STORY 大和証券グループ vol.4

私の調整力が後押しする 企業の挑戦で社会が動き出す

大和証券 エクイティ・キャピタルマーケット部マーケティング課
王 伊菲さん

タスクを整理し、段取りして、実行する。どんな大事業でも必ず必要となる、調整役の役割。大和証券エクイティ・キャピタルマーケット部の王伊菲さん(28)は、新規株式公開(IPO)など企業の資金調達の提案や執行を手がける部門で、短期間に集中する膨大な数の連絡・調整を速く、ミスなく進めるスキルを磨き上げてきた。いまは自分ならではの分析と洞察も武器に加え、経済社会を動かす企業の挑戦を後押しする仕事に打ち込んでいる。

投資家と数十本のインタビュー

早朝、米ニューヨークの営業担当者と対話ソフトで打ち合わせ。午前中にアジア各国の拠点とオンライン会議をこなし、夕方には、夜が明けた英ロンドンに社内電話。王さんの一日は世界のビジネスアワーを追いかけるように進む。

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王伊菲さんの部署は海外拠点と密にやりとりする

王さんが所属するのは、株式による企業の資金調達を扱うエクイティ・キャピタルマーケット部のなかのマーケティング課。企業に対し、事業を支える資本政策を投資家目線で提案し、実際に株式の販売戦略を企画立案、執行する部署で、2018年に新設された。近年、資金調達において、投資家、特に日本株の売買で大きな割合を占める海外投資家の動向が注目されていることを受け、独立した課として設けられた。

投資家が何を考え、動いているのかは、企業と投資家の面談とその後のヒアリングを通じて調査していく。株式を発行する企業が知りたいポイント、王さんの部署としてつかみたい株式市場の動きなどをまとめ、投資家と向き合う社内の営業担当者に伝える。企業と投資家との面談を組み、終了後、営業担当者が投資家からヒアリングしたフィードバックを集約。投資家がその企業の事業内容、過去の実績、将来の成長性などをどのようにとらえ、IPO時の公開価格はいくらが妥当だと考えたか。投資家の属性などによって回答を分析し、販売戦略を企業に提案する。

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語学力を駆使し、海外投資家の意見のロジックや背景まで読み取って企業に伝える

一つの資金調達の案件で、多いときには40~50本の面談が設定される。規模の大きな案件では別の証券会社と共同で対応することもある。長くても1~2週間の短期間で実施するため、日に5、6本のハイペースで進めていく。

ミスなく、大きなトラブルなく滞りなく

国内外の投資家と時差も考えて調整し、面談の予定をパズルのように組み立て管理する。王さんにとってはお手のものだ。マーケティング課に異動する前に在籍していたのは同じ部のシンジケート課。決定したスキームにのっとって資金調達を執行する業務を担当する部署で、年間数十にもおよぶ案件を取り扱ってきた。一つの資金調達が無事に執行されるまでには数多くの細かい手続きを積み上げていく必要がある。案件の概要や投資家への訴求点を営業担当者に伝えるための資料に、その作成のためのデータの取り寄せ。契約書の確認。投資家需要の取りまとめ。リーフレットや新聞広告などのマーケティングツールの作成も手掛け、共同で案件に対応する証券会社と頻繁に連絡を取り合う。

「全体の半分以上を細かな調整作業に割くといっても過言ではない」と王さん。起こりうる様々な可能性に備えながら、今やるべきことを決め、確実に実行していく。「特にスピードと正確性が求められる手続きなどは、滞りなく進められるよう、社内に対しても社外に対しても丁寧で明快な案内を心掛ける」。この日に、これを、何時までに。これまででもっとも苦労したのは、調達の目標金額が1兆円超の大型案件だ。全国の証券会社と連携するスキームで、それまでに経験したものよりけた違いに多い会社との連絡に駆け回った。

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複雑に絡み合った資金調達の執行プロセスでは、一つの連絡ミスが命取りになる

例えば必要な資料やデータが一つ入手できないと、発行体企業への報告など後に控える予定が次々と狂っていく。綿密に段取りしただけでなく、想定外の事態が起きたときに「どう対応するか、事前にさまざまな場合分けをして入念に確認、準備をして臨んだ」。この案件は無事にクロージング。ミスなく、大きなトラブルなく滞りなく案件が執行できた。「派手な成果には見えないかもしれないが、どんなに大きな案件でも小さなことの積み重ねによって成り立っている。細部まで怠ることなく着実に実行することが執行において最も重要で、自分としても達成できたと思うところ」と王さんは振り返る。

「話を聞いてもらえる雰囲気」

調達金額の大きな案件を扱う王さんの部署は、ベテラン社員が多く在籍する。証券会社によってはフロントの営業担当などで経験を積んでから転じることもある分野だが、大和証券では王さんのような若手も少なくない。

「とにかく話しかけやすい空気がある」。この部署で王さんが存分に役割を果たせるのには、就職活動のときに感じた社内の雰囲気も一役買っている。

大学では経済学部で行動経済学を専攻。周囲にも就職先として金融業界をめざす仲間や、金融機関に進んだ先輩が多かった。自然と金融の仕事に興味をもち、証券会社のインターンシップや会社説明会に参加。ある日、投資銀行業務に携わる証券会社社員と話した。企業の資金調達という、規模も責任も大きく、高い専門知識も求められる仕事。若いうちは挑戦しがいのあるハードな環境で力を付けたい。そう考えていた気持ちと合致した。

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就職活動で社員と話すなかで感じた居心地の良さも入社した決め手の一つ

大和証券を選んだのは、面接などを通じて「話を聞いてもらえる雰囲気を感じたから」。その印象は入社後も変わらなかった。素朴な疑問でも質問しやすく、「こうしたほうがいいんじゃないか」という自分の意見にもまずは耳を傾けてくれる。先輩の胸を借りるようにして、複雑な資金調達案件に対応する力を付けていった。

分析力と語学力をプラス

マーケティング課の仕事は、それまで磨いてきた調整力に加え、資金調達を検討する企業にとって最適な戦略を考え、アイデアを提案する力が問われる。投資家へのヒアリングで集まった回答を読み解く際にヒントにするのは、大学で学んだ行動経済学の考え方だ。通常の経済学が人間は合理的だという前提に立つのと違い、行動経済学では実際の人間は心理状態などに左右されて必ずしも合理的に行動しないと考える。株式市場もさまざまな事象を背景に株価が動くが、そこには必ず何らかの投資家心理が働いている。企業と投資家のあいだに立って、適切な公開価格などを見極めていく作業と頭の使い方が似ているという。

語学力もアドバンテージだ。中国・上海生まれで、日本語・英語・中国語の3カ国語を使いこなす姿からは少し意外だが、幼い頃に日本に来て以来、海外在住経験はないという。「こつこつ学校の勉強で身に付けた」英語力で海外投資家の文章を読みこなし、国外拠点の営業担当とも英語でやり取りする。いつかは海外を舞台に自分のバックグラウンドを生かした仕事に携われたら、と未来の姿を描く。

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学生時代に「かっこいい」と直感した投資銀行業務で仕事に打ち込んでいる

「やっとここまで漕ぎつけましたね」。IPOを無事に終えた会社の集まりで、関係者がつぶやいた一言を聞いた。「いろいろな思いを持って事業を立ち上げ、苦労を乗り越えて成長をめざす。そんな企業を支える仕事には、すごく達成感とやりがいがある」。大きな挑戦を現実に変えるため、きょうも世界と調整に走る。

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