イベントリポート

変化する社会で働き続ける~学生のためのキャリアセミナー in 宇都宮

働き方改革に女性活躍推進――。「仕事」を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。急速に変化する社会で自分らしく働き続けるためには、学校を卒業してどこに就職するかだけでなく、より長い視野でどんなキャリアを描いていくかを考えることが大切です。日経ウーマノミクス・プロジェクトは今年度も全国6カ所で「学生のためのキャリアセミナー」を開催しています。今回は、初開催となった宇都宮大学で2018年12月10日、約20人の学生・院生が企業で活躍する女性社員のリアルな声に耳を傾けた様子を伝えます。

仕事選び、大学生活からヒント

宇都宮大学は「4年一貫のキャリア教育」を掲げ、学生が自らの目指す働き方や生き方に向けてキャリアを築いていけるよう、入学から卒業までの4年間に授業や各種イベントなどを通じて就職支援にとどまらないキャリア教育を実施しています。

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宇都宮大学キャンパスにある庭園。1926年に完成し、2017年に登録記念物(名勝地)として登録された

今回のセミナーは全学を対象としたキャリア教育の一環として開催。街づくりについて学際的に学ぶ地域デザイン科学部や教育学部、工学部など文系・理系を超えたさまざまな分野の学生が集まりました。

パネル討論に登壇したのは宇都宮大学OGで東京海上日動火災保険の栃木支店・宇都宮支社の小林明菜さん、鹿島建設関東支店営業部の松本麻里恵さん、NEC社会公共ビジネスユニット医療ソリューション事業部の宮田優さんの3人です。コーディネーターは日本経済新聞女性面の佐々木玲子編集長が務めます。

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パネル討論では企業で活躍する入社10年前後の女性社員3人が登壇し、学生時代からこれまでのキャリアを振り返った

まずは学生時代の学びや経験が今の仕事にどうつながっているのか、じっくり聞いていきます。参加者にとっても、現在の大学生活のなかに将来のキャリアを描くヒントを見つける貴重な時間です。

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宇都宮大学OGの小林明菜さん。東京海上日動火災保険の栃木支店・宇都宮支社で働いている

東京海上の小林さんは教育学部の出身。教育実習も終えたうえで、民間企業に就職しました。学校の先生にこそならなかったものの、根本にあるのは「人に教えるって楽しい」という思いだったと振り返ります。小林さんの仕事は保険の販売を手掛ける代理店の支援。商品についてわかりやすく伝え、理解してもらう際に学生時代に身につけた「教える」というスキルが生きているといいます。

鹿島建設の松本さんの学生時代の専攻は建築学でした。就職活動では直接建物を設計したり建てたりするよりも、企画や開発など不動産的な視点の仕事に関心があったそうです。専業の会社や鉄道会社の一部門など、そうした仕事ができる企業はいろいろありましたが、造るところまで一気通貫でできるゼネコンを選びました。現在は駅前の再開発事業で街づくりに携わっています。

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鹿島建設関東支店営業部の松本麻里恵さんは大宮駅前の再開発事業に携わる

NECの宮田さんはヘルスケア領域の営業一筋に歩んできました。電子カルテや人工知能(AI)を活用した診療支援ソリューションなどの情報システムを担当していますが、大学の学部は経済学部で文系分野を学んでいました。就職先にNECを選んだのは、学生時代に接客のアルバイトをしていた経験から。人とかかわるのが好きだという気持ちからスタートし、営業という職種に絞って就職活動。そこからメーカーに絞り、NECにたどり着いたと話します。

「なぜ働きたいのか」から考える

宮田さんは学生時代に留学も経験しています。留学費用を3つのアルバイトを掛け持ちして準備し、最終的に100万円を超える金額を貯めたというエピソードを披露してくれました。留学したことだけでなく、そこまでの過程で、自分で複数のアルバイトのスケジュールを組んで計画して目標額を貯金したことが仕事をするうえでもプラスになっていると感じるそうです。松本さんも学生のころ原宿のカフェで4年間アルバイト。店の仲間や客として、高校や大学では出会わないような多彩な価値観の人と触れ合えたことが、街づくりの仕事で利用者のイメージを膨らませる一助になっていると説明していました。

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NECの宮田優さん。社会公共ビジネスユニット医療ソリューション事業部で活躍中

それぞれの会社の働き方にも話題が及びました。小林さんは栃木県で働く「エリアコース」の採用ですが、希望すれば関東甲信越の埼玉県や山梨県などに転居を伴う異動が可能になる「ワイドエリアコース」という勤務スタイルもあり、社内で働き方の選択肢が広がっているそうです。NECでは在宅勤務制度を利用できるケースが以前よりも拡大し、制度を活用して育児と仕事を両立する人が増えています。

「結婚や出産で両立に苦労したり、仕事のやりがいや人間関係で壁にぶつかったり、辞める理由はいくらでも出てくる」と語りかけたのは松本さん。「なぜ働きたいのか。それに向けてどういう働き方の選択肢があって、どれを選ぶかという順で考えていくのが大切だと思う」と力を込めていました。

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参加者は真剣な表情でメモしながら話に耳を傾けていた

パネル討論の最後には、参加した男子学生から「コミュニケーション能力が大事だとよく聞くが、具体的にはどんな力が必要なのか」という質問が投げかけられました。小林さんは社内でどのようにビジネスコミュニケーションの方法を教えているかを紹介。新入社員は1年間、先輩社員が隣で付きっきりで「ホウレンソウ」(報告、連絡、相談)を誰に、どういうところまでしなければならないか、またメールの宛先設定や言い回しなどを教えていくそうです。松本さんや宮田さんは仕事相手から本当に思っていることをどう引き出すかについて話してくれました。「相手を仮想的に好きになり、もっと知りたいと思って話を聞いていく」(宮田さん)という言葉が印象的でした。

交流タイムで深掘り

セミナーでは佐々木編集長による講演にも参加者は熱心にメモを取りながら聞き入っていました。佐々木編集長は仕事や就職、働き方にかかわるさまざまな新聞記事を取り上げ、社会が常に変化しているということを例示。これから「人生100年時代」といわれるなか、キャリアは職業とイコールではなく、会社以外の生活も含めた生き方全般の視点から考えていく必要があることを伝えました。

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佐々木玲子編集長は社会情勢から学生のうちに身につけたいことまで幅広く講演

セミナー終了後は参加者と登壇者との交流タイムです。飲み物を手にリラックスした雰囲気で、パネル討論の内容や実際の働き方についてさらに深掘りして質問する姿が見られました。参加した学生からは「働く女性の生の声を聞くことができた」「就職活動のヒントを得た」などの声が上がり、さまざまな角度から自らのキャリアを考えるきっかけになったようでした。

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交流会では打ち解けた様子で登壇者と参加者が懇談していた

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