イベントリポート

「きんゆう女子。会」 お金のワカラナイこと一緒に話しませんか

12月3日に東京ミッドタウン(東京・港)で開催された「ウーマンエキスポ東京 2016 Winter」で、普段はなかなか聞けない素朴な「お金についての悩みや疑問」をテーマにしたトークセッションが開かれました。ファイナンシャルプランナー(FP)の和泉昭子さんや、働く女性が金融の情報を共有する場として生まれた「きんゆう女子。」のメンバーが、約150人の参加者とともに「お金のワカラナイこと」について話し合い、盛り上がりました。

勉強を重ねるにつれて知識が深まる

「きんゆう女子。」は2016年3月、働く女性が金融のことを正しく知ることで、人生をより豊かにしていく情報共有の場として誕生しました。数人で発足して今は120人以上のメンバーが登録するコミュニティーになりました。女子会以外にも金融機関の取材や、それをリポートする活動に取り組んでいます。代表の鈴木万梨子さんは「旅行業から金融業会に転職して、自分の知識のなさに衝撃を受けて勉強を始めたものの、難しすぎて分からなかった」といいます。「そしてお金に無頓着で損したり痛い目にあったりした私でも、金融をもっと知ったら、いろいろな可能性があるのではないか」と感じたそうです。

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トークセッションに参加したきんゆう女子。のメンバー

この日の先生は生活経済ジャーナリストでFPの和泉さん。大学卒業後、出版社・放送局を経て、フリーのキャスターに転身しました。現在はメディア出演や講演活動、個人相談などを通じて、マネー、キャリア、コミュニケーションなどに関する情報を発信しています。

まず、会場の参加者を対象に、お金の意識や普段の行動、知識についての「ワカラナイ度」を診断しました。「自分のおサイフのお金をいくらかわかっている」「毎月、お金を『使う』以外のことにあてている」「たくさんのお金を使うことは幸せなことだ」「自分の3年後の年収のイメージがある」「iDeCoという新しいお金の制度を知っている」という5つの質問に対し、YESの方が挙手しました。同じような質問に対し、最初はYESが0~1だった「きんゆう女子。」のメンバーでも、勉強を重ねるにつれて知識が深まるそうです。普段の会話ではあまり出てこないお金の話題ですが、鈴木さんによると、実は多くの女子が気になるテーマです。なんだか携帯代金が高くなったような気がするけど分からないし面倒だ、お給料明細がよく理解できない、ニュースで聞いてキーワードは知っているが投資など金融は自分には関係ないと思っている、などの具体的な悩みがどんどん出てくるそうです。

「貯蓄は若いうちの方がためやすい」

聞きたくても、分からなくても、なかなか聞けないお金の話。先延ばしにしがちなお金の計画。自分には無関係と思っている金融の話......。こんなテーマについて、和泉さんときんゆう女子がやさしく、ゆるく、分かりやすく話すのがトークセッションの内容です。最初のセッションはお金の流れを知ることです。8月に入籍したばかりというきんゆう女子のケイトさんは、「結婚後はサイフの収支が見えにくくなった」と話しました。「ようやく家計簿が黒字になったので、今後は貯蓄しながら投資も検討したい」と考えています。スタイリストのしおりさんは、勤めていたベンチャー企業のチームが解散してしまいました。突然、フリーランスになり、「貯蓄を崩しながら生活していたので、安定した道を探したい」そうです。「大手企業で働いていたが、やりたいことを優先したい」と決断して転職したゆりこさんは「年収が下がったので、副業や投資という別の形でお金を増やす」ことを考えて、女子会に参加しました。

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きんゆう女子。代表の鈴木万梨子さん。「金融をもっと楽しく勉強したい」という

こうした悩みに対し、和泉さんは「転職の際にお金がなくなるのは一時的なこと。実際にいくらくらい貯蓄が必要なのかは、生活水準やどんな生き方をしたいかによって異なる」と話しました。そのうえで、和泉さんが示したのが保有金融資産額のグラフです。金融広報中央委員会によると、30代世帯では平均値が494万円、中央値が213万円、40代世帯では平均値が594万円、中央値が200万円でした。中央値をみると、子どもの教育費や住宅ローンなどの影響で、40代の方が下がっていることが分かります。さらに50代は給与水準が頭打ちになるので、もっと厳しくなるといい、「若いうちの方がためやすい」とアドバイスしました。多くの女性に関心の高い年金についても、「もらえる年金の水準は下がっていくが、制度自体がなくなるわけではないので、過度に悲観する必要はない」と教えてくれました。

「自分にとって必要」「世間で流行」、きちんと区別を

次のトークセッションは、人生の岐路に立って初めて気づくお金のあれこれ、です。マンション投資を検討している、ちひろさんは「独立するなら、大手企業に勤務して信用力があるうちにお金を借りて不動産を買ったほうがいい」といわれたそうです。経済に関する仕事に従事している、まのさんもマンション購入に関心がありますが、「ローンを組むことができるのか、信用力は大丈夫か」と悩んでいました。3人の子どもを抱えるゆかさんは「将来的に学費を支払うことができるかどうかが心配。働くだけではなく、不動産購入など他の手段も検討したい」そうです。

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FPの和泉昭子さんは「意識を変えれば、それに合わせて情報が入ってくるようになる」とアドバイス

お金の世界で信用とは、きちんと利息などを返済することです。通常、住宅のような高額な物件は、すべて代金がたまってから購入しようとしても間に合わないので、金融機関からお金を借ります。そのときに銀行は、お金を借りる人の信用度合いを審査するのです。大手企業だと、きちんと給与を支払いますよ、という信用を与えています。一方、独立するとさまざまな面で自由にはなりますが、銀行は「お金を返済できないかもしれない」と考える可能性があります。これが信用の問題です。和泉さんは「ライフプラン上の必要性から住宅を購入することと、その住宅が投資対象としてお買い得なのか、ということを両面から考える必要がある」としたうえで、「自分にとって必要なことと、世間で流行していることを、きちんと区別して判断してほしい」とのアドバイスを与えてくれました。

和泉さんからワカラナイ女子への教えは3つです。(1)自分に関わるお金の制度が「あるか・ないか」が分かればいいのです。毎日、お金のことばかり心配していても意味がありません。(2)検索キーワードさえ分かっていれば、ネットでさまざまな情報を手に入れることができます。(3)意識を変えると、それに合わせた情報が入ってくるようになります。3年後の年収が1000万円だと思っていれば、「1000万円の情報」にアンテナが反応するのです。

最後は、iDeCo(いでこ)の説明がありました。これは「individual-type Defined Contribution pension plan」の略で、個人型確定拠出年金の愛称です。加入者自らが掛け金を支払い、運用方法を選択して行う私的年金です。2017年以降は60歳未満のほぼすべての人が加入可能になります。「公的年金だけでは老後は厳しい。自分でがんばる人を国が応援するという意味で創られた制度。これが来年の個人マネーのキーワードになるでしょう」。和泉さんは、こんな発言で締めくくりました。今回のセッションでは参加者の真剣なまなざしが目立ち、きんゆう女子の新たなつながりが生まれたように見えました。もっと勉強したい、オープンにお金のことを話したいと思った方は、兜町の女子会に参加してみてはいかがでしょうか。

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