アンケート結果

女性管理職、増えない壁は
  ――アンケートで見えた本音

女性の登用が進まない本当の壁は――。「2020年までに女性管理職30%」の政府目標は未達に終わり、帝国データバンクの調査によると、女性管理職の平均割合は8.9%にとどまります。日経ウーマノミクス・プロジェクトが7~8月に実施したアンケートでは、58%の女性が「管理職を希望していない」と回答。さまざまな思いやエピソードが寄せられました。みなさまの貴重な声をご紹介します。

■「管理職希望しない」58%

 日経ウーマノミクス・プロジェクトは2022年7月19日~8月8日、インターネットで「女性管理職」に関するアンケートを実施し、1193人の女性から回答をいただきました。

「管理職になることを希望していますか?(すでに管理職の方は、希望していましたか?)」という質問に対し、「いいえ」と答えた割合は58%。その理由として最も多かったのが、「育児・家事や介護など、私生活と両立できない」(28%)。続いて「管理職につながる経験や成長機会を提供されてこなかった」(19%)、「管理職以上は男性中心の世界で、閉鎖的で抵抗がある」(18%)、「昇進後、同僚や部下にどう対応すればいいか不安」(15%)と、仕事内容そのものへの懸念もうかがえました。

□「管理職希望」の女性の割合(現管理職を含む)

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8.jpg=はい gura2.jpg=いいえ(「前向きではない」含む)

□管理職希望をしない理由

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 「あなたの勤務先の女性活躍推進策は効果があると思いますか?」という質問では、56%が「あまりない」「全くない」と答えました。日本で女性の登用が進むためには、安心して管理職にチャレンジできる環境づくりをいかにすすめるかがカギを握りそうです。

■希望しない理由は――

「管理職ではない現在でも、育児との両立は難しいことが多く、実家のサポートを受けながら綱渡りで対応している。管理職で責務が重くなったり、部下の面倒を見たりするという状況は想像できない」(41歳、電気・電子機器、一般社員)

「自分自身の会社というより、夫の会社に育児や家事に関する理解が全くないためこれ以上負担が重くなるようなことはできない」(35歳、卸売・小売業・商業、主任/係長クラス)

「女性活躍推進法の影響で社内で女性管理職を増やす流れの中で、実力もなく管理者になったと思われたくない」(47歳、建設業、一般社員)

「産休・育休・時短勤務と経験して、子持ちは戦力外扱いをされてきた。『時短だから』と評価を低くされ、これがマミートラックなのだと思い、自分なりに気の持ちようなども変えてきた。それが、昨今の女性活躍推進の風潮で会社が急に『課長を目指したらどうか』と言ってくるようになって、正直、『はあ?』と思っている」(50歳、情報処理関連業、主任/係長クラス)

「特に成長のための機会や研修もなく、女性で他に管理職になれるグレードの人がいないから、という理由で、試験を受けさせられた」(52歳、その他製造業、課長クラス)

「実際に管理職となってやっていたが、男性の視点での発言や、対応、雰囲気など割り切れない部分が多く、管理職を解いてもらった」(48歳、その他、一般社員)

「春先に管理職就任を断りました。課長と同じ階級ですが、部下はいません。10年前にリーダー経験があり、マネジメント自体には興味があります。しかし、部下に十分に時間を割けないことと、家事育児の両立の観点から、マネジメント就任は辞退しました」(38歳、教育・教育学習支援関係、一般社員)

「男性社員が集まる喫煙室や、男性幹部が取り巻きのみを誘って行う飲み会にて、工場の方針や人事の方向が決定することに不信感を持った」(52歳、その他製造業、主任/係長クラス)

■待遇が良ければ引き受ける?

「昇進しても給与はあまり変わらないと聞いた。子育てのためにお金が必要だが、忙しくなっても給与が変わらないのであれば昇進の必要性を感じない。だけど、給料を上げるには、昇進が必要とも聞いている」(44歳、食品・医薬・化粧品、一般社員)

「他の人よりお小遣い程度お給料がいいくらいだけではやる気にはつながらない(肩書がよほど欲しい人くらいしかやらないと思う)ので、かなりお給料アップになれば引き受けるかもしれない」(39歳、医療、一般社員)

「管理職となっても給与が大幅に増えるわけでもないうえ、残業代が付かない。同じ男性管理職との給料差がかなり大きいのも不満。最低でも同じ待遇にして、業務内容相応の報酬は必要だと感じる」(31歳、人材サービス、一般社員)

「現状、管理職手当が月5000円なので、それだけで増える責任と仕事量が釣り合っていない」(42歳、卸売・小売業・商業(商社含む)、契約社員)

「給与面での処遇は個々人の感覚的相違があるので、一概には言えないと思う。私生活との両立を支援する制度や、閉鎖的ではない環境の確立が必要と思う」(28歳、自動車、輸送機器、一般社員)

「同期の男性と同等の給与・待遇。産休育休以前よりも生産効率が高くなったと思う。休業期間もキャリアの一部として評価してほしい」(47歳、人材サービス、一般社員)

「家事代行業者などの費用を出してほしい」(35歳、素材、一般社員)

■管理職希望はこんな人

「なることによって得られる視座や権限、経験がある。また手当がついて給料が上がることが魅力的なので」(41歳、電気・電子機器、課長クラス)

「子育て中の管理職の女性がほとんどいなかったため、道を切り開くためにも自分がなろうと思った」(52歳、教育・教育学習支援関係、課長クラス)

「性別に関係なく仕事をしている意識があったので、当然のように管理職を目指していた」(46歳、素材、課長クラス)

「均等法第一世代で差別に対して我慢して闘ってきた。能力は男性に劣ると思わなかったので負けたくなかった」(58歳、通信サービス、課長クラス)

「自分の上司を見て、管理職の仕事に魅力を感じたから」(46歳、情報処理・SI・ソフトウェア、本部長クラス)

「年齢が高くなっても平社員でいると、転職がしにくくなり、転職できたとしても条件が悪くなるため」(59歳、素材、主任/係長クラス)

「もともとは消極的でしたが、基幹職試験のタイミングで、メンターと会話する中で、基幹職のやりがいやなる意義などを教えてもらい、会社が認めるのであればやってみようと思うようになりました」(47歳、不動産、課長クラス)

「特に管理職になりたかったわけではないが、営業職だったので、定年までプレーヤーとして活躍するには体力的な問題も踏まえ難しいと感じていた。プレーヤーから管理職にまわり、人を育てるほうが長期的にみるといいと思ったから」(32歳、金融・証券・保険、課長クラス)

「仕事のやりがいや達成感を感じられるような指導を上司にしていただいたので、今度は部下にそのような指導をして、やりがいや達成感を感じてほしいと思ったため」(37歳、卸売・小売業・商業(商社含む)、主任/係長クラス)

■わが社の女性活躍推進策、もっとこうなれば

「そもそも男性と女性が担う仕事は別であり、女性活躍を推進するためには、女性が活躍できるポジションを用意する必要があるという考えのうえで進められしまっている」(40歳、食品・医薬・化粧品、一般社員)

「管理職の人数を増やす、これしか言わない。管理職の働き方を抜本的に改革したり、産休育休が昇格の壁になっている現状を打破する施策を打ったりしないと、女性管理職は増えない」(26歳、自動車・輸送機器、一般社員)

「管理職を目指すための社内外のセミナー等は開催されているが、育休産休と昇格の関係性が明示されておらず、蓋を開けてみて昇格が遅れることを知るため、管理職を目指すように言われても違和感がある」(30歳、エネルギー、一般社員)

「会社は女性活躍支援を検討するプロジェクトを長年実施しており、結婚・出産で退職する女性はほぼいなくなったことは成果だとは思う。しかし、復帰後の女性社員は時短勤務から抜け出せない(抜け出さない)状況。女性管理職は課長レベルが5名のみ。しかも私を除く4名は独身で子どももいない。部長以上は0である。効果としては不十分と考える」(48歳、情報処理・SI・ソフトウェア、課長クラス)

「単発で終わってしまい継続的な施策になっていないため。また、実施した施策も、対象者のみに提示されていて、会社としての方針を全社に知らしめることができていない」(50歳、食品・医薬・化粧品、課長クラス)

「管理職の女性を増やすことのみにとらわれている。もともとの女性の配置先に偏りがあり、真に意思決定権をもつような部署への女性職員(管理職、管理職以外ともに)の配置が少ない。女性管理職を本気で育成しようとしているのか疑問」(49歳、公務員、その他)

「女性活躍推進策が育児支援中心で、女性向けのキャリアアップ支援施策などがないので、大きな効果が見込めない」(56歳、卸売・小売業・商業(商社含む)、部長クラス)

■女性管理職が増えるために必要なこと

「女性の勤務先での様々な推進策も重要だが、配偶者(男性)の勤務先が変わらない限り結局は女性が仕事も家事も子育ても、と無理をする(あるいはできない)ことになる。少なくともパートナーと両方の会社、できれば社会全体で、男女問わず誰でも有給が取りやすいとか、1時間単位の有給、人員充足など、今ある制度の中で改善を図ることが重要だと思う」(45歳、教育・教育学習支援関係、一般社員)

「時短勤務を女性ばかり取得することや、PTAで活動をするのがママばかりであること(だけどPTA会長は歴代パパ)、女性総理大臣が生まれないことなどに対して、どこかで仕方ないと思ってしまっている女性自身のマインドを本気でシフトさせていくべきだと思う」(46歳、情報処理・SI・ソフトウェア、課長クラス)

「昇格後の上司とともに協力して責務をこなせばよいということが名実ともに分かれば、もっと早く女性管理職になろうという気持ちになっていたかもしれない。完璧なリーダーを目指さなくてよい環境づくり。やってみて向いていなかった時に、安心してメンバーに戻れるような制度・環境づくりがあるといい」(34歳、人材サービス、一般社員)

「女性管理職が一人でも現れること。また、その方がいかに個人の魅力と発信力があり、周囲の若手社員にとっても身近な存在や将来の目標となれるか、が重要だと考える」(34歳、建設、一般社員)

「トップが本気になり、組織編成や評価制度にまで手を入れること。公式の場で意思決定すること。同質性の高い(居心地の良い)職場に戻ろうとする流れを阻止すること。ペナルティを科すくらいのことをしないと確実にもとに戻る」(48歳、その他、課長クラス)

「表現が難しいが、責任感を強く持ち過ぎないこと。管理職といえども、階級があるので、役員になるまでに色々勉強し、与えられたフィールド内から始め、徐々に垣根を越え、巻き込むような成長マップを描くことが必要だと思う」(59歳、卸売・小売業・商業(商社含む)、部長クラス)

「能力があれば起用すること。希望を聞くは必要ない。普通、男性にも聞かないはず。管理職に相応しい能力があれば、起用し、その方が能力を発揮できるように柔軟な働き方や環境を整え、サポートすること。男性についても同じ」(54歳、情報処理・SI・ソフトウェア、部長クラス)

「男性同士、業界内云々の暗黙ルール、たとえばゴルフ、酒席の付き合いが前提のコミュニケーションを、ご時世柄、強要はしないものの登用のさじ加減には使われている。そういった印象をやる気のある女性社員に持たれてはダメだと思う」(58歳、その他、経営者)

「とにかく子育てなどしんどい時期があっても辞めずに続けられるかどうか、辞めずに続けられれば、子育てが一段落して考えられる人も増えると思う」(40歳、卸売・小売業・商業(商社含む)、一般社員)

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