イベントリポート

家計のバランスとりながらお金を準備、人生100年時代を楽しく

お金に関する知識って大事だと思いながら、いざ学ぼうとすると、なんとなくハードルがありますよね。難しく感じるし、先々を考え始めると不安にもなるし。でも、働き女子の人生を豊かにするには、習得は避けて通れません。やさしく、分かりやすく教えてもらえる機会があると聞き、10月18日に東京で開かれた「今すぐ役立つ! 働き女子のマネーセミナー」(主催:アクサ生命保険、あんしんFPパートナー=東京・千代田、企画協力:日経ウーマノミクス・プロジェクト)に足を運んでみました。

働くことが一番の収入源

会場に集まった女性は約80人。机の上にノートと筆記具をそろえる人も多く、準備万端といったところです。まず、社会保険労務士かつファイナンシャルプランナーで、経済エッセイストとしても活躍している井戸美枝さんの基調講演「働く女性のライフプラン~人生100年を楽しく生きるために」が始まりました。

井戸さんは働き女子に向けてマネー戦略のポイントを3つ挙げました。「人生100年と社会保障のかかわり」「医療・セーフティーネットの確認」「自分の年金の作成」です。

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井戸美枝さんは雑誌などに連載を持ち、著書も数多い

1963年で153人だった日本の100歳以上の高齢者は今や7万人近くに達し、その9割を女性が占めます。女性の4人に1人は95歳まで存命。個人差があるとはいえ、一人では生活できずに医療や介護の世話になる「不健康な時代」がやってくるとも言われています。統計によると、女性ならこの期間(平均寿命と健康寿命の差)は平均約13年。医療介護の費用に預金を充てるつもりなら、「75歳時点で800万円を持つようにしましょう」と助言します。

だからといって、備えを優先してお金に振り回されてはいけないと井戸さんは忠告します。「充実した日々を送りながら、どうためて殖やすかが大事です」。具体的には「家計のバランスをとることが最も大事」と強調します。

ここで基本となるのが所得です。健康で働き、お金を稼ぐことに勝る収入源はありません。「定年後、雇用延長などで会社にいるのか、独立するのか、どんな働き方をするのかを考えます。そして、稼げる職を複数見つけるなどお金の入口を増やしておくことは、一番の財産になります」。定年後も働ける道を今から用意しておくわけです。そして、収入を踏まえ、いかに早く効率的に貯蓄と投資を殖やすのか、消費をどの程度にするのか、収支をみながら身の丈にあった生活にすることが大切と説きます。

社会保障は整備、過度な心配不要

「病気になったらどうしよう」と気になりますが、井戸さんは「心配しすぎることはありません」と断言します。社会保障が整備された日本では、飢え死にすることや病院にいけないなんてことは、まず起こりません。もちろん、それだけではすべて賄えないこともあります。そこで「お金を貯めるのか、保険に入るのかなどを考えてください」。リスクをどのように想定し、どんな対策を打つのかは、人それぞれ考え方があります。自分にあった組み合わせを考えるのが大事だそうです。

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勤め先の福利厚生を確認し、活用することが大切と井戸さん

病気に対する備えである健康保険は自己負担部分が3割。しかし、3割でも高額になる場合もあります。かかった医療費が100万円なら30万円支払うことになりますね。健康保険制度には、医療費の自己負担額に上限が設けられています。「高額療養費制度」と呼ばれる制度です。収入によりますが、所得が28万~50万円であれば、約9万円が上限。健康保険のきく範囲内では上限以上を支払う必要がありません。また、療養のために働けなくなって会社を休んだ場合、給与などから導き出す「標準報酬月額」に応じて、休んだ4日目から1年6カ月間、健康保険から1日あたり「標準報酬日額」の3分の2が手当金として支給されます。

企業によりますが、健康保険組合ではさらに優遇措置が用意されている場合もあります。「勤め先の福利厚生を確認し、それでも不足する分を用意すればいいんです」と井戸さん。病気のためにお金を抱え込む必要はないそうです。

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熱心にメモを取る参加者も

人生100年時代への対応で忘れてはならないのが、誰もが経験する退職後の生活です。井戸さんは「自分で年金をつくるということが欠かせなくなります」と呼びかけます。

まずは60歳あるいは65歳からどのぐらい収入があるのか、シミュレーションすることから始めます。ベースとなるのは公的年金。日本年金機構の「ねんきんネット」を使えば、いくらもらえるかが簡単にわかります。おおまかに言うと、65歳から国民年金が年約80万円、会社員などは厚生年金が平均約120万円。これは収入によって異なります。ここに企業年金が加わります。一時金だけか、企業型の確定拠出年金に加入しているのか、確定給付年金なのか。どのような企業年金に加入しているのか様々です。勤務先はどうなのか確認が必要です。確定拠出年金に入っているのなら、インフレの影響も考慮して、投資を視野に入れた方がいいといいます。

安倍政権誕生でお金の流れが変化

年齢を重ねると買い物が減り、交友関係も狭くなります。井戸さんは年間の支出として現役世代の70%程度を目安として生活をミニマムにしていきましょうとのこと。生活を見直していけば、収支バランスをあわせることは難しくないといいます。

最後に井戸さんはこうまとめました。

①女性は100歳まで生きる可能性が高く、元気であれば楽しい。生活を支える公的年金は目減りする懸念があるため、働き続けられ  るスキルを身につけておく。
 ②社会保険、企業の福利厚生を確認し、備えは足りない部分を補填する心構えで。不安になる必要はない。
 ③会社を辞めたり、体が言うことを聞かないようになったりすると、お金が必要になる。無理のない範囲で、今を大切にしながら積
  み立てやすい環境をつくることが必要。

「ひとつでもいいので、明日から実行してもらえれば」と締めくくりました。

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マネー環境の変化を強調する熊谷周一郎さん

第2部の「キャリアアップの為のマネーセミナー」にはあんしんFPパートナーの熊谷周一郎さんが登壇。お金をためる目的や目標額の話が中心だった第1部に対し、具体的にどのようにお金をためるのかを中心に講演しました。そこでは、①安倍晋三政権下では2%というインフレ目標の実現が推し進められる一方、金利は低いままで、お金の流れが変わったことを認識する必要がある ②どんな目的でお金をためるのか、ライフプランを設計することがなにより大切になるーーといったポイントとともに、人生100年時代を楽しく生きるためのお金のため方の例などが紹介されました。講演終了後にはファイナンシャルプランナーによる個別相談も設定され、盛りだくさんの時間でした。

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