日経オヤヂカラセミナー

その3 父親座談会 オッツカちゃん イラスト 鳥 マイク

中学受験、お父さんたちも頑張っています!

仕事で忙しい日々を送るお父さんたち。中学受験を控えた子どもへの日々のサポートに奮闘するお母さんのパートナーとして、お父さんたちはどのようなカタチでご家族を支えているのか。
受験に挑もうとしている子どもへの思いはもちろん、小学生の子どもを持つ母親ライターとしては、コミュニケーションの時間がなかなか取れない平日の様子や休日の過ごし方も気になるところ。
今回は【その1】で紹介したシンポジウム参加者に集まってもらって昨年11月に行われた座談会の第2弾、父親編をリポートします。母親との役割の違い、社会で戦う男性ならではの視点はとても興味深いものでした。

参加者のみなさん

  • ハヤトさん 47歳 会社員 男子・小学5年生 ハヤトさん 47歳 会社員 男子・小学5年生
  • 文武両道さん 46歳 公務員 男子・小学5年生 文武両道さん 46歳 公務員 男子・小学5年生
  • みーパパさん 43歳 会社員 女子・小学5年生 みーパパさん 43歳 会社員 女子・小学5年生
  • Kuroさん 46歳 会社員 女子・小学5年生 Kuroさん 46歳 会社員 女子・小学5年生
  • ジョーさん 46歳 会社員 男子・小学6年生 ジョーさん 46歳 会社員 男子・小学6年生

※座談会文中は敬称を略させていただきます。

声がけ、ライバル、目標設定。
子どものスイッチはどこにある?

みーパパ

みーパパ

「うちの子、全然スイッチが入らないんです。塾の宿題もしないのでつい口うるさくなってしまうんですが、『余計にやる気がなくなる』と言われてしまって。みなさんはどうしていますか??」

ハヤト

ハヤト

「『やらないとお母さんに怒られるよ』と声はかけますが、うちも全然ですね。困っています。」

ジョー

ジョー

「私もどうやったらスイッチが入るのかと心配で、塾の先生に相談したことがありましたね。6年生の9月になってやっと少しずつ変わり始めて、今は必死になってやっています。」

Kuro

Kuro

「うちはまだ受験というものがわかっていないんじゃないかな。塾は友だちが行っているから、宿題もやらないと怒られるから、と『やらされてる』感じですね。」

文武両道

文武両道

「うちは野球をやっているんですが、近くの公立中学は『敵のチームの奴らがいっぱいいるから行きたくない』と。だったら違う学区に引っ越すか、受験という戦いに挑むか二つに一つだ、という話になって。「じゃあ戦う!」と言うので、5年生から塾に行き始めたんです。塾に行くと学校のテストで100点取れるだろ?だからとりあえず学校では100点取ろうぜ、というところから始めましたね。同じクラスの子が偶然同じ塾に入ってきたのも刺激になった。一緒に戦う喜びがあるようで、その子に負けたくなくて頑張っていますね。」

ハヤト

ハヤト

「ライバルの存在は大事だと私も自分の経験上思うんです。でも、うちの子は塾にあとから入ってきた友だちに対して「あいつは最初から出来るから勝てない」と思ってしまうタイプで…。負けたくないという気持ちがないのが悩みですね。」

ジョー

ジョー

「友だちの影響は大きい。テストの点が友だちの方が上だと『まずい!』と思うようになって、だんだんスイッチが入ってきましたから。ただ、そうなるまではかなり厳しく言っていましたね。テストの点が悪いと、立たせて『なぜこんな点数なんだ、どう思ってるんだ』と説教していました。部下を叱るような感じですね(笑)。」

Kuro

Kuro

「うちは女の子なので、あんまりうるさく言うと無視されたり、『しようがないじゃん』と言われたりするので難しいですね。自主性を促す方向にもっていきたいんですが。」

みーパパ

みーパパ

「うちも娘だからか、強く言い過ぎるとダメですね。でも言わないとやらない。言ってもたいしてやらない。子どものスイッチを入れるヒントがほしいというのが、11月のシンポジウムに参加した理由です。僕はつい感情的になってしまうので、アンガーマネジメントの話は反省の材料になりましたね。すぐ怒らずに、褒めるところを見つけて“ソフトにやさしく”を心がけるようにしています。難しいんですけどね。一緒に学校をまわって、どこに行きたいかっていう話もしましたね。」

ハヤト

ハヤト

「なんとなく塾に行っても、どこを目指すのかという具体的な目標がないと頑張り方のイメージがわかないのかもしれない。そう思って来年の受験に向けていくつか一緒に見学して、行きたい学校を決めたんです。入りたいなら頑張らなきゃいけないよね、という話をして、そこに向かってやりだしたところ。変わっていくといいんですけどね。」

文武両道

文武両道

「ターゲットを決めるというのは大事ですよね。あいつに勝ちたい、あの学校に行きたい、その気持ちがパワーになるんじゃないかな。」

夫婦の分担は5割以上。
勉強と社会とのつながりを教えるのも父の仕事です。

ハヤト

ハヤト

「週末に勉強を見るのは僕の役目ですね。宿題の多い塾なのでかなりの量があるし、平日にわからなかったところをまとめてやります。夫婦の分担でいうと、5:5かな。」

みーパパ

みーパパ

「平日は仕事があるから難しいですよね。土日は私がサポートを、と思っているんですが、勉強を見てあげようか?と言うと『嫌だ!』と言われちゃう。だから時間管理する役です。勉強も、テレビやパソコンをやる時間も、全部タイマーで管理しています。本当は勉強を見たいんですけどね(笑)。でも分担は6割くらいじゃないかな。」

文武両道

文武両道

「うちは父子家庭なので、全部、僕なんです。息子は土日祝祭日を野球に捧げているんですが、かなり本気のチーム。全力でやらないとレギュラーが取れないし、自分がしっかりしないと下がついてこない。へろへろになるまで練習するので、寝ないとつらいのは本人が一番わかっている。9時くらいに寝て、起きるのは6時。平日も週末も変わらないんです。寝る時間がまずあるので、そこから食事、風呂、塾の時間を引くと余裕なんてほとんどない。だから学校から帰ったら宿題やらなきゃ、と自分でわかっているみたい。週末も、グラウンドに行くためには宿題も翌週の学校の準備も全部できていないと行けない。やるべきことができているかの点検と確認の繰り返しですね。」

Kuro

Kuro

「生活面のことも色々と言っているのですね?うちは勉強も見なくていいと言われて、ほとんどが妻の役割になってしまっているんですが…。」

文武両道

文武両道

「むしろ、そっちがメインかもしれない。基本は整理整頓や準備のこと。『これはちゃんとたたまないと明日すぐ着られないよね』『これやらないと風呂入れないよね。でも先に風呂ボタンは押しとこうぜ』とかね。寝る前に枕もとで『今日どうだった?』なんて話をすることもありますね。僕はビールを飲みながらの場合もあるんですけど(笑)。コミュニケーションは大事にしています。」

ジョー

ジョー

「私も早く帰った時は、一緒に食事しながら『今日の学校どうだった?』『塾どうだった?』とコミュニケーションを取りますね。良かったら褒めて、悪かったら叱って。まだまだ、私に叱られたくない、褒められたい、という可愛いところがあるので、そこを刺激しますね。5年生までサッカーをやっていたので、家でのリラックスタイムにボールで遊ぶこともありますよ。」

ハヤト

ハヤト

「うちは週末にテニスを習っているので連れて行ったり、時々、一緒にやったりしますね。リラックスも大事ですから。週末は睡眠と勉強、遊びに行く時間のバランスを見ながら僕が時間管理をしています。このあいだのシンポジウムで睡眠をたくさんとった方がいいという話を聞いて、かなり意識するようになりました。」

Kuro

Kuro

「あの話を聞いて、改めないといけないなと思いましたね。考えてみたら8時間に足りていなかった。子どもが遅くまで起きているのは、実は親の習慣とつながっているんですよね。子どもを変えるには親が変わらないといけないな、と。それもサポートですよね。」

文武両道

文武両道

「うちは平日と土日とまったく違うことをやっているわけですが、実はつながっている部分もある。学校の月一回のテストは野球でいう練習試合だし、模試は公式戦と同じ。練習試合で自信がついてくるから公式戦で頑張れるわけで、ダメだったらまたひたすら練習しないといけない。練習は普段の勉強とイコール。そうやってグラウンドでやっていることと勉強でやっていることを関連づけて話したりしますね。」

Kuro

Kuro

「その方が子どももわかりやすいような気がします。私は勉強は見てあげていませんが、世の中の出来事と勉強をつなげてあげることは意識している。『今日のニュースに出てきたあの人は、この中のどこにいるの?』と地図で一緒に探したりしていますね。今やっている勉強は今のこの社会につながっているんだよ、と。そうやって興味を持たせてあげることが父親の役割なのかな。」

妻にもっと「ありがとう」を。
でも僕たちにも「ありがとう」を伝えてほしい。

ハヤト

ハヤト

「母親は毎日の食事が、コミュニケーションの中心ですよね。僕は食事は作れないので、そこは任せています。息子は炭水化物ばかり取りたがるので、鉄分やたんぱく質など、身体を作るものはちゃんと食べてほしい。菓子パンは良くないという話を聞いて、朝はごはんに変えてもらいました。」

文武両道

文武両道

「『減ったエネルギーのぶんガッチリ食べろよ』とは言いますね。パンだとガス欠になるというのがわかってきたらしく、ごはんを食べています。しらす干しを上からかけたりしてね。」

ジョー

ジョー

たんぱく質はかなり意識しますね。肉や魚が足りないと妻にうるさく言うので嫌がられますが、結局、私の言うとおりにしてくれるので感謝しています。照れくさくて言えませんけど(笑)。」

みーパパ

みーパパ

「受験だけでなく成長という意味でも食事は大切だから、なんでも食べて欲しい。うちは私が土日の食事係なので、レシピをいろいろ調べながら頑張っています。」

ハヤト

ハヤト

「食事は作れないけど他はやりますね。洗濯が後回しになっているなと思ったら僕がやるし、掃除や片付けもやっていますね。やって当然のような感じになっているから、たまには『ありがとう』を言ってくれると嬉しいんですけど(笑)。」

ジョー

ジョー

「うちも庭の掃除や風呂掃除、掃除機がけまでいつの間にか私の役割。『やって』と言うと喧嘩になるので、最近は黙ってやっています(笑)。私たちがたまには『ありがとう』がほしいな、と思うように、妻の方もそうなんでしょうね。恥ずかしがらずにちゃんと言えたら夫婦円満になるのはわかっているんですけど…。」

みーパパ

みーパパ

「あとは話を聞く、共感する、ということも大事なんですよね。なかなかできないんですが。」

Kuro

Kuro

「シンポジウムのとき、脳科学の先生が、男と女の脳は違うという話をしてましたよね。女性は聞いて欲しい、共感して欲しい。私は性格的に聞く側のタイプなんですが、聞いて終わりになっていたので、その後ちゃんと言葉にしないといけないな、と思いましたね。」

ハヤト

ハヤト

「もう少し日頃からコミュニケーションを取った方がいいのかもしれない。今回のシンポジウムも一緒に聞きに行っても良かったかな。」

Kuro

Kuro

「受験以外でも夫婦共通のテーマだったら一緒に行きたいですね。今後の夫婦のあり方とか(笑)。ずっと子どもありきで来たけれど、子どもが独立してしまったら二人になるわけだから。」

文武両道

文武両道

「気になるのは、子どもたちがこれから生きて行く世界のこと。この先AIが浸透してくれば、なくなる仕事が出てくるわけじゃないですか。今あいつらがなりたいと思っている職業は将来ないかもしれない。この先30年を考えると一番必要な仕事ってなんだろう、どんな資格があるといいんだろう、というのは考えますね。」

ジョー

ジョー

「それは本当に気になりますよね。そういうテーマだったら、夫婦での参加もいいかもしれませんね。」

中学受験のサポートはお母さんがメインなのかな、と感じた母親座談会の印象がガラリと変わるほど、とてもサポートに熱心な素敵なお父さんたち。とはいえ、その熱い思いや行動も、言葉が足りないせいでパートナーである奥さんに伝わっていない部分があるのかもしれない、そんな印象を持ちました。女性はつい近視眼的になりがちですが、男性ならではの高い視点も、これから社会に出て行く子どもたちにとって大切だと思います。お互いにコミュニケーションを密にしながら、夫婦が大きな両輪となって合格への道を一緒に進んでいければベストだということなのでしょうね。

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