イベントリポート

ビジネス英会話のプロが上達のコツ指南~ウマノミEnglishセミナー

日経ウーマノミクス・プロジェクトの新コミュニティー「ウマノミEnglish」、ご覧いただいていますでしょうか。話すこと、聞くこと、書くこと、理解すること――。コミュニティーでは英語によるコミュニケーション力の向上に役立つイベントやツール、つながりを皆さまに提供していきます。10月30日(金)にオンラインで開かれたオープン記念セミナーでは、グローバルな仕事で英語を使いこなしすビジネスパーソンと、英語スピーキング力を教えるプロのお2人が登壇。「話す」を切り口に、実践的な知識と議論が展開されたセミナー当日のもようをリポートします。

意見を言わなければ次から呼んでもらえない

オンラインセミナーは「自分に最適な英語スピーキング力アップの方法を知ろう!」をテーマに、日本経済新聞東京本社「スペースNIO」からオンラインでライブ配信されました。NECのグローバルファイナンス本部長、青山朝子さんと、上智大学講師の冨田三穂さんが登壇。週末の夜に1時間45分の長丁場でしたが、最多時で500人を超える方が視聴しました。

最初は青山さんの講演「グローバル人財の英語コミュニケーション力のつかみ方」です。公認会計士として活躍後、外資系証券、日本コカ・コーラなどで英語を駆使して世界を相手に仕事をしてきた青山さん。2020年1月からはNECのグローバル部門CFO(最高財務責任者)として40もの海外子会社の財務を管掌しています。グローバルで活躍するビジネスパーソンになる秘訣は、スピードを重視し、上司を最初から巻き込み、自分の意見を言うことだときっぱり。それがないと「次からミーティングに呼んでもらえない」からです。厳しい世界です。

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NECの青山朝子さんは英語でグローバルな仕事をしてきた経験談を披露した

英語力以外にも1)論理的な思考力と伝達力、2)コミュニーションスタイルや文化の違いを理解していること、3)ビジョンとバリューの共有、4)人脈――の4点がグローバルコミュニケ―ションには大事だと、分かりやすいたとえと実例を交えて指摘します。とりわけ大事なのは「人脈」。俗にいう「根回し」は何も日本特有のウエットな仕組みではないと話します。時差も距離もあるグローバル企業こそ、誰を知っているか、誰がそれを言ってくれるかが重要。だから「信頼を勝ち取ることに腐心してきた」と明かします。

英語力はその援軍にもなります。効果的なトレーニング法は3つ。「よい表現は臆せず真似をする」「英字新聞を音読すること」、そして3つ目は「とにかくバッターボックスに立つこと」です。会議の場では発言のチャンスを虎視眈々と狙い、何か一言だけでもしゃべる。話した結果が不発に終わってもボックスに立ち続ける。自分で話そうとすれば自ずと周りの人が言っていることにも耳を傾けます。そうすればヒアリング力も上がります。

正確さにとらわれ過ぎない

次は冨田三穂さんの「英語スピーキング力を伸ばすには~脳に効かせるトレーニング」です。上智大講師として英語を学ぶ日本人のスピーキング技能の発達過程を研究テーマとする冨田さんは、「英語を楽に、早く、話せるようになる魔法のような方法はない」と断言します。話す練習を重ねるには一定の時間がかかりますが、逆に「なぜ話せないのか」を見ていくとヒントが見つかる、とも言います。

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上智大学講師の冨田三穂さんはスピーキング力の上達過程を論理的に説明

言語能力を測る指標に「CAF」(Complexity:複雑さ、Accuracy:正確さ、Fluency:流暢さ)がありますが、日本人の特徴であり、弱点でもあるのは「正確さに集中し過ぎていること」だと冨田さんは言います。話すときに文法が間違っていないかといった正確さに気をとられ過ぎるとCAFのバランスが崩れます。間違えるのを恐れすぎると回避行動につながり、知っている単語や構文だけで回すようになります。「そんな癖がつくと運用能力の伸びはピタッと止まってしまう」そうです。

話せない理由の2つ目に挙げたのが「思考力が伴っていないこと」です。話そうにも話すことが思い浮かばず、アイデアが出ない。スピーキング力以前の問題ですが、いろいろなものに自分の意見を持つのが重要、ということです。3つ目は「知識の自動化」がなされていないこと。転びながら練習するうちに自転車に乗れるようになるように、何も考えなくても自然に英語を操れるようになるのが知識の自動化です。

質が良い知識を大量に取り込み、必要な時にアウトプットでできるようになること。一定期間それをしっかりやらないと話せるようにはならない、と冨田さんは指摘します。その際に「精話」(Intensive speaking)とともに大事な「多話」(Extensive speaking)のおすすめが「独り英会話」。一人二役で英会話をすることです。セミナー当日はここで視聴参加者による実践編がありました。画面に向かって多くの方が試していただけたようです。詳しくは当日のアーカイブ映像をご覧ください。「恥ずかしい気持ち、回避行動はだめですよ」と冨田さんは念を押します。

自分の興味・関心に絡めてインプット

続いてはトークセッションです。日本経済新聞の木村恭子編集委員をモデレーターに、青山さん、冨田さんの3人が参加者の事前質問に答える形でテンポよく会話が進みます。最初の話題は英語のスピーキング力を高める学習の仕方についてです。

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女性3人の英会話談議は華やかに楽しく盛り上がった(東京・大手町の日経東京本社)

冨田さんが強調したのは「"自分事"として理解できるものをインプットする」こと。ニュース記事でも映画に出てきた表現でも、自分にとって身近に感じる内容を取り込み、使っていくことで、その表現が自分のものになります。青山さんも「映画を観ながら"この表現は使えるな"と思うと、あした会議で使ってみようと思う」とうなずきます。おすすめのネットフリックスの「House of Cards」という政治ものドラマだそうで、ドラマの話題でひとしきり盛り上がりました。

日本人が壁にぶつかりやすい発音については、2人とも「できればネイティブのような発音が望ましい」という意見で一致。ただ、発音がネイティブ並みにキレイでも中身がないよりかは、いわゆるジャパニーズ・イングリッシュでも中身がある方がいいのでは、との問題提起も。青山さんは「目指すのは北欧の人の英語」と言います。「明らかにネイティブではないけれど、言っていることがしっかりしているので聞きやすい」。冨田さんも中身の重要性を踏まえたうえで「誰にでもわかる親切な発音が大事」と指摘します。聴く相手にストレスを与えるレベルだと、コミュニケーションが成り立たないからです。耳が痛い話です。

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3人のトークを聞いてがぜん英語を学ぶ気が湧いた方も多いのでは。ウマノミEnglishではこれからもさまざまな英語メニューを実施していく予定です

ほかにも英会話学習のモチベーションを維持する秘訣や、英語の得意な子供に育てる方法など、さまざまな話題が飛び出しました。時間があっという間に過ぎていきます。セミナー参加者へのメッセージとして、青山さんは「まずバッターボックスに立って話すこと」と再びエールを送ります。「苦手意識を持っている人に英語の必要性を説いても吸収しません」というのは冨田さん。学ぶということはどういうことか、そのために何が必要なのかを考えるべき、というわけです。私たちがそれぞれに考え、英語に親しんでいきたいですね。

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