イベントリポート

睡眠の質、量、リズムを意識しよう
いま始めたい、スッキリ目覚め改革

仕事にプライベートに子育て。忙しい現代女性はつい睡眠時間を削りがちです。ましてや今年の夏は酷暑でした。寝苦しい日々が続き、体調を崩したなんて方が多かったのではないでしょうか。そんな眠りの悩みを抱える女性に向け、日経ウーマノミクス・プロジェクトは7月~8月、名古屋、東京、大阪の3都市で特別セミナー「いま始めたい、スッキリ目覚め改革」(協賛:大塚製薬)を開きました。睡眠の専門家や働き女子の代表であるゲストが、朝スッキリ目覚めるためのポイントなどを紹介。そのダイジェストをお届けします。

【動画】東京で開催されたセミナーの様子をダイジェストでお届けします

休日の朝寝坊がもたらす悪循環

3会場とも基調講演に立ったのは明治薬科大学の駒田陽子先生です。駒田先生は朝スッキリ目覚めて昼間元気に過ごすポイントとして、眠りの質、量、そしてリズムの3つをまず挙げました。

人の睡眠を分けると、急速に目が動く「レム睡眠」、レム睡眠以外の「ノンレム睡眠」があり、ノンレム睡眠は眠りの深さによって4つの段階があります。レム睡眠、ノンレム睡眠は一晩に4~6回繰り返し、「どの状態も体を休め、機能を回復させるために欠かせません」と駒田先生は強調します。質のよい睡眠にするには、すべてバランスよく確保しないといけないわけです。

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明治薬科大学の駒田陽子先生が睡眠のメカニズムをわかりやすく説明

当然、量、いうなれば時間も必要になります。世界的には韓国と並んで睡眠時間が短い日本。「米睡眠財団は2015年に、18歳~64歳までは7~9時間が必要だと指摘しています」と駒田先生は話します。少しずつでも日々の睡眠不足が蓄積されると、仕事の効率も上がらなくなるそうです。「忙しくて寝られないという人がいらっしゃいますが、寝ていないから効率が上がらず、忙しくなっているのかもしれません」と視点の切り替えを促します。

講演で駒田先生が最も強調したのは睡眠のリズムです。休日ぐらいゆっくり寝ていたいと誰しも願うもの。でも、休前日に夜更かししたり、休日朝寝坊したりすると、平日と休日の睡眠時間帯がズレてしまう「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」が起こります。平日に0時から6時まで睡眠をとっている人が休日は0時から9時までの睡眠になるとしたら、睡眠中のちょうど中間の時刻(中央値)は平日3時、休日4時半ですので、1時間半のソーシャル・ジェットラグが生じます。すると、日曜の夜になかなか寝付けなかったり、月曜の朝起きるのがつらかったりと、日常生活に様々な悪影響が出てくると警鐘を鳴らします。

サプリも活用し、よい目覚めを

では、眠りを改善するにはどうすればよいのでしょうか。駒田先生は必要なときに目覚める「覚醒機構」、疲れたら眠るという「恒常性維持機構」、夜になると休む「体内時計機構」という3つのメカニズムをふまえ、「自分の不調は何が原因なのか、認識して対処しましょう」と呼びかけます。

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パネルディスカッションでは働き女子の代表がゲストとして参加(東京会場)

例えば、ストレスなどが原因で覚醒機構が強く働き、なかなか眠れないことがあります。そんなときはクールダウンする時間をもったり、お風呂に入ったりしてリラックスするのがよいそうです。

人間の体内時計は24時間よりも10~20分長い周期なので、リズムがズレやすくなっています。そして、強い光を朝浴びると遅れ気味な体内時計がリセットされ、ズレが解消されます。逆に夜の強い光は遅れを増幅させます。体内時計機構を正常にするためには、まず朝、太陽の光を浴びることです。さらに、「休日も平日と同じような睡眠時間帯を維持して、ソーシャル・ジェットラグを防ぐことを勧めます」。ほかにも、適度に運動してバランスのよい食事を取るといった様々な取り組みを実践することが大事になると訴えました。

最近では、眠りの質が高まり、目覚めがスッキリするアスパラガス由来の成分が注目されています。サプリメントについてはいくつかの研究で、休日に寝だめすることがなくなり、週明けのブルーな気持ちを緩和するという結果が明らかになっているようです。「朝スッキリ目覚め、昼イキイキと過ごし、仕事だけでなくプライベートも充実した生活になれば、眠りも良くなるという好循環を目指しましょう」と結びました。

チェックシートで振り返り

続いてのパネルディスカッションでは、駒田先生に加え、名古屋ではオンラインでのベビーシッターサービスを運営するキッズライン(東京・港)代表取締役の経沢香保子さん、東京会場はサイボウズ執行役員事業支援本部長の中根弓佳さん、大阪では作家・演出家・画家の大宮エリーさんが登壇。コーディネーターはいずれもフリーアナウンサーの大橋未歩さんが務めました。

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キッズラインの経沢香保子さんはベストコンディションでいることを心がける
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何かを捨てる覚悟を持つことが大事とサイボウズの中根弓佳さん

事前に参加者から聞いた睡眠の悩みや日ごろの就寝・起床時間をみると、寝ても疲れがとれない、平日と休日の睡眠時間帯がズレているという方が多いことが分かりました。そこでパネリストの皆さんも参加したのが「朝の目覚め度チェックシート」。「朝すっきり起きられない」など11の質問に当てはまるかどうか、回答しました。当てはまる数が2個までなら「目覚めが良い」、3~5個は「何とか目覚めているが、体内リズムを整えるともう少し良くなる」、6個以上は「目覚めが相当悪く、リズムを整え良い目覚めを目指そう」となります。

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日ごろの自分を振り返ったうえで、スッキリと目覚める10のメソッドを紹介。「休日も平日も起きる時間を変えない」「朝日を浴びて、体内時計をリセットする」など具体的な方法が会場スクリーンに映し出されると、皆さんメモを取っていました。

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経営者として、母親として毎日多忙なキッズラインの経沢さんは「寝ていないと判断が雑になる」と睡眠時間を確保するようにしていると話します。「ストレスへの対処法をはじめ、精神的な回復にもしっかり寝ることが大事だと思います」

加えて、ベストコンディションにどうもっていくのか、考えていると話します。例えば、疲れがたまればマッサージに出かけるそうです。仕事でも育児でも「ここから先がんばったら結構イライラするなというちょっと前でやめます」と経沢さん。「一日一日をベストコンディションで生きていくことを考えています」と強調しました。

働き方改革の先端企業、サイボウズで管理部門の責任者を務める中根さんは「すべてを完璧にこなすのは無理であり、何かを取るなら何かを捨てる覚悟を持つことが大事だと思います」と訴えました。遠足前の子どもが早起きしてしまうように、「日中の時間が楽しいと思えると、よい目覚めにつながると思います」。

だからこそ、「オンの時間をいきいきわくわくできるように自分でコントロールしてください。もし会社の制度が妨げになっているなら、変えてもらうように促すことも必要です」とアドバイスしました。

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悩みを解決するために行動するようにしていると作家の大宮エリーさん
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フリーアナウンサーの大橋未歩さんはストレスを紙に書き出している

マルチな才能を発揮する大宮さんは5時間程度の睡眠で、昼寝をすることもあると言います。睡眠時間が少なくても、深酒をしてしまったときでも、朝の光を浴びるようにはしているとのこと。さらに「自分の悩みはどうすれば解決できるのか考え、行動を起こすようにしています」と教えてくれました。寝具や照明に気を配ったり、サプリメントを試したりしてきた大宮さん。「いろいろ情報を教えてもらったので、取り入れてみようと思います」と意欲的でした。

ちなみに、コーディネーターの大橋さんはストレスがたまると紙に書き出し、客観視できるようにするそうです。さらに、「悩みや愚痴をミュージカル調で声に出すと、すごく楽になりますよ」と打ち明けると、会場は笑いに包まれました。駒田先生は「生活習慣を見直すのは難しいけれど、少し意識して行動することで、目覚めが良くなり、起きているときにイキイキと過ごせます」とアドバイス。皆さん、眠りについて考えるきっかけになったようです。

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会場のホワイエでの展示に参加者は興味津々

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