イベントリポート

グローバル企業で働くということ~転職でキャリアの可能性を広げよう

「世界を股にかける仕事って実際はどうなの?」「転職してグローバルなキャリアを歩みたい」――こんな思いを持った女性たちを対象にしたセミナーが7月21日、大阪市で開かれました。日経ウーマノミクス・プロジェクト実行委員会が主催するジブン磨き!ウマノミゼミナール「グローバル企業で働くということ~転職でキャリアの可能性を広げよう!」です。日本電産、クボタ、P&Gジャパンでそれぞれグローバルに活躍する40代の女性社員3人が登壇し、転職経験で得たものや世界を相手に働くことの魅力について熱く語ってくれました。

自分のやりたいことをぶらさず2度転職、「成長を実感」

この日の大阪市は最高気温35度を超える猛暑。それでも約80人の女性が登壇者の経験談に耳を傾けようと会場に足を運びました。登壇したのは、日本電産でグローバル購買統轄本部の課長を務める浦聖子さん、クボタの機械IT部SCM推進グループに所属する大原登紀子さん、P&Gジャパンの広報渉外本部カンパニーコミュニケーションズのシニアマネージャー田上智子さん。3人とも小学生または中学生の子どもを育てる母であり、海外出張も多いキャリアウーマンです。浦さんはこれまでに転職を2回、大原さんは1回経験。田上さんは夫を日本に残し、子連れでシンガポールに3年間赴任した経験があります。

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グローバルに活躍する3人の会社員が自らの経験談を語った。ナビゲーターは榎戸教子キャスター

浦さんが日本電産に転職したのは44歳のとき。子どもが中学生に成長したタイミングで、キャリアをもう一段広げたいと決断しました。大学卒業後に日系電機メーカーに就職し、34歳のときに育児に便利な自宅から近い外資系電子部品メーカーに転職。そこで管理職になりましたが、「外資系で自らの裁量権が限られていた」もどかしさがあり、「もっとダイナミックな仕事に挑戦したい」と日本電産に移りました。以前の2社では電子部品の海外営業と調達業務を担当し、現職も「これまでの経験を総合的に生かせる」と自信があったといいます。

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日本電産・グローバル購買統轄本部の浦聖子課長。「世界で一番良い製品を一番安く安定的に買う」仕組み作りを目指す

日本電産は中途採用の社員が多いこともあり、浦さんは「中途という感覚がなく、自分で起案して、どんどんプロジェクトを進められる」と働きがいを感じています。また会社が女性活躍推進に力を入れていて、在宅勤務など女性が働きやすくなる新制度が次々と整えられるスピードは「感動的」と表現するほど。転職によって「自分が成長していることを実感できている」そうで、これからも「自らがやりたいことはぶらさずにいきたい」と話しました。

転職によって会社の長短所を客観的に把握する

クボタの大原さんは37歳のときに、大学卒業後14年勤めた電器メーカーから転職しました。働きやすい職場でしたが、「新しい世界を見てみたい」との思いがあり、40歳になる前の転職を決意。それまでのIT部門の経験を生かせ、さらに海外展開を進めて成長していたクボタを選んだそうです。女性社員比率はまだ1割ほどですが、「最近は社内でも妊婦さんをよく見かけ、産休・育休を取得する社員が増えてきた。決して女性が働きにくいわけではない」と話しました。

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クボタ・機械IT部SCM推進グループの大原登紀子さん。「転職してもこれまでの人脈がつながり、世界が広がる」という

クボタの機械IT部では海外で製品を製造・販売するための各種システムの導入などを担当。これまでに欧米など9カ国に出張したほか、世界各地のユーザーと仕事でつながっています。また最近はクボタグループ全体のサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)を改革するプロジェクトに参画中。「転職したことで前の職場の風土や文化が客観的に見えるようになり、それを新しい会社で生かせるのが強み」と感じています。

働きやすい会社への変化を実感

P&Gジャパンの田上さんは新卒でマーケティング部に入り、5年目に自ら志願してヘアケア製品の広報部を立ち上げました。同社は部門別採用のため「異動は社内転職のようなもの」。シンガポールで3年間の母子赴任も経験し、帰国後は企業広報を担当しています。米国に本社を置くグローバル企業だけに、社内公用語は英語。入社当初は英語にコンプレックスを抱えていたそうですが、「流暢だから仕事ができるわけではない。英語は道具。道具を使って何をするかに私の強みがあると信じて20年以上仕事をしてきた」と胸を張りました。

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P&Gジャパン・広報渉外本部カンパニーコミュニケーションズの田上智子シニアマネージャー。「シンガポール勤務によって日本のビジネスのよさを再認識した」

同社は「ダイバーシティ&インクルージョン(多様な人材が能力を発揮できる組織づくり)」が進んでいて、田上さんがいる神戸の日本本社には約20カ国の社員が働いています。社員の半数は女性で、管理職も女性が約3割を占めています。ただ田上さんが入社したころは、今のような「個々人の多様性を生かす」というより、まだ女性活躍という視点の取り組みに注力し始めた頃。この25年ほどで個々人の柔軟な働き方が尊重され、男女関係なく活躍する会社に大きく変わったと実感し、「経営陣の本気度で会社は変われる」と強調しました。

グローバルで働く魅力~多様な価値観に触れ、視野が広がる

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連日の猛暑にもかかわらず約80人が来場した(会場は日本経済新聞社大阪本社)

グローバルに働くことの魅力について、3人は同じことを指摘しました。「海外の多様な価値観の人たちと働くことで、新しい発見や気付きを得ることが多い」(浦さん)という点です。田上さんは「仕事だけでなく、人生そのものの視野が広がったと感じる」と話しました。

それだけにグローバル企業で働くために大切なのが「コミュニケーション能力」です。これも3人共通の意見でした。それは単なる語学力ではなく、常識や文化の異なる人の意見や考えをしっかりと聞いて受け入れ、「伝えることをきちんと伝える」(浦さん)という意思疎通のスキルです。

そのうえで活躍していくために必要なのが「自らが動いて、目標をやり遂げるという強い意思、プロフェッショナルな心」と浦さんは強調しました。田上さんはP&Gでグローバルに活躍している社員には男女を問わず共通点があると指摘しました。「リーダーシップ、仕事に対するオーナーシップ、多方面からフィードバックをもらって成長しようという意欲の3つが強い」という特徴です。それだけにグローバルなキャリアは決して甘い道ではなく、覚悟も必要と話しました。

セミナーの後は交流会が開かれました。参加者が登壇者に個別に質問をしていたほか、参加者同士が情報交換をする姿も見られました。

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交流会はグローバルな仕事に興味にある女性同士の情報交換の場となった

滋賀県から参加した40代の会社員は「大学時代に米国で過ごした経験があり、グローバルな仕事をやってみたい。多様性のなかで働く魅力を聞けてよかった」とモチベーションが上がった様子でした。大阪府の40代の会社員は「自分が転職したばかり。ほかの方の転職の動機などを聞きたかった」と、この日のセミナーに満足していました。

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