イベントリポート

将来をイメージし、満足できる仕事を見つけよう~鹿児島大セミナー

今後のキャリアを考えるヒントにしてもらおうと、日経ウーマノミクス・プロジェクトが全国6カ所で開催する「学生のためのキャリアセミナー」。九州では鹿児島大学におじゃましました。集まった約70人の学生を前に日本経済新聞の木村恭子編集委員が、将来をイメージしながら満足できる仕事を選びましょうとアドバイス。3人の先輩女性が登壇したパネルディスカッションでは、学生時代との違い、働き甲斐を感じる時といった話が披露されました。熱心に聞き入る学生が多かったセミナーをダイジェストで紹介します。

人生100年時代、ライフスタイルは「複線化」

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男子学生も数多く参加した

セミナー当日の1月11日は真冬と思えない暖かさで、鹿児島のシンボル、桜島からは噴煙が上がっていました。最初に登壇したのは木村編集委員。「"自分らしい生き方"をデザインする」と題した講演が始まりました。

「女性活躍とこれまで何度も言われてきましたが、今回は政府も本気です」。冒頭、木村編集委員は時代の変化を強調しました。人口減・少子高齢化が進む中で、働き手として高齢者、そして女性が注目されています。女性には追い風であり、男性は女性と競争・協調する時代なのです。

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出題されたクイズの答えをスマホに入力

そんな今の日本をさらに理解するため、木村編集委員は会場の学生が参加する択一式のクイズを用意しました。「男女がどれほど平等になっているかを示すジェンダーギャップ指数で、2018年の調査対象149カ国のうち、日本は何位でしょう」といった質問に、学生たちが手元のスマートフォンやパソコンを使って挑みます。

クイズを通じて木村編集委員が伝えたかったのは3つです。日本は労働生産性が低いという現実。政治経済分野を中心に、日本では男女格差が根強くあるという問題点。最も大事なのが、人生100年時代を迎え、ライフスタイルが変わってきたということです。20代前半までに学校で学び、就職。60歳を過ぎて退職、老後を過ごすという「単線型」ではなく、転職したり、退職後に学び直したりといった多様な生き方、過ごし方ができる「複線型」の人生になり、これまで以上に選択肢が広がっているということです。

これらを踏まえ、木村編集委員はこれから働き方、就職先を選ぶ際には、「完璧を求めるのではなく、自分なりの優先順位をつけて考えてほしい」と話しました。男女格差があるとはいえ、長期でみれば日本も、企業も確実に変わっています。長くなった人生ゆえ、再チャレンジもできるのです。「自分にとっての正解、満足できることを見つけてください」と続けます。そのためには情報収集も必要とも添えました。

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時代は変わってきていると木村恭子編集委員

最後に木村さんはスタイリストの大草直子さんの言葉を紹介しました。「人生は意外と長い」。悩んだり、ストレスを抱えたりしたら、肩の力を抜いてほしいと結びました。

好きなこと、譲れないこと見つけて

第2部は鹿児島県内で働く女性3人によるパネルディスカッションです。東京海上日動火災保険の宮田涼子さんは鹿児島大出身。保険を販売する窓口である代理店に向け、営業のほか経営支援を手掛けています。鹿児島銀行の井上祐未さんも鹿児島大のOGで、若手行員の人材育成を担当しています。城山観光の岩本惇美さんは「SHIROYAMA HOTEL kagoshima」のイベント企画、情報発信などに携わっています。コーディネーターは日本経済新聞の柿木英人執行役員が務めます。

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左から東京海上日動火災保険の宮田涼子さん、鹿児島銀行の井上祐未さん、城山観光の岩本惇美さん

東京海上日動の宮田さんは就職先を選ぶにあたり、休みがしっかり取れる、安定した収入が得られる、出産などのライフイベントがあっても働き続けられる、という3つの条件を満たす企業を探したと振り返ります。「学生時代のアルバイトとは違い、仕事となれば得意でないことも向き合わなければならなくなります」と働くことの厳しさも伝えます。

妊娠が分かった際も、子育てしながら勤務する先輩が周囲には多く、産休育休などの制度も整っていたので、会社を辞めることは考えなかったそうです。産休から復帰して半年余り。「働き続けているからこそ、子どもに伝えられることもあると思います。いろいろチャレンジできる会社なので、夢を持ちながら働いていきたいですね」と力を込めました。

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東京海上日動の宮田さんは現在12の代理店を担当。成果が出るとうれしく、やりがいもさらに増すと話す

鹿児島銀行の井上さんは水産学部の出身で、地元鹿児島で働きたいと金融機関の門をたたいたと話します。入行当時は結婚したら辞めるつもりでしたが、「様々な責任を持つようになり、お付き合いのあったお客様との交流が深くなるほど、働き続けなければと考えを改めました」。今は仕事を通じて社会貢献ができていると感じているとほほ笑みます。

セミナーに参加した後輩に向けて「自分の好きなこと、やりたいことは何であり、その希望を満たせる企業はどこか、じっくり研究をしてください。女性活躍推進と言われていますが、男性に負けるなということではなく、女性の強みを生かしてください」と呼びかけました。

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転居を伴う転勤のない「特定総合職」から、2年前に転居のある「総合職」に転換した井上さん。「仕事の幅を広げたいと思いました」

城山観光の岩本さんはアルバイトでお金をためて海外旅行に出かけるという学生時代を過ごす中で、鹿児島の魅力を国内外の人にPRできる仕事に携わりたいと、今の仕事を選んだといいます。「ホテルのイベントなどでは、チーム一丸となって作り上げていきます。連携が密なほどお客様に喜んでもらえますし、やりがいを感じます」

働くことはつらいことだと学生時代は想像していたそうですが、今は働くことは楽しいと断言します。学生には「社会人になれば好きなこと、得意と思っていることをぜひ仕事に生かしてください。働いている時間が楽しいほど、人生は豊かになると思います」とエールを送りました。

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城山観光の岩本さんはSHIROYAMA HOTEL kagoshimaのイベントとして、縁結びをとりもつ「カップリングパーティー」などを企画

セミナー終了後は交流会があり、学生たちは日ごろの疑問や会社生活の実態など、肩の力抜いて聞いていました。出席した学生からは「なんとなくいつかどこかに就職するんだろうという今までの考えから、自分がどんな会社を重視し就職するのか、また就職してどんな目標をもって仕事をするのかを考えなくてはいけないと思いました」(1年生女子)。「自分のやりたいこと、ゆずれないものを見つけられるよ、様々な経験をしていきたい」(1年生男子)との声が。これからいくつもの選択を求められる学生たちにとって、自分を見つめなおすきっかけとなったようです。

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交流会では鹿児島弁が広がり、ほっこりした雰囲気に

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