イベントリポート

「夢をカタチにするために」 理系女子学生キャリアセミナー

日経ウーマノミクス・プロジェクト(NWP)実行委員会は10月9日(日)、理系女子学生を対象にしたキャリアセミナーを上智大学・四谷キャンパス(東京・千代田)で開催しました。北海道から沖縄まで全国から約70人の大学生・大学院生が参加。東京大学大学院情報学環教授の大島まりさんの基調講演や企業から提示された課題に挑戦するグループワークなどを通じて、それぞれの夢をカタチにするためのヒントを探りました。

「自分を過小評価せず、積極的にチャレンジを」

NWP初となる理系女子学生向けセミナーは、「日ごろ研究室にこもりがちな理系学生が社会との関係性を考え、これからのキャリアについて考える機会を作りたい」という現役学生有志の「集まれ理系女子!実行委員会」と共同で開催しました。セミナー冒頭で挨拶に立った同委員会の猪爪舞花さん(大学4年生)は「様々な専門の理系女子学生が全国から集まりました。たくさんの学生と交流する機会を思う存分楽しんでください」と呼びかけました。

パネル対談には「シンデレラテクノロジー」を研究する東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員の久保友香さんと、視線の動きで仮想世界を操作するヘッドマウントディスプレーを開発する米FOVE(サンフランシスコ)の最高経営責任者・共同創業者の小島由香さんが登壇。自らの経験談を通して、学生たちにこれからのキャリアを考えるヒントを伝えました。

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パネル対談をする久保友香さん(左)と小島由香さん。右は司会の渡邊紗希さん

久保さんが提唱するシンデレラテクノロジーとはプリクラやスマホアプリなどで日本の女の子が自らの姿を加工・公開し、新たなアイデンティティーを作る技術を指します。こうした先端的なビジュアルコミュニケーションが未来のコミュニケーションを探るヒントになるとの仮説に基づき、久保さんは数学的なアプローチから研究を進めています。「子どものころから数学が大好き」で研究の道に進みましたが、大学院の時に何を目的にするかで立ち止まったそうです。「迷ったときは自分が本当にこれをしたいというものに頼るしかない。後になって他人や社会のせいにしない選択をしてほしい」と話しました。

小島さんは大学卒業後、ソニー・コンピュータエンタテインメントとグリーを経て、26歳の時にFOVEを起業しました。もともと起業は考えていませんでしたが、自分がやりたい企画を実現するには起業するしかないと決断したそうです。「人生の時間を何に使うかは、どんな自分をつくるかということ。自分がなりたい道を見つけたら、リスクをとってそこに時間を投資したほうがいい」と学生たちに語りかけ、「女性は男性に比べて自分を過小評価しがち。チャンスがあればもっと積極的にチャレンジしてほしい」とアドバイスしました。

「社会をデザインする側になれる」

基調講演した大島まりさんは、東大大学院情報学監と東大生産技術研究所の教授です。流体工学が専門で現在は血流を力学的に解析し、臨床にフィードバックする医工連携の研究を手がけています。福山雅治さんが数学者を演じたテレビドラマでは難解な数式を監修しました。理系女子が欧米に比べて少なすぎる日本の現状に危機感を抱いている一人です。

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基調講演する大島まりさん。「日本は理系の女子比率を高めなければならない」という

講演では自らの研究経歴や家庭生活の話などを交えながら、科学技術が社会に果たす役割が急速に大きくなっている状況を説明。「今は科学技術が社会をデザインする時代。科学技術と社会を結ぶ接点である理工系は社会をデザインする側になれる」と強調しました。そのうえでこれからの社会に求められる人材のスキルについて解説。自らの専門知識だけでなく、複数の異なる分野の専門家と連携して問題解決に当たるためのコミュニケーション力やチームワークの必要性などを挙げ、キャリア形成に向けての貴重なアドバイスを与えてくれました。

「20年後の自分の姿を想像してください。皆さんは働き盛りで、家庭を持っていることもある。強くしなやかに科学技術の力でそれぞれの夢をカタチにしてください」。学生への温かいエールで講演を締めくくりました。

セミナー終了後には懇親会を開催しました。参加した学生たちは、登壇者3人のほか、JFEスチール、新日鉄住金ソリューションズ、日産自動車で働く理系出身の女性社員たちと和やかな雰囲気で質疑応答や意見交換をし、まるで女子会のような盛り上がりでした。

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