような映画でした。派手さも奇をてらった奇抜さもなく、淡々と心情を吐き出すように描いていて。静かな映像なのにずっしりと重たい。信じたい、信じられない、自分でさえ何がほしいのか、知りたいのかわからなくなり、狭窄的に世界を狭めていく。息苦しくて、もどかしくて、痛々しくて、叫ぶこともできない。葛藤を描きつつ・・・なぜか最後は少し、前を向けるようなすがすがしさが残る。不思議な印象がさざ波のような余韻として残りました。見たものによって受け取り方が多様にあるでしょう。とても考えさせられる貴重な体験でした。素敵な作品を見せていただきありがとうございました」

※ 皆さまからいただいた感想はネタバレの部分などは編集して掲載いたしました。「Ladies for Cinema Project」の全6作品は9月25日(金)、東京・渋谷の会場(TORQUE SPICE & HERB,TABLE & COURT=チケット予約不要)で上映予定です。映画祭期間(9月16~27日)中はオンラインでも鑑賞できます。

■「Ladies for Cinema Project」の公式プログラム・全6作品の詳細はこちら

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