イベントリポート

今日から始める3つのこと~学生のためのキャリアセミナー in 岐阜大

周囲をぐるりと山に囲まれた緑豊かな岐阜大学。5つの学部が集まる岐阜市内の広大なキャンパスには川が流れ、小高い芝生の丘では学生たちが思い思いに過ごしています。2019年12月18日に開かれた「学生のためのキャリアセミナー in 岐阜大学」(主催:岐阜大学 教育推進・学生支援機構キャリア支援部門、日経ウーマノミクス・プロジェクト実行委員会、共催:岐阜大学 男女共同参画推進室)には就職活動を控えた3年生を中心に約40人の学生が集い、大学OGらの社会人が語るリアルな「お仕事トーク」に耳を傾けました。

幸せキャリアのカギは「知識」「アウトプット力」「ライフプラン」

第1部は日本経済新聞の中村奈都子女性面編集長が「自分らしく働くために今、知っておきたい3つのこと」と題して講演しました。若い時の人との出会いや経験が、その後の学びや仕事の方向性に大きな影響を与えたというソフトバンクグループの孫正義会長兼社長やメルカリ創業者の山田進太郎社長の話を例に挙げ、人から知識や経験を吸収することの重要性を強調。将来を見通しにくい現代において「キャリア形成に勝ちパターンはなく、自分らしく生きる上で力となるのは知識」と説きました。

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キャリアセミナーの会場には約40人の学生が集まった

日本の産業界が取り組んでいる「働き方改革」や「ダイバーシティ」については、依然として世界の変化のスピードに追い付いていないと指摘。就職活動で積極的に取り組む企業を見分ける方法として、アニュアルリポート(年次報告書)などで経営トップが働き方改革やダイバーシティに言及しているか、具体的な目標を掲げているか、を挙げました。

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日本経済新聞の中村奈都子女性面編集長は講演で、時代の変化に対応しながら自分らしく働くために大切な視点を指南した

講演の最後には、自分らしく働くために大切な3つのポイントを示しました。「知識を身につけること」「アウトプット力をきたえること」「(人生100年時代を見据え)学び、仕事、ライフイベントについて自分なりのライフプランを考えること」を挙げ、学生が今日から始められる取り組みとして「本を毎日15分読む」「読んだ内容を人に説明する」「ニュースや日常で感じた問題について自分なりの解決策を考える」を紹介すると、学生たちのメモを取る手がにわかに早くなりました。

先輩社員が語る会社選びと仕事のやりがい

第2部は社会で活躍する大学OGらよるパネルディスカッション「将来の自分をイメージしよう~先輩社員から学ぶ」です。健康補助食品・医薬品メーカーのアピ(岐阜市)生産本部技術開発部に勤める堀留彌さん、十六銀行・法人営業部地域開発グループの後藤育実さん、東京海上日動火災保険・岐阜支社の浅井亜希さんが登壇し、中村編集長がコーディネーターとなって学生時代や社会人になってからの経験談などを語りました。

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パネルディスカッションには岐阜大OGら先輩社会人3人が登壇した。コーディネーターは中村女性面編集長

堀さんは岐阜大学大学院を修了後、アピに技術開発職として入社。就職活動では「自分が関わった製品が店頭に並ぶ喜びを味わいたい」とメーカーを志望しました。同じく岐阜大学OGの後藤さんは、東海地区が地盤の十六銀行に勤務。大学生時代は地元岐阜の良さを発信する学生団体で活動し「地域に貢献できる企業」という軸で就職先を考えました。愛知県出身の浅井亜紀さんは、南山大学を卒業後、東京海上日動に入社。岐阜支社で保険代理店への営業を担当しています。就職活動中に先輩社員が自分の意見をはっきりと話す姿を見て「自分が成長できそうな職場だ」と感じたことが入社の決め手になりました。

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アピの堀留彌さん。技術開発部で健康食品の新製品開発や特許技術の開発に取り組んでいる

3人は仕事を通じて成長を感じたことや今の仕事のやりがい、今後の目標などを話してくれました。堀さんの主な仕事は、顧客企業の要望にあわせて食品の味を決める試作です。時にはうまくいかないこともありますが「技術職はトラブルを楽しめるぐらいでないと」という先輩の言葉を胸に奮闘。最近はその感覚が分かってきたと明るい表情で話します。後藤さんは2カ月前に個人顧客に金融商品を提案する部署から、中小企業の産学連携支援などを担当する部署へ異動したばかり。大学で「中小企業施策」を学んでいた後藤さんにとっては希望の部署で「銀行員としてどう地域と関われるか、改めて考えていきたい」と意気込みを語りました。浅井さんが扱う商品は目に見えない保険です。顧客と信頼関係を築く苦労がありますが、その苦労が喜びに変わることも多いそうです。「あなたが担当でよかった」と感謝されたときにやりがいを感じる、と熱く語りました。

学生時代は関心事にとにかくチャレンジを

学生時代は3人ともサークルや部活などで充実した毎日を送っていたようですが、いま振り返ってみて「学生時代にもっとやっておけばよかったこと」を中村編集長が尋ねました。

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十六銀行の後藤育実さん。法人営業部で地域の中小企業と大学の研究をつなぐ役割を担う

技術職の堀さんが挙げたのは「人前で話す訓練」。昔の技術職は職人肌でものづくりに集中していればいい面がありましたが、今はプレゼンテーションなど人前で話す機会が増えているそうです。後藤さんは「大学は自分の関心事を探る最大の場」だったと振り返り、「もっと海外へ行ったりインターンシップを経験したりするなど、関心のあるものに次々と飛び込むフットワークの軽さがあったらよかった」と話しました。浅井さんが挙げたのは「多くの本を読むこと」。仕事では多くの資料や保険約款などを読んで顧客への提案内容を考える機会も多いため、文章を正確に素早く読み解く力が仕事のスピードアップにつながるといいます。

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東京海上日動火災保険の浅井亜希さん。岐阜支社で保険販売を本業とする代理店の営業を担当している

最後に先輩からこれから本格的に就職活動を始める学生たちにメッセージをいただきました。堀さんの活動の原点は小さいときから好きだったものづくり。就職活動には情報戦というイメージがありますが「迷いを感じたときには幼いときに夢中になったこと、好きだったことを思い出すことがヒントになる」と語りました。後藤さんは「自分が気になったらその直感を大事にして、関心事に向き合い、今までやってこなかったことに挑戦してほしい」と伝えました。浅井さんも「やらずに後悔することがないようにしてほしい。気になることがあれば調べたり思い切って飛び込んだりしてほしい」とエールを送りました。中村編集長からも「英語でもインターンシップでも気になることがあれば、ぜひ積極的に取り組んでほしい」と学生たちの背中を後押しするアドバイスがありました。

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セミナー後は登壇者と参加学生との交流会。学生たちは卒業後のキャリア人生に向けて気になる質問を次々と投げかけた

セミナー終了後は、登壇者と学生が軽食を取りながら気軽に話せる交流会です。学生からは「面接を受けたが、緊張でうまく話せなかったのでコツが知りたい」といった実践的なものから、「社内のチーム体制はどうなっているのか?」「飲み会の頻度は?」など働き方や社風に関することまで、さまざまな質問が飛び出しました。

今回登壇した3人の先輩たちは業種も職種も異なりますが、仕事を選んだ必然性を自分の中でストーリーとして持っていること、今も勉強し成長を続けていること、地域社会にいかに貢献できるかという視点を持っていること、といった共通項がありました。自分自身が主人公となり自分らしく働くための話は、参加学生たちの胸に大いに響いたのではないでしょうか。

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