イベントリポート

「未病女子対策」でいつまでも健康美人に、神奈川県でウマゼミ初開催

日経ウーマノミクス・プロジェクト実行委員会主催のジブン磨き!ウマノミゼミナール「あなたらしく輝くための未病女子講座」(協賛:大塚製薬、横浜銀行、後援:神奈川県)が3月7日、横浜市内で開催されました。神奈川県内でのウマゼミ開催は初めて。県が推進する「未病女子対策」(女性特有の健康課題改善を通じた女性の活躍支援)をテーマに、働く女性の未病(健康と病気の間の状態)の改善や健康促進につながるダイエットや女性ホルモンについて学びました。

やってはいけないダイエット

神奈川開催第一弾となったセミナーには、会場満席となる100人近い参加者が集まりました。最初に慶應義塾大学SFC研究所上席所員の本田由佳さんが「健康的に美しくダイエットするコツと科学」について講演。本田さんは1992年に新体操の神奈川県団体代表としてインターハイに出場した経験があります。2週間で8キロ減量するなど新体操で経験した極端なダイエットや、妊娠・出産・子育てがきっかけで、女性の健康について研究するようになりました。

mibyo_honda750x500a.jpg
「健康的に美しくダイエットするコツと科学」について講演する本田由佳さん

本田さんが、やってはいけないダイエットと指摘するのが「朝食抜きダイエット」「カロリー制限を意識した野菜中心ダイエット」「食事を取らずに運動するダイエット」「トマトやリンゴなどの単品ダイエット」です。日本の若年女性の摂取カロリーは1970年代をピークに低下傾向で、肥満度を表すBMI(体格指数)や生まれてくる赤ちゃんの体重も下がっています。やせすぎは低栄養や骨密度の低下などを招くほか、疫学調査から「生まれてくる子どもの健康に影響を与える恐れがある」と報告されています。

ファッション大国フランスでは、社会問題となっている拒食症を予防するため、やせすぎモデルを規制する法律ができました。一方、日本では細身のスタイルが格好いいとの風潮が根強く、今なお、やせすぎモデルの起用が目立つそうです。ミスコンテスト応募者の3人に2人がやせすぎ、との調査結果もあり、筋肉量が極端に少なかったり、貧血になったりするケースが出ています。

本田さんは昔の自分の骨密度データをスライドで示してくれました。本田さんの15年間の体型の推移を見た産婦人科の先生は「妊娠・出産・子育ては骨量増加の最高のチャンス」と話したそうで、本田さんは「6歳まで抱っこマンだった息子に感謝している」と笑いました。また若いころに比べて4センチ以上、50歳のときより2センチ以上、身長が縮んだら「骨粗しょう症を疑いましょう」というアドバイスがありました。ダイエットの本当の意味は「やせる」ではなく、ギリシャ語で「生活様式」、英語で「食生活」だとか。未病は病気と健康の間にあり、ダイエットは未病女子対策にもなるのです。

mibyo_honda750x480.jpg
本田さんは自らの骨格と骨密度データを示しながらダイエットの意義を説いた

健康美ボディーを維持するための3つのポイント

ワコールの調査によると、女性には大きく10代(16~18歳)、20代(24~26歳)、30代(37~39歳)と3回の体型変化のポイントがあります。24~26歳は大人の女性としての完成期を迎え、37~39歳は急激な体重増加が始まり、体型がどんどん変化し始めます。歳を重ねると、なんとなく丸くなっていきますが、体型の変化があまり見られない人がいることが分かりました。そうした人には持久力や筋力がある、疲れにくい、ぐっすり眠れている、ストレスをうまく解消している、などの特徴があるそうです。

さらに、行動や意識について話を聞くと、「美しい姿勢や歩き方を心がけ、体をよく動かすなど活動的な日常生活を送っている」「暴飲暴食をせず、規則正しい食生活を心がけている」「体の変化に応じた下着をつけている」などの結果が出てきました。健康美体型を維持するコツは「運動・食事・下着」ということが分かります。

筋肉は脂肪の1.2倍重いので、筋肉を付けたら見た目は引き締まり、体重が増えます。「体重ではなく筋肉量を目安にしてほしい」と本田さん。肝心のたんぱく質をとるにはローストビーフやレバーのパテがお勧めだそうです。

mibyo_memo750x450.jpg
健康美ボディーをつくるための4つのポイントについてメモする参加者

本田さんによると、健康美ボディーをつくるためのボディープランニングには4つのポイントがあります。第1は現状を把握すること。基礎体温や婦人科検診によるホルモンバランスなど、自分の身体を知る必要があります。第2は目標設定、どうなりたいかを決めることです。体脂肪率22~27.9%、BMI19~22、BWH(バスト・ウエスト・ヒップ)のバランスは1対0.7対1を目標にしてください。第3は戦略を練る、どう取り組むかを決めます。カラダを作るために、栄養面では海のもの・山のもの・大地のものを食べ、できるだけ7色そろえることが大切。運動は週に150分、もしジムに通えなかったら会社などで上のフロアのトイレに行くなどこまめに動き、休養も忘れずに。最後の4つ目は実行、継続です。基礎体温グラフをつけたり、体重・筋肉量・体脂肪量をチェックしたりしてください。

健康美のための生活の食卓は「抗酸化」「抗糖化」「抗炎症」がキーワードです。血糖値をコントロールするために白い食べ物や甘いものを控える、たっぷりの野菜と良質の油をしっかり取るなどの配慮が欠かせません。肉類、魚類、卵、豆腐や納豆など植物性たんぱく質、乳製品、野菜か海藻類、果物、炭水化物――。「この8種類で栄養のバランスがよくなる」と本田さんは話しました。

女性ホルモンと更年期症状と大豆イソフラボン

次に横浜労災病院産婦人科部長の茶木修さんが「産婦人科医が教えます!女性ホルモンを知って美しく輝く秘けつとは」というタイトルで講演しました。茶木さんは更年期医療、女性医学、骨粗しょう症の治療が専門で、産婦人科医としての立場から女性の骨粗しょう症の治療や研究に取り組んでいます。

mibyo_chaki750x500.jpg
女性ホルモンと健康について講演する横浜労災病院産婦人科部長の茶木修さん

日本人女性の平均寿命と健康寿命の間には13年の差があり、人生の約7分の1を日常生活に制限があって自立していない状態ですごしています。「女性が楽しく健康な生活を送るためのサポートをするのが産婦人科医の仕事」と話す茶木さんは、「女性の健康と美容を考える場合、女性ホルモンが重要な意味を持つ」といいます。女性は歳を取るごとに卵巣が小さくなり、女性ホルモンをつくる能力が低下するにつれて、のぼせや発汗、不眠やゆううつなどの症状が出てきます。閉経前後の女性にみられるこうした症状が、日常生活に大きな影響を及ぼし始めると、更年期障害と呼ばれます。

更年期症状の治療法として茶木さんオススメなのが「ホルモン補充療法」です。これは閉経後の女性に女性ホルモンを投与して女性の健康を維持・増進することが目的で、米国では1940年代から普及してきました。茶木さんは「女性ホルモン補充療法は単に更年期障害の治療だけではなく、骨粗しょう症や脂質異常症などの予防にも有効」とアドバイス。ただ、米国で乳がん発病の危険性が高くなるとして臨床試験が中止になったことがあります。茶木さんは「ホルモン補充療法は比較的安全で有用な治療法ではあるが、すべての女性に適応するわけではなく、使用する際にはリスクとベネフィットを考慮する必要がある」と指摘しています。

大豆や大豆イソフラボンに関する研究も進んでいます。日本人の心臓病による死亡率は欧米に比べて低いほか、日本人の骨粗しょう症による大腿骨骨折率が米国の半分にとどまることなどは、「日本人が欧米人より大豆や大豆イソフラボンを多く摂取しているため」と考えられているそうです。女性の健康維持には生活習慣・食生活も重要で、「大豆イソフラボンの代謝物であるエクオールは幅広い効果と安全性が期待される」と茶木さん。エクオールに期待される作用としては更年期症状、乳がん、肌のはりやしわ、骨粗しょう症、動脈硬化、高脂血症などがあるそうです。65歳以上の人が寝たきりになる原因の中には、女性ホルモンが絡んでくるものもあります。茶木さんは「女性が美しく輝くには健康を維持することが大切で、自分の身体について正しく理解することが重要だ」と話していました。

mibyo_party750x450.jpg
講師への質問や参加者同士での歓談でセミナー後の交流会は盛り上がった

セミナー後の交流会では神奈川県の健康・未病担当局長の井上従子さんが県の推進する未病女子対策を紹介しました。参加者の皆さんが講師の方々に積極的に質問したり、楽しく歓談したりする姿が見られました。「普段はなかなか話をきけない産婦人科医からのアドバイスが参考になった」「今まで疑問に思っていたことが理解できて良かった」「専門的な内容を分かりやすく説明してくれた」「今まで間違ったダイエットをしていた」といった感想が聞かれ、非常に有意義なセミナーとなりました。

会員登録すると、イベントや交流会への参加、メールマガジン購読などご利用いただけます。