イベントリポート

バイオリンの演奏体験と解体ショー
親子で上質な音楽を堪能

働く女性のための総合イベント「WOMAN EXPO TOKYO 2019」(日本経済新聞社、日経BP主催)最終日の5月19日夕刻。会場の東京ミッドタウン(東京・港)に続々と集まってきたのは小学生を連れた日経ウーマノミクス・プロジェクトの会員のみなさんです。この日、「親子で音楽を体験する春の夕べ」と題し、バイオリンを解体してしくみを解説する「解体ショー」と演奏体験を組み合わせたワークショップ、人気バイオリニストの宮本笑里さんの演奏を堪能するコンサートの2つのセッションが開催されました。親子でたっぷりバイオリンを満喫していただいた1時間半の様子をリポートします。

バイオリンの中をのぞいてみると・・・

ワークショップにやって来たのは約40人の小学生の子どもたち。2チームに分かれ、「解体ショー」と演奏体験に参加しました。少し照明を抑えた会場。2つのワークショップを行うスペースが明るく照らし出されています。

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日本ヴァイオリン社長の中澤創太さんは父がバイオリン修復家、母はバイオリニストという音楽家系。これまで仕事も含め手にしたストラディヴァリウスは70挺を超えるそう

ワークショップのスタートは日本ヴァイオリン社長の中澤創太さんのあいさつです。同社は弦楽器の売買や修復を手がけ、さまざまなワークショップを通じてバイオリンの普及にも取り組んでいます。「バイオリンはよく知っている楽器だと思いますが、実は触ったことがないという人も多いのではないでしょうか。お堅いイメージもあるかもしれません。きょうはぜひ魅力に触れてみてください」と呼びかけました。

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日本ヴァイオリンでバイオリンの修理などを担当する中川洋さんとクレモン・ラリュバンさんは子どもたちと対話しながらワークショップを進行します

ワークショップの一つは「解体ショー」。同社でバイオリンの修理やメンテナンスを担当するベテラン職人の中川洋さんとクレモン・ラリュバンさんが講師を務めます。特徴的な「f」字の形の穴が開いている表板を工具でパカッと外すと、間近でのぞき込む子どもたちだけでなく、後ろから見守る保護者のみなさんからも「おおー」とどよめきの声が上がります。

普段なかなか見ることのできないバイオリンの中は・・・ほとんど空洞です。ボディーの中ほどで真っ二つに切断された別のバイオリンも登場。弦の振動が、いったいどのようにして美しい音として響くことができるのか? 子どもたちはテーブルから身を乗り出して解説に耳を傾けます。

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表板のないバイオリン、真っ二つになったバイオリン・・・なかなかお目にかかることのできない姿のオンパレードです

バイオリンが「解体」されたテーブルの横には紺色のクロスのかかった長机。クロスを取ると、「わあー」「小さい!」と子どもたちが口々に歓声を上げます。実物よりやや小さめサイズのバイオリンの部品約20個がズラリ。どのように部品が切り出され、バイオリンの形になっていくのか中川さんが説明するかたわらで、興味津々な様子で部品に触る子どももいました。

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硬い木材からバイオリンの優美な曲線が生まれる様子がわかります

きらきら星、「弾けたよ!」

隣のコーナーでは演奏体験です。子どもが弾ける小さなバイオリンにはいくつかサイズがあるため、身長の近い参加者同士で3人程度のグループに分かれます。指導してくださったのは、東京芸術大学音楽学部器楽科弦楽器専攻の現役学生のみなさん。「手をキツネさんの形にして・・・」と優しく語り掛けながら、弓を持つ小さな指先に手を添えてスーッと動かしてあげると、きれいなバイオリンの音色が響きました。「弾けたよ!」 少し緊張気味だった子どもの顔に一気に笑顔が広がります。

この日の課題曲は「きらきら星」。「きらきら光る」の歌詞のメロディーに挑戦です。「ラ・ラ・ミ・ミ・ファ・ファ・ミ」とあちこちからかわいらしいメロディーが聞こえてきます。

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東京芸術大学音楽学部器楽科弦楽器専攻の学生のみなさんは子どもたちの目線に立って、初めてのバイオリンを手ほどきしてくれました

ワークショップ編の最後はバイオリンの音を聴き比べるミニテストです。ここでスペシャルゲスト、宮本笑里さんが登場。中澤さんのナビゲーションで、約300年前の1台と最近作られた1台の音色を1回ずつ試し弾きしてくれました。「演奏体験で耳も肥えてきたはず」と中澤さん。1台を選んで、宮本さんが再び弾いた音を目をつむって聴く子どもたちに「これは古いほう? 新しいほう?」と質問です。手を挙げた子を指名すると、「古いほう!」。大正解でした。みなさんが無事にワークショップ編を終えた記念として、一人一人に「修了証」が渡されました。

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中澤さんの持つバイオリン(左)と宮本笑里さんのバイオリン、どちらが300年前のものかわかりますか?
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ワークショップ編の「修了証」。受講生全員が手にすることができました

圧倒的な演奏にくぎ付け

コンサート編が始まるまでのひととき。ステージでは、ワークショップ編の演奏体験の講師を務めた芸大生のみなさんのスペシャルカルテットによるぜいたくなウェルカム演奏が繰り広げられました。演奏体験の課題曲「きらきら星」を、この日のために同大作曲科の学生さんが編曲したスペシャルバージョンの変奏曲が披露されると、大人も子どももじっくりと聴き入っていました。

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演奏体験の先生がたの華麗な演奏に子どもたちもじっと耳をすませていました

定刻を少しすぎてコンサート編のスタートです。舞台に登場した宮本さんに拍手と歓声が広がります。宮本さんがバイオリンを構えると、一転してピンと心地よく張り詰めた空気に。1曲目はパッヘルベルの「カノン」。客席前方に設けられた子ども用のカーペットエリアにリラックスして座った子どもたちも、真剣なまなざしで宮本さんの演奏を聴いています。

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宮本さんの演奏が始まると会場の雰囲気がぱっと華やぎます
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カーペットエリアは舞台の真ん前。身を乗り出して聞く子どもも

1曲目を演奏し終えると宮本さんのトークタイムです。「1オクターブの中にあるたった12の音の組み合わせでたくさんの名曲が生まれ、人を感動させられるのは本当に奇跡的だなと思います」と宮本さんが音楽の魅力を語りかけると、大人の参加者のみなさんも深くうなずいていました。2曲目、3曲目にはエルガーの「愛のあいさつ」、クライスラーの「愛の喜び」と華やかでなじみ深い曲が続きます。この日は小さな子も来場するということで、子どももおなじみの曲を中心に選曲いただきました。

続いて「You Raise Me Up(ユー・レイズ・ミー・アップ)」、そして「星に願いを」とポピュラー音楽も。「(ユー・レイズ・ミー・アップは)アイルランド民謡の『ダニーボーイ』のメロディーがもとになっています」と宮本さんは曲の背景の解説を交えてコンサートを進行してくれます。共演するピアニストの前田健治さんとの息もぴったりです。

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宮本さんはわかりやすい語り口で演奏曲について説明してくれました

ミニコンサートはあっという間に最後の一曲に。「これをきっかけにバイオリンの魅力をもっと知って、大好きになっていただけたらと思います」と宮本さん。ラストに選ばれたのはモンティーの「チャールダーシュ」です。緩急織り交ぜて進むロマ音楽独特のメロディーが印象的なこの曲。目にも止まらない指の速さでドラマチックな旋律を奏でる宮本さんの姿に、少し歩き回ってしまった子どももいつしかきちんと座ってくぎ付けになっている様子が印象的でした。

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