イベントリポート

美しい所作と和の心 「名門ホテルで学ぶ日本料理の食卓作法」体験記

ホテルオークラ東京と日経ウーマノミクス・プロジェクトの初のタイアップセミナーとなる和食のテーブルマナー講習が3月8日に開催されました。本格的な会席料理をいただきながら和食作法の基本や美しい所作を学ぶセミナーは人気が高く、当初30人だった募集定員を40人に増やしましたが追加分もすぐに完売しました。日本料理の真髄にも触れられるセミナーで具体的に何を学び、何を感じたのか――日経ウーマノミクス・プロジェクトの事務局スタッフ(33)による体験記をお届けします。

「箸使いに始まり、箸使いに終わる」

仕事と子育てに追われて慌しい毎日。子どもに食卓でのマナーや箸の持ち方をしっかりと教えたいと思っていても、そもそも自分がきちんとできているのか自信がない――。そんな折、ホテルオークラ東京で開かれた和食テーブルマナー講習を体験してきました。本格的な会席料理をいただくのは友人の結婚式以来。少し緊張して会場に向かいました。

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セミナーには20代から60代まで幅広い年齢層が参加。和食のテーブルマナーを学びながら「山里」の会席料理と会話を楽しんだ

会場はホテルオークラ東京2階にある英ビクトリア朝様式のメイプルルーム。じゅうたんが敷き詰められた豪華な広間に和服の女性が並び、気分は高まります。ウエルカムドリンクをいただいて、円卓に。セミナーには一人で参加する方が多く、テーブルでは自然と自己紹介が始まります。茶道などで和のマナーに普段から触れられている方から、私のようなまったくの初心者まで幅広い年代の女性が集まりました。

和服姿が美しい講師の菊池理子さん(和食・天ぷら「山里」アシスタントマネージャー)にまずは正しい箸の使い方から学びます。指を添える位置に改めて意識を向け、間違っていないかチェック。難しかったのは箸の上げ下ろしです。まず器を持ち上げてから箸を持つ、両手を順に使って箸置きに置くといった所作は、慣れるまでは意識して行う必要がありそうです。この箸使いが自然体でできるようになれば、心にもゆとりがある洗練された女性に見えるのかなと思います。和食は「箸使いに始まり、箸使いに終わる」といわれるそうです。

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和食テーブルマナー講師として10年以上のキャリアがある菊池理子さん。「仕事の接待やお祝いの席などに今日の作法を役立ててください」

前菜、お吸物、お造り・・・順々に出てくるお料理に沿って、菊池さんから作法の解説をいただきます。いつも「パカッ」と開けていたお吸物の蓋は、「の」の字を書くように回して蓋の裏に付いた露をこぼさずに開けます。「露切りの所作」というそうです。そして、蓋を少し開けたときに、器に閉じ込めていただしの香りを楽しみます。

お造りは手前から食べると盛り付けが崩れにくい、手を受け皿にするのはNGでお懐紙を代わりに使う、焼き物の魚は左の上からいただくなど、日本料理を美しく、おいしく味わうための作法も色々と教えていただきました。

日本料理と陰陽五行説

初鰹と鯛のお造りをいただいている時に、ホテルオークラ東京の和食調理総料理長、澤内恭さんが登壇しました。ホテルでは「親方」と呼ばれています。「四季があり山と海があるこの風土で繊細な日本料理が作り上げられた」と力説され、だからこそ日本料理には「走り・旬・名残」といった食材の時々のよさを引き出す心とワザがあるといいます。

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「日本料理は引き算の料理」と説明する澤内恭さん。出汁を引く、灰汁を引く、湯引きなど食材の欠点を少しずつ取り除いてうまみを引き出すという

最近は世界の無形文化遺産に登録され、海外でも一目置かれる和食です。かつては外国人客に日本料理を味わっていただくのにナイフとフォークを置いていたそうですが、今では外国人客も箸を上手に使って食事をするといいます。

印象的だったのは「陰陽五行説」に基づいているという日本料理の真髄の話です。和食の包丁には陰と陽の面があり、器にも陰と陽があり、お造りの切り方と盛り皿は「陰陽」に沿っているといったお話を紹介してくださいました。また和食には5つの調理法があり、5色のバランスで盛り付けているそうです。和食の奥深さを耳からも味わうことができました。

作法は食事と交流を楽しむために

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季節の食材をふんだんに使ったメニュー。初鰹は宮崎県から、鯛は愛媛県からなど全国各地から取り寄せ、彩りも春を感じさせる

その後でてきた焼き物、煮物、お食事とどれも美しく格別な味わいです。そしてデザートは絶品の小倉・苺添え抹茶アイス。やさしい甘さで心がほどけます。食事作法に気を使いながらコースを食べ終えた満足感から、同席となった方とも会話がはずみました。

名門ホテルの豪華な会場で、美食を味わいながら一段上の作法・教養が身につき、新たな出会い・交流もある一石三鳥のスペシャルセミナー。テーブルマナーは共に食卓を囲む人、料理をつくってくれる人、給仕してくれる人、そして自分自身が食事を楽しむためにあるもので、決して堅苦しいルールではないということに気づいた講習会でした。これからは日々の暮らしにも取り入れ、丁寧な所作を心がけようと心に留めた2時間半となりました。

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