イベントリポート
将来の自分をイメージ、失敗に負けない強さを
2018.02.17
「働く」ということがこれほど注目されるのは、今までなかったかもしれません。技術革新が進み、機械ができる業務は増えました。自宅でもカフェでも仕事ができます。何より、女性が社会で活躍するのが当たり前になってきました。そんな時代だからこそ、不安も生まれます。日経ウーマノミクス・プロジェクトは2017年度、「女子学生のためのキャリアセミナー」を全国6カ所で開き、女子学生が悩みを解消してもらう一助になればと先輩女性の声を届けてきました。2月17日の開催地は東京・大手町。登壇者に熱い視線が集まりました。
女性活躍、国も本気で支援
セミナーは日本経済新聞女性面、佐藤珠希編集長の講演でスタート。男女がどれほど平等かを示す「ジェンダー・ギャップ指数」で日本は世界144カ国中114位にとどまっている現状から切り出しました。政治・経済の分野でリーダーが少ないことなどがこの評価につながっていますが、「女性活躍推進法の施行をはじめ、国も本気で女性活躍を後押ししており、環境は変わり始めてきました」と強調します。
佐藤編集長は働き続けることで経済的に自立し、自由に生きる力が手に入るほか、達成感ややりがいも得られると話します。では、女性が活躍できる、成長できる会社をどのように見つければいいのいでしょう。佐藤編集長は1)トップがダイバーシティの推進を重要な経営戦略として掲げ、社内外に発信しているか。2)女性の管理職の割合は増えているのか、などチェックしてほしいと助言します。
もちろん、活躍するには自分も磨かないといけません。女性の場合、出産などライフイベントとキャリア形成時期が重なることが多くなります。ライフイベントは自ら決めることができません。なので「5年後、10年後のなりたい自分像をイメージするとともに、一緒に働きたいと思われる存在になることが必要です。スキルを高め、自らの役割を果たして、何かあった際には同僚の理解・協力を得られるようにしておくことが大事です」(佐藤編集長)。
思い通りにいかないこともあります。失敗もします。だからこそ「想定外を受け入れる柔軟な対応力や、失敗しても立ち直る『レリジエンス』を身につけましょう」と佐藤編集長は呼びかけました。
努力すれば、手を差し伸べる人現れる
続いて、先輩女性3人によるパネルディスカッションに移りました。登壇したのは積水ハウスの須釜綾さん、東京海上日動火災保険の森美和子さん、ホテルオークラ東京の一坪佳英菜さんです。
積水ハウスの須釜さんは横浜北支店の主任として、戸建て住宅を中心に販売しています。人生最大の買い物といわれる家。どの物件にもドラマがあり、できあがった際の感動は大きいとほほ笑みます。「お客様の人生の伴奏をしていると実感できることが、なによりのやりがいです」。今、おなかの中には赤ちゃんがいて、出産は5月で、1年で復帰するつもりです。「戻ってきた際にパワーダウンしないように、育児の合間に資格を取りたいと考えています」と目を輝かせました。
東京海上日動の森さんは本店損害サービス第二部長として、保険金の支払い業務を手がけています。「事故や災害に遭い、経済面・精神面でマイナスの状態にあるお客様にお会いします。これをまずゼロに、次にプラスにできたと思えたときがうれしいですね」。転居を伴う転勤のない「地域型」社員から、転居を伴う転勤のある「全国型」に転換し、名古屋に移った頃が最も苦しかったと森さん。「仕事がまったくできず、自信がなくなりました。1年間必死に勉強し、とにかく人に会うようにしていました。地道に努力すれば手を差し伸べる人も出てきます」と経験談を紹介しました。
就活は社会を知り、会社を理解するよい機会
将来は接客業がしたいとホテルオークラ東京でアルバイトしたことが縁で入社したという一坪さんは、料飲部オフィスでレストラン・バーのサポートをしています。ホテルオークラグループの料理コンクールでサービス部門を担当し優勝したほか、ホテルレストランサービス技能士1級を取得するなど今も研さんを続けています。「出産後、復帰を考えた際に、子どもを預けてまで仕事をすべきなのか、悩みました。でも、私が働き始めるのを心待ちにしているお客様がいると聞き、子育てと両立をしていきたいと誓いました」と振り返ります。10年後にはホテルオークラ東京初の女性レストランマネージャーになるのが夢だと話します。
女性が働く際の壁、プライベートの過ごし方など、硬軟織り交ぜた話に時折笑いもおきました。参加した女子学生に対し、最後は一言ずつメッセージ。須釜さんは「就活では40~50社回りました。これほど他社の人と会うことはありません。社会を知る、会社をわかるよい機会ですので、がんばってください」とエールを送りました。森さんは「働くことで自分が成長できます。成長には気付きが必要。気付きを得られる行動をしましょう」とアドバイス。一坪さんは「将来の目標が見出せないときには、何をしている自分が生き生きしているかを考えてみてください。いろいろな経験や人脈が自分の糧になります」と結びました。
最後は会場を移して、登壇者と参加者が意見交換する交流会。登壇企業の人事担当者なども加わり、話は尽きませんでした。「長く働きたいので、就職先を選ぶ際には企業の女性活躍推進の取り組みを注目していこうと思います」(大学3年生)、「昨年5月に就職を決めたけれど、今になって本当に自分がやりたいのは何か悩み始めて、参加しました。改めて自分の弱み、改善すべきことを教わり、勉強になりました」(大学4年生)、「やりたいことはあるけど、自信がなく、踏み出せませんでした。いろんなことにチャレンジします」(大学1年生)と参加した女子学生は皆さんにこやか。未来を考える時間になりました。