イベントリポート

権力を握った女性3人の愛憎劇~映画「女王陛下のお気に入り」試写会

18世紀初めの英国王室を舞台にした映画「女王陛下のお気に入り」(2月15日全国公開、配給:20世紀フォックス映画)の特別試写会が2月6日、日経ホール(東京・大手町)で開かれました。権力の中枢にいる実在した3人の女性が繰り広げる愛憎劇。今年のアカデミー賞では最多タイの9部門10ノミネートの注目作品です。試写会を鑑賞した日経ウーマノミクスの会員からは「すごい映画」「しばらく忘れることのできない作品」との声が寄せられました。
 (後日追記:米ロサンゼルスで2月24日発表された第91回米アカデミー賞で、本作のアン女王を演じたオリヴィア・コールマンが主演女優賞を受賞しました)

圧倒される女優3人の迫力ある演技

作品は1702年にイングランドの王位を継承したアン女王(オリヴィア・コールマン)と、彼女の幼なじみで女王と国政を操る女官長レディ・サラ(レイチェル・ワイズ)、そして召使いから侍女に昇格し女王の心をつかんでいくアビゲイル(エマ・ストーン)の3人の人間模様を、ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督がドラマチックに描いています。女王の寵愛を得るために繰り広げられる宮廷内の権謀術数は、当時の英国の内政を揺り動かし、戦争状態にあったフランスとの外交の行方をも左右していきます。権力を握った3人の女性は18世紀の英国史・欧州史に大きな影響を与えました。

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アン女王(右)をオリヴィア・コールマン、女官長レディ・サラをレイチェル・ワイズが演じた

国家をも揺らす3人の女性の駆け引きとその心情描写について「女性の権力闘争というよりも、愛情と野心、野望の果てしなさにうなずくばかりで、あっぱれ」(50代女性)「イギリス版『大奥』といった感じ。女王をめぐる三角関係のエグさに興奮し、目が離せなかった」(50代男性)「野心を持つ女性の恐ろしさをひしひしと感じた」(40代女性)「あでやかで時に官能的な『女の世界』を堪能できた」(50代女性)といった感想が会員から聞かれました。

スクリーンには超広角レンズを使った独特なカメラワークによる映像美が繰り広げられ、きらびやかな宮廷衣装と装飾美術がつくり出す豪華でシックな世界に引き込まれます。重厚感のあるバロック調の音楽も効果的。そんな芸術的な舞台装置のなかで圧倒的な存在感を見せるのが女優3人の迫力ある演技です。「女優陣の表情がスゴイ!」(50代女性)「有名になってもエマ・ストーンがあそこまでするとはすごい」(50代男性)「エマ・ストーンの演技はすごかった」(40代女性)と見る者をうならせます。

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アビゲイルをエマ・ストーンが熱演。これまでとは違う新境地の演技を見せた

レディ・サラはダイアナ妃やチャーチル首相の先祖

作品は歴史物語だけに、時代背景を知っておくと登場人物やストーリ展開が理解しやすくなります。映画が描く時代の少し前、英国は歴史の教科書に出てくる「名誉革命」(1688~89年)で国王ジェームズ2世が追放され(フランスへ亡命)、その娘メアリー2世と夫のオレンジ公ウイリアム3世の共同統治の時代になります。この2人が亡くなった後に国王となったのが、メアリー2世の妹のアン(在位1702~14年)です。アン女王は37歳に即位するまでに17回妊娠しましたが、流産や死産、病気ですべての子供に先立たれるという悲劇に遭っています。女王の心に潜む孤独。映画はそれを様々なカタチで描いています。

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宮廷内の豪華絢爛な美術やモノトーン中心のシックな衣装は印象的。男性キャラクターの衣装や化粧にも注目

アン女王の時代は政治の世界でホイッグ党(後の自由党)とトーリー党(後の保守党)の二大政党が台頭した時であり、スペイン継承戦争(1701~14年)で英国が太陽王ルイ14世のフランスと大陸で激しく戦っていた時代です。英国などの同盟軍を最高司令官として率いたのがレディ・サラの夫のモールバラ公ジョン・チャーチル。1704年のブレンハイム(英語名ブレナム)の戦いでフランス軍を破った功績を称え、アン女王はオックスフォード郊外に豪華な宮殿を与えます。これが現在、世界遺産になっているブレナム宮殿。映画の冒頭にはアン女王がサラに宮殿の模型を見せるシーンが出てきます。

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試写会を見た40代の女性会員は「権力を持つ者とそれに近づこうとする者。時代背景が絡んで各々の立場の思惑・・・。実在する人物なので興味を持ちました。調べてみたいです」と感想に記しています。ちなみに第二次世界大戦下の英首相ウィンストン・チャーチルやダイアナ妃は、ジョン・チャーチルとレディ・サラ夫妻の子孫です。ウィンストン・チャーチルはこのブレナム宮殿で生まれています。

注目度高く、試写会場は満席

アカデミー賞最多ノミネート作品の注目度は高く、この日の特別試写会には約600名が訪れ、会場の日経ホールはほぼ満席でした。日経ウーマノミクスの会員招待枠は50組(100名)。これに対して応募数は1150件を超え、当選倍率23倍の狭き門でした。

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試写会場の日経ホールはほぼ満席に

映画の中で描かれた3人の女性の行動や思いを、作品を見たウーマノミクス会員がどのように受け止めたかは様々なようです。「社会権力が結びついた瞬間に、どうしようもなく人が自分の気持ちに誤った判断を下すものだと実感しました」(20代女性)「どんな決断でも人を幸せにするとは限らないということをセリフではなく、表情で感じさせられました」(40代女性)「人とのつながりを考えさせられました。何が表で、何が裏か。孤独を感じる人ほど、裏の顔に支配される気がしました」(40代女性)「女性の心の中は読めません。ドロドロ劇だとは聞いていましたが、ここまですごいとは! 人間とはここまで冷酷になれるものなのかと思いました」(50代男性)――権力の中枢で懸命に生きる女性たちの姿に皆さんは何を感じるでしょうか。

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