イベントリポート

「女性リーダーを成功に導く3つの視点」 大和証券主催セミナー

女性の活躍を後押しする動きが広がる中、日本でも経営者や役員、管理職などに就く女性が少しずつではありますが増えています。時代がこうしたリーダー層の女性に求めるものとは何でしょうか。大和証券が3月4日、東京都内で開いたシンポジウム「女性リーダーを成功に導く3つの視点~グローバル、メンタル、働き方改革」(企画協力:日経ウーマノミクス・プロジェクト)の中にヒントを探してみました。

グローバルリーダーの理想タイプは「羊飼い型」

この日は土曜日の午後にもかかわらず、経営者や管理職の肩書きをもつ女性エグゼクティブ100人超が集いました。会場となった大和証券本社17階の大和スカイホールからはJR東京駅の駅舎が眼下に見下ろせ、好立地もあってか広島や仙台から駆けつけた人もいました。透き通るガラスを通して春の日差しが降り注ぐ中、ウエルカムドリンクや焼き菓子が用意された、ゆとりある円卓テーブルでは、開始前から自然と名刺交換に華が咲きました。あたかも花瓶に生けられた生花のつぼみが一瞬にして開花したようなエネルギーが漂います。

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ゴールドマン・サックスなど米国を中心に豊富な海外経験をもつ村上由美子さん。子供3人の母親でもある

キーノートスピーチでは経済協力開発機構(OECD)東京センターの村上由美子所長が「グローバル時代のリーダー像とは」をテーマに30分講演しました。初めに、OECD加盟35カ国の労働生産性が低下しているデータをひもときながら、日本がこれから勝ち組になるための条件などをテンポ良くポイント解説していきます。本題であるグローバルリーダーに求められる資質については、象徴的な2つの絵画を示しました。ウジェーヌ・ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」と、ジャン・フランソワ・ミレーの「羊飼いの少女」です。

リーダーシップといえば右手を掲げて「俺について来い」といったイメージを浮かべやすいわけですが「実は様々な種類の羊たちにやらせる提案力を備えた羊飼い的指導者こそグローバル時代の指導者像ではないか」と村上さんは言います。さらにお互いの違いを認め、先入観を最小限にして人と接するといった能力は「男性よりも女性の方が優れているのではないか」とも付け加えました。参加者のテーブルでは時折、ノートやパソコンを前に熱心にメモをとる姿もありました。

「ウソをつかない信頼関係」が働き方改革の要

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盛りだくさんの内容で、あっという間に60分が経過したパネルディスカッション

続くパネルディスカッションにはサイボウズの青野慶久社長とアドッド・コミュニケーションの代表取締役で日本アンガーマネジメント協会理事でもある戸田久実さんが登壇し、村上さんがコーディネーター役となってグローバル、メンタル、働き方改革の3つの視点から、女性リーダーを成功に導くための議論を交わしました。

青野さんは会社設立20年を迎えたサイボウズの働き方改革の中で、試行錯誤を重ねながら社員の離職率を引き下げていった取り組みを紹介しました。100人いれば100通りの働き方がある中で、多様な働き方を推し進めるには「ツールをそろえ制度(風土)を変える必要がある」と言います。

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「黒一点」となった青野慶久さん。働き方改革の推進について経営者の視点から語った

例えば在宅勤務をするならセキュリティーを備えたパソコンなどのバーチャルオフィスが必須となります。これがツールです。次に風土とは第一に公明正大であること。例えば「明日、在宅勤務します」といわれたとき「ほんとか」と疑いを抱くようではまずい。疑念を払拭するには監視システムを導入するなどコストが際限なくかかってしまうからです。そのためには「ウソをつかない信頼関係をつくる」ことが重要になります。

もうひとつが自立と議論です。働き方が広がると当然、選択肢が増えますが「明日何時に来て何をする」といった、自分で選択して自分で責任をとる風土を育成していくことが、経験上大事だとも強調しました。一方で、働き方改革をやるのは経済合理性にかなっているからであって「もうけている会社はやっており、逆にやらないとリスクになる」と言い切りました。テンポよく繰り出す青野さんの軽妙なトークに、聴衆からは笑いとうなずきが同時に沸き起こっていました。

メンタルを磨く3つの力

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「アンガーマネジメント」の専門家である戸田久実さんの指摘に会場ではうなずく人が多かった

「怒りは二次感情」と説明する戸田さんは、怒りの理由や怒りの仕組みを因数分解しながら、怒りの感情の根底にある一次感情を探っていくと、自分の思い通りにならないことに突き当たることが多いといいます。「感情的になることと、感情を言葉にすることは違う」とも説きました。感情の伝え方の工夫や自分の抱えている問題が自分の力でコントロールできるのかできないのかを整理する力をつけることも大切です。

戸田さんは最後にメンタルを磨くためのアドバイスとして「自分の感情に責任を持って自分を信じる力と、不完全なところがあっても人間の価値が下げるわけではないので自分の感情に振り回されない力、そして違う価値観を受け入れる力」の3つの力をあげました。3人の登壇者は3児の父として育児休業を取得した青野さんをはじめ、みなさんが子育て経験者でもあります。ワーク(仕事)もライフ(家庭生活)も自然体で全力投球しながらステップアップしてきた登壇者の本音トークに、参加者は大いに啓発されたようでした。

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参加者がテーブルを移動しての活発な交流会ではカナッペやスイーツが彩りを添えた

シンポジウム後の交流会では「人事評価はどうしているのですか」と、登壇者に直接質問したり、「それ、ありますよねえ」など参加者同士で意気投合したりする光景も見られました。男性執事が給仕する色とりどりのスイーツやカナッペ、サンドイッチもパーティーをさりげなく盛り立てていました。主催者を代表して挨拶に立った大和証券営業企画部の中塚希恵さんは、この日の講演で使ったスライドに装飾されていたカモミールの花言葉「逆境で生まれる力」にちなんで参加者にエールを送り、会を締めくくりました。

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