イベントリポート

聖地「熊野」へのいざない、和歌山タイアップセミナー

「働く女性のオン・オフに効く、聖地熊野へのいざない~熊野那智大社御創建1700年・西国三十三所草創1300年を迎えて~」と題したセミナーが2月18日、東京・大手町の日本経済新聞社で開かれました。公益社団法人和歌山県観光連盟と日経ウーマノミクス・プロジェクトの特別タイアップセミナーです。国内外から多くの観光客が訪れるエリアへの関心は高く、130人を超える参加者が熊野信仰の背景や熊野古道などの魅力に触れる会となりました。

日本神話にみる聖地熊野

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國學院大學神道文化学部教授の茂木貞純さん。「日本神話や、神武天皇の建国伝承の中に熊野はたびたび登場している」という

セミナーではまず國學院大學神道文化学部教授の茂木貞純さんが「熊野信仰の源流」について講演しました。神社本庁勤務を経て2005年から母校で教鞭をとっている茂木さんによると、古事記や日本書紀など日本神話の中に熊野がたびたび登場しています。

例えば「因幡の白兎」を助けた神様が殺されそうになったとき、祖神がこの神を木の国(紀伊国=現在の和歌山県)に逃がしました。五十猛命(いたけるのみこと)という神様が植物の種を持って天降り、日本をことごとく青山にしましたが、この神が紀伊国の祖神といわれ、茂木さんは「この神様のおかげで日本が緑豊かな国になった」と強調しました。

日本書紀には「イザナミという神様が紀伊国有馬村に埋葬された」という記述が残っています。また神武天皇建国伝承にも熊野は登場します。神武天皇が九州から瀬戸内海を東上して大和に進軍しようとしたものの、失敗しました。その後、熊野に迂回して賊軍を平定し、初代天皇として即位しました。

熊野三山は熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の3神社の総称です。

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過去世の救いと病気平癒を祈る速玉大社。本宮大社、那智大社とあわせて熊野三山とよばれる

本宮大社はすべての人を来世に極楽往生に導くとされ、速玉大社は過去世の救いと病気平癒の祈り、那智大社は現世の救いが得られる、といいます。茂木さんは「この熊野三山を一体として信仰するようになった。こんなに古いものが残っている場所はほかにないし、熊野は昔から聖地だった」と話しました。

熊野古道を歩く、熊野の魅力を撮る

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「神倉神社の勇壮な火祭りにとても感動した」と語る写真家の山本まりこさん

次に写真家の山本まりこさんが「熊野古道を歩いています。」というタイトルで講演しました。山本さんは設計会社に就職したものの、「やっぱり写真が好き」とカメラを持って一人旅に出発、そのままフォトグラファーに転身しました。2014年秋から熊野古道を歩き始め、伊勢路約170キロを踏破、現在は中辺路(なかへち)を歩き、トータル220キロ地点に到達したそうです。

休みが3日ほどあると、首都圏にある自宅から新幹線と特急を乗り継いで熊野古道を訪れるという山本さんは、自分で撮影した写真をスライドで紹介しながら、熊野ならではの体験を楽しそうに紹介してくれました。

熊野でオススメのグッズは速玉大社のなぎ守りです。樹齢約1000年の御神木「ナギの木」の実で奉製したお守りで、家内安全や縁結び、海上安全の信仰があるそうです。現地のスイーツでは仲氷店のかき氷がおいしいとか。清流、古座川の水を72時間かけて製氷した、純氷のかき氷です。

神倉神社で毎年2月6日に行われる勇壮な火祭りに、山本さんはとても感動したそうです。白装束に荒縄を締めた約2000人の「上り子(のぼりこ)」と呼ばれる男子が御神火を移した松明を持ち、神倉山の山頂から538段の急峻な石段を駆け下ります。

熊野古道を通る大門坂は、熊野詣で栄えた当時の面影を美しく残し、「那智山」に向かって石畳が続きます。有名な那智の大滝は、朝6時半ごろに撮影したそうです。「誰もいない朝のうちに、滝の音に負けないように大声を出しながら撮影した」と、その時の様子を振り返りました。

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山本さんは自分で撮影した写真を見せながら、熊野の体験を紹介。「那智の大滝は大声を出しながら撮影した」と振り返る

また、本宮大社に向かう際に大雨に遭った経験から「上着や靴など山に登る準備を怠らないで」という山本さんですが、「雨上がりのしっとり濡れたコケなど、雨が降ったからこそ撮影できる風景もある」といいます。 ほかにも山の中で会った女性と宿泊先のホテル近くで再会したり、SNSで熊野古道を発信したら多くの人が協力してくれたりした、など多くのエピソードを交えた講演でした。

弘法大師信仰の中心となる聖地

フリーアナウンサーの河西美紀さんが司会を務めたトークディスカッション「熊野詣にまいりましょう~和み、和らぐ。和歌山からはじまる旅~」では、茂木さんと山本さんに加えて、女優でタレントの村井美樹さんが、熊野詣が盛んだった平安時代の華やかな衣装をまとって登場しました。ちなみに、熊野古道大門坂の夫婦杉のそばにある茶屋では、平安衣装を着て写真撮影や周辺散策を楽しむことができるそうです。

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平安時代の衣装で登場した女優でタレントの村井美樹さん。「昨年から和歌山と縁がある」という

村井さんは世界遺産検定を持ち、歴史や旅好きで知られています。「大河ドラマ『真田丸』の影響で九度山を訪ねて慈尊院に行くなど、昨年から和歌山と縁がある」と話しました。慈尊院は女性の参拝者がよくお参りに訪れますが、その願いは「おっぱい」にまつわることが多いそうです。子宝や安産、授乳から乳がん平癒まで様々で、参拝者が作った「おっぱい絵馬」が奉納されています。

また、村井さんも訪れた高野山の奥之院は、弘法大師信仰の中心となる聖地です。最も奥に位置する御廟(ごびょう)では、弘法大師が今もなおそこに生き、世の中の平和と人々の幸福を願い、瞑想を続けていると信じられているそうです。

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左から司会の河西美紀さん、村井さん、茂木さん、山本さんが参加したトークディスカッション。熊野の魅力やオススメルートなど話題は多岐にわたった

茂木さんは熊野の魅力について「真っ青な海、断崖絶壁、白い砂浜、黒々とした樹木など手付かずの自然が残っている。千年前も二千年前も同じだったかもしれない」とアピール。さらに「那智大社などの近くに宿泊して早朝に参拝すると、千年前の人の気持ちが分かるのではないか」と話しました。 山本さんは「熊野古道を歩き始めてから、ようやく自分に自信が持てるようになった。伊勢路を170キロ歩く、本宮大社へ行く、などの目標ができたし、歩くことによって自分が生まれ変わったような気がする。これから緑がきれいな季節になるので、皆さんもぜひ歩いてほしい」と強調しました。 村井さんは「何も情報がないと観光スポットを見過ごしてしまうことがあるので、ぜひ事前に知識を入れてから熊野古道を訪れたい」と話しました。

最後には那智勝浦町観光協会による景品つきのじゃんけん大会もあり、世界から多くの人が訪れる熊野の魅力と、その旅の楽しみ方を深く掘り下げたセミナーに彩りを添えました。

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