STORY 大和証券グループ vol.5

自分らしい足取りで挑む 故郷の支店から世界の金融センターへ

大和証券キャピタル・マーケッツ ヨーロッパリミテッド 本店
落合 匠子さん

群馬県高崎市の支店から、英ロンドンにある大和証券グループの欧州拠点へ――。大和証券キャピタル・マーケッツ ヨーロッパリミテッドの落合匠子さん(28)は、海外で活躍するという目標を着実にかなえつつある。公募で選抜された若手社員が海外業務の経験を積む「グローバル・トレーニー制度」を利用。狭き門を突破した強い向上心で、日々試行錯誤しながら自分らしくステップアップしている。

金融街シティーが仕事場

外国為替取引高で世界の約4割を占め、約80カ国から1400社もの金融サービス業が集まる英国。首都ロンドンには約250の外国銀行が立地し、外国法律事務所など関連サービスもひしめく世界の金融センターだ。赴任してまもなく3年目を迎える落合さんが通うオフィスはその中心地、金融街シティーにある。

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落合匠子さんの朝はマーケットの動きをすみずみまでチェックすることから始まる

落合さんの仕事は日本株のセールス。現地の機関投資家に、日本の上場企業の株式を売り込む。ロンドンより先に閉まる東京市場が一日どのように動いたか、毎朝サマリーにして担当する顧客にメール。顧客の保有銘柄で値動きの激しかったものについて社内のアナリストと議論した分析や、新規株式公開(IPO)の情報なども提供する。新たに取引を開始したい機関投資家にも電話やメールでアプローチ。株式のセールスだけでなく、企業や業界分析などのリサーチサービスを利用してもらうよう働きかけていくのも大事な仕事だ。

専門用語が飛び交う「金融英語」を駆使し、国際金融都市でバリバリと活躍する。就職活動のころから描いてきた憧れの姿を現実のものとしつつある落合さんは、実は帰国子女というわけでも、海外在住の経験があるわけでもない。ロンドンに赴任する前は生まれ故郷でもある群馬県高崎市の支店で、地元企業の経営者など個人投資家向けの営業の仕事に就いていた。海外に踏み出すステップとなったのは、同社のグローバル・トレーニー制度。海外をめざす若手社員が応募できる。選抜を経て国外の主要拠点で海外業務のスキルをOJTで身に付けることができ、例年かなりの応募があるという。

「厳しい環境」に自分を追い込む

「自分を厳しい状況に置いてトレーニングしたい」。TOEICの点数や志望理由を書いた書類を提出し、進んだ役員面談の場でそう訴えた。入社以来、高崎支店で営業の経験を重ね、次の成長のステージに進みたいとの思いがふくらんでいた。グローバルに働きたいという入社前からの目標に加え、日本の投資家に対するのとは違う視点や知識を持ち、言葉の壁もある海外の機関投資家に営業するという厳しい環境に敢えてチャレンジしたい――。熱心なアピールが通じ、選考を突破。ロンドンで「グローバル・トレーニー」となることが決まった。

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落合さんは「グローバル・トレーニー制度」を利用して海外でのキャリアをスタートした

応募にあたって支店長に相談したときには、「戦力が抜けてしまう」などのネガティブな反応はまったくなかった。もともと支店でも外部講師を招いたさまざまなセミナーや研修が開かれ、積極的に参加するよう推奨される社風だ。それまで業務で英語を使う場面はほとんどなかったが、選考後は会社負担で3カ月間みっちりと社外の英会話学校に通学。毎週土曜日は一日がかりでビジネス英会話を叩き込んだ。

満を持して送り出されたロンドンでの日々は、すぐに順調とはいかなかった。「いきなり違うところに来たな」というのが率直な感想。本場の英語に圧倒され、「このままではまずい」。聞き取れないときは「今のはどういう質問?」などとうまく聞き返してその場をしのぎつつ、時間を見つけては現地のニュースでリスニングに励み、日本企業が英語で出している投資家向け資料を片っ端から読み込んで語彙や表現も増やした。

言葉以上に苦労したのは、顧客となる機関投資家との距離感だ。相手は多忙で、毎朝のメール送信から一歩踏み込んで話を聞いてもらうチャンスがなかなかつかめない。「何をどうがんばったらいいのか、分からなくなってしまうときもあった」と落合さんは振り返る。

支店営業の経験がヒントに

シティーから少し離れたところに拠点を置く機関投資家。あるとき、日本企業との面談を提案するのに合わせ、面談後に少し話せないか持ちかけたところOKの返事をもらえた。ほんの20~30分ではあったが、ざっくばらんに運用方針などをヒアリング。この日を境に、この顧客から企業への問い合わせや電話会議の設定を引き受けることが増えていった。

「こういうやり方をすればいいのか」。対面で会うことで変わるものがある。その時間をなかなかもらえない顧客も少なくなかったが、根気よくコンタクトして距離を詰めた。新規開拓も同じだ。米ブルームバーグや英フィナンシャル・タイムズの記事に名前が出てくる機関投資家までアンテナを張り、1件1件粘り強く電話をかけた。「高崎支店で個人投資家に営業していたとき、電話などのコンタクトの件数と成功は比例すると実感していた」。支店ではフットワーク軽くどんどん顧客にアプローチして取引の機会をつかみ、100人以上の個人投資家を担当していた。これまで蓄積してきた経験がヒントとなり、ロンドンでの挑戦が少しずつ前へと進み始めた。

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英語の勉強で使ったテキストとノートは、使い込んですり減っている

日本株の動きを20年以上追っている、ある資産運用会社のアナリストは、大和証券のリサーチサービスをよく利用。落合さんとパブやカフェで情報交換することも多かったが、その会社は大和証券に口座がなく株式の取引実績もなかった。だが、落合さんはこまめにコミュニケーションをとるうちに「IPOがあれば参加するかもしれない」という印象を持つようになっていた。

そんななか、ある食品会社のIPOの情報をつかんだ。株式の発行体企業がIPOの前にマーケティングとして投資家を対象に実施するミーティングを設定。終了後のフィードバックでも好感触を確かめた。個人投資家からの需要について見通しを尋ねられたときには、支店での経験を生かして見解を伝えた。

最終的にその機関投資家はIPOに参加し、新規に口座を開設してもらうことができた。これまでの経験をフルに生かしてつかんだ成果に、「ロンドンに来て、いちばんの成功体験」と落合さんは笑顔を見せた。

海外の投資家と日本を橋渡ししたい

落合さんは大学時代に英文学科で学び、「金融業界とは離れたところにいた」。就職活動で大和証券のセミナーに参加したとき、「新規開拓から株式取引の売買が成立する約定まで、すべて自分で手がける醍醐味」にひかれた。苦労が大きい分、やりがいもある。毎日新しく変化するマーケットや国際情勢を追いかけて仕事をするところも「自分の成長につながる」。そんな直感の通りに挑戦のフィールドは世界に広がり、落合さんは着実にキャリアを前へと進めている。

新型コロナウイルス感染症の流行をはじめ、世界は不安定な状況が続く。「日本の会社は海外企業と比べてバランスシートがきれい。投資家がポートフォリオのなかで日本株の比重をいままでよりも高めるケースが増えている」。これまで以上にいち早く、顧客に役立つ情報を発信したい。落合さんはこれからも自分らしいステップでスキルを磨き、海外の投資家と日本を橋渡ししていく。

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昨年来、海を越えてリモートで日本企業の発信の機会が増えているととらえ、コロナ禍でのセールスに工夫をこらす

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