イベントリポート

「シャンパーニュ物語」~名門ホテルのソムリエに学ぶ楽しみ方

ホテルオークラ東京と日経ウーマノミクス・プロジェクトのタイアップセミナー第2弾「シャンパーニュ物語~美しい泡の魅力と映画の素敵な関係」が6月14日、同ホテルのメイプルルームで催されました。2種類のシャンパーニュ(シャンパン)と相性の良い和洋の料理を味わいながら、チーフソムリエの渡部明央さんからシャンパーニュにまつわる映画の話、おいしさの秘密、意外な味わい方など盛りだくさんの話を伺いました。参加者から時折驚きの声も上がる興味深い内容です。セミナー終了時にはすっかりシャンパーニュ通になった80人の女性たちの笑顔と拍手に会場は包まれました。

名画「カサブランカ」の銘柄に込められたメッセージ

名門ホテルでの結婚披露宴を思わせる豪華な雰囲気の会場でセミナーは始まりました。ワイングラスにシャンパーニュが注がれ、まずは「乾杯!」。見慣れた細長いフルート型のシャンパングラスを使わないのは「(口径の大きい)ワイングラスのほうが味わいも香りもより楽しめる」(渡部さん)から。フルート型は泡が立ち上るさまがきれいで雰囲気を重視するグラスですが、フランスの三ツ星レストランではワイングラスが一般的だとか。ちなみに昔は平型グラスがよく使われました。ガスが抜けやすく、味がまろやかに感じられるため、シャンパーニュの酸味が気になるときは平型グラスがお勧めだそうです。

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ホテルオークラ東京のチーフソムリエ、渡部明央さん。手前左側にシャンパーニュが注がれたワイングラス、右側には平型グラスとフルート型グラスが置かれている

最初にいただいたシャンパーニュは「G.H.マム」のコルドン・ルージュ・ブリュットです。米映画「カサブランカ」(1942年)の有名なセリフ「君の瞳に乾杯」のシーンで主演のハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが手にした銘柄です。G.H.マムはドイツ人が設立したメゾン(製造会社)で、渡部さんは「乾杯のシーンには第二次世界大戦におけるドイツを批判する意図が込められています」と解説しました。味は辛口(Brut)。「爽やかな辛口ですが、コクもあってまろやかで、旨みも感じる」(渡部さん)のが特徴です。

もう一つの銘柄は「ルイ・ロデレール」のブリュット・プルミエ。こちらも辛口(Brut)ですが「酸味があってさっぱりした味わい。フルーティーさは弱く、ミネラル感が強い」(同)が特徴といいます。ダイアン・キートンらが主演する米映画「ファースト・ワイフ・クラブ」(1996年)で主人公たちがルイ・ロデレールの最高級品(プレスティージュ)「クリスタル・ブリュット」で乾杯するシーンが紹介されました。今回のセミナーで味わえたのはスタンダード(ノンビンテージ)銘柄ですが、メゾンの多くは厳選したぶどうで作るプレスティージュ銘柄を作っています。セミナーではその代表的な銘柄のリストも教えていただきました。

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フリーフローで味わえたシャンパーニュ「G.H.マム」(左)と「ルイ・ロデレール」。グラスに立ち上る泡は真珠に見立てられ、表面にできる泡の輪は「真珠の首飾り」と呼ばれる

シャンパーニュといっても銘柄によって味わいはさまざまです。2種類の銘柄を飲み比べるセミナーは、味の違いを知る楽しさを感じ、自分の好みを確かめる貴重な機会となりました。渡部さんはさらに「遊び心のある飲み方」としてシェールとニコラス・ケイジが主演した米映画「月の輝く夜に」(1987年)で角砂糖をグラスに入れるシーンを紹介しました。「泡がよく立って、見た目がよい演出法。食事を楽しむには見た目も大事です」とのこと。砂糖はすぐに溶けないので、ゆっくりと味わいの変化を楽しむのもお勧めだそうです。

和食とのマリアージュに感激の声

さて、シャンパーニュとのマリアージュで最初に出された料理が「スモークサーモン コンディメントとキャビア スモールサラダとライブレッド」。キャビアは少しレモンを絞ると生臭さが消え、シャンパーニュとの相性が抜群によくなるそうです。次に出されたのは和食「旬の魚あいなめ唐揚げ 無花果煮卸あん 畳いわし」。口にした参加者からは「おいしい! 和食とこんなに合うなんて」と感激の声が聞かれました。渡部さんは「シャンパーニュはサクッとした食感のものと相性がいい。天ぷらともとても合います」と教えてくれました。

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「スモークサーモン コンディメントとキャビア スモールサラダとライブレッド」(左)と「旬の魚あいなめ唐揚げ 無花果煮卸あん 畳いわし」

3品目は「仔牛と季節野菜のフリカッセ ヌイエ添え」。クリーミーな味わいの料理には重めの白ワインが合うとのことで、シャンパーニュにもぴったり。ほかにも料理の具材として相性がいいものに「白身魚やウドなど苦味のある山菜」を挙げてくれました。ディナーの最後を飾るデザートは「フレッシュ苺と生クリーム」です。酸味が強いイチゴはシャンパーニュの酸味とけんかをしてしまいますが、生クリームを少しつけると相性がよくなるとのこと。参加者は味を比べながらマリアージュの違いを試していました。料理との相性がいいとお酒が進みます。フリーフロー(飲み放題)のシャンパーニュのボトルは予想以上のペースで空になっていきました。

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「仔牛と季節野菜のフリカッセ ヌイエ添え」(左)とデザートの「フレッシュ苺と生クリーム」

「シャンパーニュのブドウはおいしくない」

シャンパーニュはどうして"スパークリングワインの王様"とも言われる特別な存在になったのでしょうか。実はシャンパーニュの原料となるブドウはおいしくないそうです。産地のフランス北東部シャンパーニュ地方はブドウ産地としては冷涼な気候のため、酸味が強くて甘味が少ないブドウができるのです。「食用でもワインにしてもおいしくないブドウ」だからこそ、競争力のあるワインにするためにスパークリングという道を選択し、手間ひまかけて生産することで世界一の品質になったと渡部さんは解説してくれました。

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フランス北東部のシャンパーニュの位置を確認する参加者(左)。セミナは内容盛りだくさんで、飲食を楽しみながらメモを取る姿も多く見られた

シャンパーニュの原料となるブドウは一房一房すべて手摘みです。主にシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエの3品種。シャンパーニュ地方独特の圧搾機を使って黒ぶどうの皮の色がつかないように静かにやんわりと搾ります。搾りすぎないのはブドウのおいしいところだけを抽出するためです。畑ごと、ブドウ品種ごとに別々の樽やタンクで一次発酵させ、それをブレンドして瓶詰めにし、二次発酵させ、最低15カ月以上(通常は数年)熟成させます。出荷前にボトルの口に丁寧に集めた酵母の残滓を抜き、少量のリキュールを加えて味を調整し、コルク栓を打って針金で固定します。これだけ丁寧に手間をかけて作るからこそ、スパークリングワインのなかでも別格のポジションを得たということです。

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シャンパーニュを楽しむための様々な情報を披露した渡部さん。参加者からは「ワインへの深い愛情を感じました」との声が聞かれた

渡部さんはほかにもシャンパーニュをめぐる意外な話を色々と披露してくれました。なぜボトルの上部を覆い隠すパッケージデザインになっているのか、ボトルサイズが大きいほうがゆっくりと熟成されておいしい・・・などなど。会場からも熱心な質問が相次ぎました。スペインのスパークリングワイン「カバ」の飲み方として、渡部さんが「オンザロックで飲むのが好き。レモンピールを少し入れて」と答えると、参加者からは「えーっ」という驚きの声。多くの参加者にとって知らなかったこと、役に立つ情報が盛りだくさんのセミナーとなりました。会社の同僚と参加した都内の40代の女性は「シャンパーニュの楽しみ方を教えていただき、楽しい時間でした。また参加したいです」と笑顔で会場を後にしました。

◆第1弾タイアップセミナー「名門ホテルで学ぶ日本料理の食卓作法」の体験記はこちら

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