イベントリポート

キャリアブランクをどう乗り越える? 「わたしの働き方」で熱論

出産や育児、介護、パートナーの転勤などでこれまでどおり働けなくなったら、仕事をやめる? 続ける? ペースダウンする? 日経ウーマノミクス・プロジェクト実行委員会は、働く女性なら誰もが直面する可能性がある「キャリアブランク」をどう乗り越えるかについて、グループワークやパネル討論を通じて考える特別セミナーを2月23日に都内で開催しました。ウーマノミクス会員が20万人の大台を突破したのを記念し、「みんなで創る"ウーマノミクス"」と題して公募した会員参加型イベント企画の第1弾です。ブランクを越えてキャリアをつないでいきたい――。「わたしの働き方」をめぐって熱い意見が交わされました。

半年かけてセミナープログラムを設計

「何か手を挙げたら実現できる、ということを知ってほしいと思います」。午前10時30分。土曜午前にもかかわらず会場いっぱいに集まった参加者を前に、本企画の発案者でウーマノミクス会員の南由紀子さんが笑顔で語りかけ、特別セミナー「キャリアブランクを越える ― 両立時代の「わたしの働き方」―」がスタートしました。

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企画を発案したウーマノミクス会員の南由紀子さん。キャリアブランクに直面した女性が働き続けられる企業を経営する

南さんは、日本を訪れる外国人に対し電話やメールで通訳・翻訳などのサービスを提供する会社、QuickHelpJapanを経営しています。家族の介護で一時離職した経験から、時間や場所を問わず仕事ができる働き方の実現をめざして2017年に起業しました。「キャリアブランク」について座学で話を聞くのではなく、参加者がアクティブに参加して考えられるイベントを作りたい――。そんな南さんの発案を受け、日経ウーマノミクス・プロジェクト実行委員会は昨年夏から打ち合わせやメールのやり取りを重ねてプログラムを練りました。

10年後の「こうありたい姿」をイメージする

どうすればキャリアブランクについての悩みを乗り越え、自分らしい働き方を見つけることができるか。そのヒントをつかむための一つの仕掛けがグループワークです。「出産・育児」「介護」「パートナーの転勤」「通院・治療」というキャリアブランクの原因となる4つのカテゴリーごとに、5~6人のグループになって働き方の課題やアイデアを話し合います。

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キャリアブランクについて参加者がアクティブに考えられるようにグループワークをセミナーの柱に据えた

グループワークのポイントは、自分が「こうありたい姿」をイメージし、その姿に向けての働き方のハードルをあぶりだすこと。未来に向けた前向きな目線で今の働き方を振り返ります。まずワークシートを使って、理想のワーク・ライフ・バランスを円グラフで表現したり、10年後の「こうありたい姿」を書き出したりして、頭を整理していきます。

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参加者はワークシートに10年後の理想の働き方と実現に向けてのハードルを書き出し、ホワイトボードに張り出してメンバーと共有

「10年後に自分や家族が何歳になっているかを考えるとイメージしやすいですよ」。グループワークのファシリテーターを務めるのはキャリアブランクに直面する人と企業とをつなぐサービスを手がけるスタイルシフト社長の池永富美子さん。各グループのテーブルを回りながら、参加者がシートに記入しやすいよう丁寧にアドバイスをしてくれます。

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グループワークのファシリテーター、スタイルシフト社長の池永富美子さんは、じっくり各グループを回ってワークを進めやすいようにアドバイス

会話膨らむグループワーク

「キャー」。最初のグループセッションは自己紹介。じゃんけんで勝った人から時計回りに順々に話していきます。持ち時間は1人2分。「理想の働き方」「それに向けて今ハードルになっていること」を話していると、少し長いかなと思えた2分間があっという間に過ぎてしまいます。卓上ベルで時間を知らせると、悲鳴とも歓声ともつかない声が。グループのメンバー全員の順番を終えたころには、みなさんすっかり打ち解けていました。

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各グループは張り出したメンバーのワークシートを囲んで議論を展開

自己紹介を終えたら、メンバーの話に対して順番にコメントをしていきます。アドバイスでなくても、共感でも、励ましでもOKです。「勇気が出ないというのは、何が不安だから?」。メンバーの一言からどんどん会話が広がっていきます。各グループのホワイトボードに張り出したワークシートにはカラフルな付箋にアイデアやコメントが次々と書き込まれ、みなさん真剣な表情で、ときに笑顔も見せながら活発に意見交換が進みます。

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議論で出てきた意見やアドバイスを付箋に記入し、どんどん貼り付けていった

グループワークの最後は、各グループの代表者が話し合いの内容やいいアイデアを一言ずつ報告します。自分が参加しているカテゴリーと別のグループの話についてもメモを取る参加者が多くいました。

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グループの1人が代表して議論の内容を発表。その場で指名されたにもかかわらずみなさんてきぱきと報告

理想の働き方へ動き出す

第2部はグループワークのまとめとパネル討論です。パネリストは南さんと池永さん。コーディネーターは日本経済新聞・女性面の佐々木玲子編集長が務めます。3人とも、出産・育児や介護、パートナーの転勤によるキャリアブランクの経験者、もしくはまさに直面している最中。南さんは介護が少し落ち着いたタイミングで起業。電話やメールを使う通訳・翻訳サービスで時間や場所に縛られずに働くことができる南さんの会社では、同じくキャリアブランクを抱える女性が活躍しています。

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パネル討論では池永さん、南さん、コーディネーターの日本経済新聞女性面・佐々木玲子編集長が経験談をシェア

池永さんもパートナーの海外勤務で離職。加えて出産・育児でキャリアブランクに直面し、似た境遇の仲間と勉強会などを開くなかで、そうした社会課題を解決する会社を作りたいと考え起業を決めたそうです。今回、このイベントの応募者で少なくなかったのは、転職や起業に関心のある方。南さんや池永さんが経営者としてどんな人材を求めているかについてや、近年、公的な制度のサポートが充実してきて起業のハードルが下がっていることなどを話すと、参加者のみなさんは熱心に聞き入っていました。

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池永さんは「やりたいように生きてみる」と参加者にエールを送った

第3部は交流会です。軽食と飲み物を用意しましたが、みなさん食べるのも飲むのもそこそこに、メンバーと話の続きをするグループもあれば、池永さんや南さんに質問したり、名刺交換をしたり。参加者アンケートでは「近い状況にある人とお話しできて参考になった」「働くことに意欲的な方たちと意見交換できて良かった」などの声が寄せられました。参加型のセミナーを生かし、理想の働き方に向けて次のステップを踏み出すきっかけとなったようです。

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セミナー後の軽食を交えた交流タイムでも、グループでの議論や参加者同士の情報交換に励む姿が印象的だった

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