イベントリポート

私が始める、働き方改革2019~自由で柔軟なお仕事、探しませんか。

インバウンド観光客でにぎわうミナミや梅田の喧騒から少し離れた落ち着いた雰囲気の大阪・北浜。もともとは証券会社などが集まる「金融の町」ですが、最近は土佐堀川沿いのレトロな建築物が復元されたり遊歩道が整備されたりして、週末も地元のカップルや通な観光客が集まる「大人のにぎわい」を見せるエリアになりつつあります。日経ウーマノミクス・プロジェクト実行委員会は11月16日、この北浜にある「エル・おおさか」で「私が始める、働き方改革2019~自由で柔軟なお仕事、探しませんか。」と題したウマノミゼミナールを開催。フリーランスで働く女性4人が登壇し、組織に属さずに仕事をする魅力と現実を語ってくれました。

「好きなこと」を仕事に

育児や介護などで時間に制約のある女性たちを中心に、多様な働き方へのニーズは年々高まっています。大阪府が後援する、新しいタイプの働き方をテーマにしたウマノミゼミナールは毎年秋に開催しており今年が4回目。今回も定員を大きく上回る200人近くの応募があり、参加者は抽選に。「組織に属さない働き方に興味があった」「一歩踏み出す勇気をもらいたい」など自分らしいワークスタイルを模索する女性100人近くが週末の朝、北浜に集まりました。

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会場には100人近い女性が集まりました

セミナーはトークセッションと交流会の2部構成です。トークセッションでは、フリーランスとして働くリボン講師の大野奈緒さん、フードマーケターの小松佐保さん、子ども英会話教室を経営する島内真子さん、野菜ソムリエプロの保田まり子さんの4人が登壇しました。司会もフリーのアナウンサーとして活躍する平野裕加里さんです。普段なかなか出会えない職業のかたが多いこともあり、どんな話が聞けるのか、会場の参加者の期待が膨らみます。

まずは今の仕事を始めたきっかけについて――。大野さんはエステサロンに勤務し、忙しい日々を送っていたときに体調を崩して退職を決意。フリーランスでエステティシャン、食育指導士、リボン講師と自分の「好きなこと」を追い求める日々を送ることにしました。コンサルティング会社に勤めていた小松さんは様々な業界のクライアントを担当するなかで「自分が好きな食品業界だけを担当したい」と思うように。夫が海外留学するタイミングで会社を辞め、米ボストンを拠点とする食品関連コンサルタントの道を歩み始めました。

島内さんは専業主婦時代を経て「手に職を持って自立したい」とピアノ講師デビュー。教えることが好きになり、他に何か教えられることはないか考えていたときに、昔から好きだった英語が脳裏に浮かんでECCジュニアの説明会に参加。そこから英会話教室の経営と英会話指導の道へ。保田さんは子供2人の子育てと会社勤務との両立に苦労して退職。子育てに専念してしばらくしたころ「野菜を通じてまわりを幸せにできる仕事」として野菜ソムリエに注目。資格を取得し、現在は地元の伝統野菜を使った料理教室や親子料理教室を開催しています。

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パネリストの4人。左から大野奈緒さん、小松佐保さん、島内真子さん、保田まり子さん

現在の仕事に至った背景はそれぞれ異なりますが、結局のところ「自分が好きなこと」を見つけて仕事にしている点は4人とも同じです。フリーランスの仕事は時間や場所など自由度が高い反面、一定のセルフコンロトールができないと継続しにくいのも事実。「好き!」という思いが、フリーランスの仕事のモチベーションを支える大きな原動力になっているようです。

フレキシブルな働き方と必要な覚悟

次に、会社などに勤務する仕事とフリーランスの仕事との違いに話題が移ります。皆さんが声をそろえるのが「自分のニーズに合わせて仕事を調整できる」という点。「以前はクライアントに合わせて深夜まで働いたこともあったが今は非常にフレキシブル」(小松さん)、「子供の成長や家庭の事情に合わせて仕事ができるのがありがたい」(島内さん)、「今はすべてが自分の時間。仕事をするもしないも自分で決められる」(大野さん)といった声が聞かれました。フリーアナウンサーの平野さんからも「子供の成長に応じて、日帰りの仕事に限定したり宿泊の出張を復活させたり、仕事と家庭の比重を調整できるのが大きなメリット」という意見が出て、会場もうなずく人の姿が多くありました。

ここまで聞くと「いいことずくめ」のように思えるフリーランスの仕事ですが、もちろん組織に属さないがゆえの苦労もたくさんあります。「クライアントを一から探すのが本当に大変」(小松さん)、「自分が体調を壊すと代わりがきかない」(大野さん)。また英語の教室3つと個人指導塾を展開する島内さんは「講師やスタッフを雇うため経営者としての気配りも必要だし、(信頼が重要なビジネスだけに)保護者との人間関係にも気を使う」と話します。企業勤めだと、企業が持つ「看板」やクライアントベースに助けられたり、経理・労務管理などは専門の部署が担当してくれたりとありがたい面が多いのも事実。フリーランスになって、こういった組織のありがたみに気づいたと話す登壇者もいて、独立して仕事をしていくには「覚悟」が必要なことが伝わってきました。

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登壇者の話を聞きながらメモを取る参加者が多くいました

苦労の先に得られる達成感

フリーランスとしての苦労が多々ありながらも、非常に充実した感のある皆さん。ズバリそのメリットを聞いてみると「企業勤めの時代は自分の仕事が人のためになっているのか、正直よく分からなかったが、今は直接クライアントに感謝されることも多く達成感を感じやすい」(小松さん)、「(教室開設のために)初めてテナントを借りようとしたときは女性ひとりだと怪訝そうにされたこともあった。10年余りを経てたくさんの社員に恵まれ、幸せだと感じる」(島内さん)といった満ち足りたコメントが相次ぎました。

最後に、新しい働き方に関心がある方々へのメッセージをいただきました。「もともと自分に自信がなかったが、勇気をもって一歩踏み出したことで世界が広がった」(保田さん)、「自分で仕事を作るのは本当に楽しい!」(大野さん)とポジティブなコメントの連発に気分が高まります。司会の平野さんから「やみくもに進めるのではなく、自分が何をやりたいのか、何に適性があるのか、よく考えてから挑戦してみてください」という温かくも含蓄のあるコメントでトークセッションは終了となりました。

トークセッション後には大阪府商工労働部・女性就業推進グループの三杉真理子さんが登壇。ビジネスマナーやメイクアップを教える講座を開催したり、ハローワークと連携して就職相談や「仕事と子育てが両立できる求人」を集めた就職面接会を実施したりするなど、子育てママの復職支援に向けた一連の施策について参加者に説明しました。

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トークセッションの後は交流会。参加者の皆さんは軽食を取りながら、登壇者に質問したり参加者同士で情報交換したりしていました

第2部の交流会では、登壇者の周りに人だかりができ「何から始めたらいいか」「会社員時代にできる準備は?」など、セミナーを通じて膨らんだ疑問を次々と投げかけていました。この日の参加者アンケートの「現在の働き方を変えたいと思いますか」という設問に対し、「非常にそう思う」と回答した人が42%、「少しそう思う」が46%になり、何らかの変化を望んでいる人が約9割という結果に。その理由としては「自分のペースで仕事をしたい」「キャリアアップ」が圧倒的多数を占め、自分らしく働きながらキャリアアップしたいと希望する女性が非常に多いことが伺えました。一方、フリーランスで働くロールモデルが近くにいないことが多く「イメージが湧かない」「現実的に考えにくい」という声もあがっていました。今回のセミナーで繰り広げられた、フリーランスの仕事で活躍している女性たちの本音トークが、ジブンらしい働き方へといざなう良いきっかけとなってくれればと願うばかりです。

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