イベントリポート

グラス手にワイン談議、オンラインで乾杯~サクラアワードとセミナー

女性が選ぶワインコンペティション「サクラアワード」と日経ウーマノミクス・プロジェクトが連携したワインセミナーが11月28日、WOMAN EXPO TOKYO 2020 Winterのスペシャルセッションとして開かれました。コロナ禍の今年は例年のEXPOでハイライトとなるワインパーティーに代わり、ライブ配信のオンラインセミナーとしての開催です。ワインをこよなく愛する全国のウマノミ会員は、同アワード主宰の田辺由美さんの呼びかけに応えてそれぞれ手元にワインを用意して視聴参加。ゲストの菊間千乃さんと田辺さんによる和気あいあいのトークを聞きながら、あっという間の1時間を過ごしたようです。

オンライン参加でもワインを用意

セミナーは「ワインをたしなみ、ワインを語るひととき~女性が選ぶ『サクラアワード』受賞ワインの醍醐味」と題され、定刻の午後7時に少し遅れて始まりました。司会の笠原ゆかりさんに紹介された登壇者のお二人は、さっそく楽しいトークに花を咲かせます。

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ワイン好き2人のトークをオンラインでライブ配信

今回は600人を超える応募者の皆さんに対し、事前に「サクラアワードの受賞ワインを手元に用意してご覧ください」と提案していました。「毎年、300人ほど集まるパーティーで受賞ワインを試飲してもらい、お気に入りの1本を見つけていただくのですが、今年は(新型コロナ感染症の拡大で)それができません。そこで、皆さんもアワードのアンバサダー(使節)として、じっくり、ご家庭で楽しむ時間を共有していただければと考えました」。田辺さんが趣旨をそう説明します。参加者アンケートによると、8割の方が実際に何らかのワインを用意して視聴。3割は実際にアワード受賞ワインを購入したそうです。

弁護士の菊間さんはワインエキスパートの資格もお持ちで、3年連続でアワードの審査員も担当。これまでの審査を振り返って「審査会場は女性ばかりで圧巻です。ずらっと並んだグラスがきれいで。全国のワインショップ、営業の方とワインを通じて知り合いになれるのも楽しみです」と笑顔を見せます。田辺さんによると、全国のワインショップのスタッフは半数が女性だそうです。同アワードはそうしたショップスタッフをはじめ、ソムリエなどワインの専門資格を持った500人以上の女性がブラインドテストで試飲して点数を付ける仕組み。選ばれたワインにはアワードのロゴマークが貼られます。「このマークが日本の女性が選んだおいしいワインの証、ということをもっと知ってもらいたいですね」(田辺さん)。

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菊間千乃さんは3回連続でアワードの審査員を務めている

日本の食に合うワインを探す

2020年の審査にもおよそ30カ国からワインが集まりました。ブドウ品種数にして300~400。「有名な産地ばかりではなく、国境、地域を越えて、世界中の未知のワインが集まってくる」(田辺さん)のがサクラアワードの特徴です。菊間さんは「焼き鳥に合う、すき焼きに合う、など、料理に合うかを考えながら審査していきます。まさに、日本の食に合うワインを探そうというコンセプト。新しい発見がたくさんあります」と、同アワードならではの特徴を表現します。日本の女性が子供のころから培った繊細な味覚によって選ばれたワインは、アタックの強いタイプというより、料理と合わせて飲んでいるうちにおいしさが深まるタイプが多いそうです。「白はフレッシュでエレガント、赤ならタンニンは強くないが旨みがある、エレガントなワインが選ばれる傾向があります」と田辺さんは説明します。

おいしくワインをたしなむ方法を問われた田辺さんは「グラスを回して香りを立てたり、手で少し温めながら最適な温度に導いたりするなどいろいろありますが、今、皆さんがしているようにリラックスして飲むのが一番おいしいのではないでしょうか」とカメラに向かって語りかけます。菊間さんは自宅でワインを楽しむときは白と赤を一杯ずつ飲むそうです。コルクを抜いたら飲み切らないと、といった通念もありますが、瓶の中を真空状態にして酸化を防ぐ器具を活用すれば問題ないそうです。「いっぺんに5本くらい開けて好きなものをちょこちょこ飲んでいます」(菊間さん)。田辺さんも「冷蔵庫に1週間くらい置いても大丈夫。飲み切る、という発想を捨てることが大事ですね」とうなずきます。

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山梨のブドウ品種「甲州」でつくったワイン

「なんだか飲みたくなってきました」という司会の笠原さんの声に導かれ、ソムリエが登場して1本のワインボトルを示します。「甲州」です。最近、世界的に注目を集めている日本ワインの中でも、サクラアワード常連のワイナリーによる1本です。グラスに注いだワインから良い香りが立ち、登壇のお二人の華やかな笑顔がこぼれます。グラスを掲げて乾杯。見ているだけでおいしそうです。

このワインをつくったワイナリー、白百合醸造(山梨県甲州市)を田辺さんが訪れた際の動画も流れました。広大なブドウ畑にたわわに実るブドウ。除梗(じょこう)、破砕、タンクによる発酵などワインを仕込む過程を追い、後半は一転、同社の内田由美子専務の手ずからの美麗なフィンガーフードとワインのマリアージュを楽しむ場面に。甲州のフレッシュな酸味に、山梨県産の野菜、肉でつくった色鮮やかな料理の味わいが調和します。内田専務は、田辺さんの力添えで地場のブドウ品種「甲州」が海外の銘醸地に渡り、評価を集め、おいしいワインが生まれるに至った経緯を説明。作り手として感動と勇気を得た、というお話を聞くと胸が高鳴ります。

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「甲州」を製造する白百合醸造を訪ねた動画も

日本ワイン、世界で注目高まる

日本ワインの近年の世界での人気について、田辺さんはパリにある研究機関「国際ブドウ・ワイン機構」(OIV)を引き合いに説明します。OIVにはワイン用のブドウが登録されるのですが、日本からは「甲州」「マスカット・ベーリーA」の2品種が名を連ねているそうです。国内では新しいワイナリーも相次ぎ誕生しているそうで、これからのワインづくりにますます期待が高まります。若い醸造家、栽培家が増えている中で、もっと大切にしていきたい私たちの品種、という田辺さんのお話にうなずいた人も多そうです。そして、田辺さんはこんな最新ニュースも明かしてくれました。「私が育った北海道池田町の『十勝ワイン』で交配した品種『山幸』(やまさち)が11月、日本の品種として新たに登録されました!」

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「ワインを毎日楽しんでください」と田辺さん

また、菊間さんはワインにまつわるご自身のエピソードも披露してくれました。3年前、「メドックマラソン」に出場した経験です。フランスのワイン産地、メドック地方で開かれる、ワインを20杯以上試飲しながら走る「世界一完走率が低いマラソン大会」です。「楽しかったです! 飲んだら次のシャトーに向かって走る、その繰り返しなのですが、途中の歓迎ぶりも楽しくて。ワイン好きのすべての人にお勧めしているんです」

「高いワインより、高いグラス」

最後は参加した会員から事前に寄せられた質問にお二人が答えるQ&Aタイムです。「日本ワインの良さを海外に紹介するときのポイントは?」「サクラアワードの受賞ワインの傾向の変化は?」など、参加者の質問にお二人が答えていきます。ワインの楽しみ方を問われた菊間さんは「私はグラスにこだわります。高いワインより、高いグラス」。ワインというお酒は飲むときの気分をグラスで盛り上げるのが大事、と思っているそうです。最適な温度のワインを最高のグラスで飲む。「シチュエーションを大事にして飲むようにしています」。なるほど、と目からうろこの思いです。

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盛りだくさんのトークで1時間が過ぎた

予定の1時間は瞬く間に過ぎ、エンディングまで笑い声の絶えないセミナーとなった今回。このワインが最高、このワインはダメということはなく、自分がそのワインに合うか、きょうの料理に合うかどうか、ということで、それぞれが好きなワインを見つけてほしいと田辺さんは思いを語ります。また「いつも同じワインを買いがちな人は、新しいワイン、飲んだことがないワインにチャレンジして」とも。アンケートでは「お二人のお話がとても興味深く、楽しい土曜日の夜を過ごすことができた」「自分へのご褒美にグラスを選んでみたい」「私もワイン片手にずっと笑顔でした」など、参加者の皆さんの多くが思い思いにワインをたしなむひとときを楽しんだ様子。コロナ禍で不自由な生活にあっても、ワインの魅力にまた一歩、近づくことができたイベントとなりました。

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