イベントリポート

備えあれば憂いなし~人生100年時代のマネープラン ~

今や日本では女性の4人に1人が95歳、男性の4人に1人が90歳まで生きます。私たちは平均寿命が江戸時代の2倍にも伸びた超長寿化時代を過ごしています。さて、そんな時代に自分らしく毎日をおう歌するには、先々のお金に対する不安の解消が必要です。2019年春、「人生100年時代のマネープラン~ご自身にあったプラン、年代別に考えてみましょう~」(大和証券主催、日経ウーマノミクス・プロジェクト企画協力)と題するセミナーが東京と大阪で開かれました。3月2日の東京・丸の内会場には20代から60代まで多数の方が来場し、興味深く講師の話に聞き入りました。専門家3人によるポイント解説を参考に「賢い備え」へのヒントをつかんでみましょう。

人生の不安やリスクに向き合おう

まずは夢ある人生を創るためには、現状の把握が第一歩です。セミナー第1部の講師を務めたのは年金や資産運用に関する相談をたくさん手掛け、執筆活動を通じて情報発信するファイナンシャルプランナー(FP)の山中伸枝さんです。司会の榎戸教子さんが時折、誰もが抱く疑問を投げかけ、参加者の理解を助けてくれます。山中さんは人生100年時代の不安やリスクに向き合うために、日本の年金制度のことをわかりやすく解説し、これまでの貯蓄から資産形成へとシフトしている社会の動きについて親しみやすく話しました。

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第1部はファイナンシャルプランナーの山中伸枝さん(右)が「夢ある人生100年のマネープラン~私の人生は私が創る~」と題して、司会の榎戸教子さん(左)の質問に応えながら講演

私たちがリタイア後の資金として頼りにする年金について、山中さんは「もらうもの」ではなく「つくるもの」という考え方を強調しました。例えば結婚・出産して仕事を辞めた場合と出産・育休後に復職した場合とでは、老齢厚生年金の受給額は大きく変わるとの試算を示し、働き方の選択を吟味しながら、働き続けることが将来の資産を増やす手立てになると説きます。「ねんきん定期便」で給付額を把握する方法や将来の年金額の調べ方は、初心者にもわかりやすかったです。

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「お金は人生の選択肢を増やしてくれる。自分が目指すものを実現するために前向きに向き合ってほしい」と山中さん

老後に頼りにしたい年金ですが、山中さんは現役世代の人口減少や平均余命が伸びると「マクロ経済スライド」という仕組みが働き、給付水準が自動的に抑制されると指摘しました。また日米英3カ国の過去20年ほどの家計金融資産データを示しながら「日本人のお財布だけが成長していない。その理由はお財布の中身にある」と強調し、貯蓄中心の発想から資産形成へと踏み出す必要性を語りました。

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日米英3カ国の家計金融資産を比較しながら、日本人の資産が成長していない理由を解説

山中さんの講演によって、皆さん、現在の状況を理解しました。その後、具体的に"どう備えるか"を第2部で整理します。40~50代向けと、20~30代向けの2つの部屋に分かれてセミナー第2部が始まりました。

40代、50代からはじめる人生100年へのそなえ

「40代、50代からはじめる人生100年へのそなえ」のセミナーでは、大和証券の確定拠出年金ビジネス部の小出昌平さんが講師を務めました。ご自身が眼の病気を患い高額療養費制度のお世話になったり、親御さんの介護を実践されたりと、同世代に向けた講話はリアリティーにあふれ、セミナー終了後も質問が相次いでいました。

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40代、50代向けのマネープランについて講演する大和証券の小出昌平さん

小出さんが訴えたのは、超長寿社会におけるがんや介護への備えの必要性です。現代の日本では、70代になると4人に1人以上ががんと診断され、80代になると4人に1人が要介護・要支援と認定されます。がんの治療費用の目安は約200万円、介護にかかる平均費用は約500万円だそうです。このため小出さんは2大リスクへの備えとして「70代から80代までに約700万円を準備しておくことが、安心な暮らしに欠かせません」と指摘します。また「人生100年時代」となった現代では、50代からでも資産形成をするのに遅くはないと強調しました。70代、80代までお金と向き合うためにも、長期・積立・分散投資で資産を作ることの必要性を説いていました。

20代、30代からはじめる人生100年へのそなえ

小出さんと同じ部署の菅原正隆さんが講演した「20代、30代からはじめる人生100年へのそなえ」では「今日からつくろう、老後資金!」と呼びかけ、若い時から早めにセカンドライフに備えることのメリットと、その具体的なツールを中心に説明しました。

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20代、30代向けのマネープランについて講演する大和証券の菅原正隆さん

長期で資産形成をする上で有効な制度に個人型確定拠出年金「iDeCo」があります。iDeCoは「自分で決まった額を積み立てて運用し、60歳以降に受け取る」私的年金制度です。メリットとして大きいのが所得税などの税金の負担が少なくなる点です。毎月積み立てる掛金は全額所得控除になり、また、運用益も非課税となり、受け取るときも税制優遇されます。ただ原則60歳まで引き出せない制約などはあります。目的に応じて併用することも可能な積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)なども含めて、菅原さんは制度のメリット、デメリットを丁寧に説明し、若いうちからの準備を熱心に語りました。

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将来のお金の不安を解消して、自分らしい人生を歩めますように・・・

3月16日には大阪に舞台を移し、梅田駅前の新阪急ホテルで同セミナーを開催。朝から雨がぱらつくあいにくの天気でしたが、幅広い世代の参加者が会場に足を運び、講師3人の話に耳を傾けました。東京会場と比べて若い世代の参加者が少し多い印象です。さすが商人の町、早くからマネープランをしっかり立てる傾向が強いのかもしれませんね。

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大阪では梅田駅前のホテルで開催

備えあれば憂いなし――。ご自身のちょっとした努力と準備で、実り多い「100年人生」となりますように。 

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