過去開催イベントのレポート

アートの現場から学ぶ仕事と自己表現

玉登ゆかりさんが大阪本社で講演

 3月11日(金)、日経ウーマノミクス・プロジェクト実行委員会主催のセミナー「アートの現場から学ぶ仕事と自己表現」が日本経済新聞社大阪本社で開かれました。シンクロナイズドスイミング日本代表の水着デザインや、京阪電気鉄道・中之島線の各駅で展開するアートイベント「キテ・ミテ中之島」のプロデュースなどを手がけるアーティストで、ドットアートコスモ代表の玉登(たまと)ゆかりさんが登壇。アートを通じて自己表現、そして幅広い社会貢献活動をしてきたご自身の半生を振り返りました。

 「人とうまく話せない劣等感を、絵を描くことではね返してきた」という玉登さんは、30歳のごろに一時目が見えなくなる病気を患うなどの困難を乗り越え、「色による自己表現」をテーマとして活動してこられました。玉登さんは「アーティストとしては、せいいっぱい自分を表現しますが、デザイナーとしては逆に自分を出さないようにしています」。2つの立場をはっきりと使い分けていらっしゃるようです。

 プロのデザイナーとして初めて手がけたパリ・プレタポルテのデザインでは、「頑張って自己表現しましたが、お客様がプレタポルテに求めているのは『普段の自分でいられる服』、『自分を美しく見せてくれる服』であって、私が“いっぱいいっぱい”でデザインした服ではありませんでした。シンクロナイズドスイミングの水着デザインも同じで、デザインに『私』が入っていてはいけないんです。デザインには多くの『隙間』が必要で、その隙間によって、(人と水着、人と人との)キャッチボールができます」

 玉登さんが大阪・船場で主催しているギャラリーは普通と違って、夏も冬もすべてのドアや窓が開けっ放し。誰でも気軽に入ってもらえるようにしているそうです。「日本人はあまり言葉や体を使って話さないで、『空気』で話すところがあります。これは豊かな表現をする世界に向けて、何かを発信するためにはマイナスです」。多くの人に表現力を高めてもらうために、「『街と地域と人をつなぐ展覧会』など、ハートで感じることを点から線へ、線から面へと広げていく活動をしています。人と人との間にアート作品が入ることで、知らない人同士がコミュニケーションできる。それがアートの魅力です」。また、子どもたちが主役のアートイベント「エガオ×こども×中之島」の様子などを紹介し、「子どもの表現力が豊かに育つことで、街も育っていきます。子どもたちの前では、『私が何者か』なんて必要ありません。『私、玉ちゃんです。今日は楽しみましょう』でOKなんです」

 セミナーの最後に、参加者全員が「のし袋」とクレヨンを使って、「カラフルな魚」をデザインするというワークが行われました。参加者たちがつくった作品はすべて、大阪・大江橋に展示されるそうです。アートを眺めるだけでなく、日常生活の中で実践して、自己表現や社会とのコミュニケーションにつなげる楽しさを熱く伝えた1時間半でした。

ドットアートコスモ代表の玉登ゆかりさん
セミナーの最後に、参加者全員がアート作品の制作に挑戦