イベントリポート

就職のその先を見据えて 女子学生のためのキャリアセミナー in 熊本

女子大学生に働くことについて考えてもらうキャリアセミナーを、日経ウーマノミクス・プロジェクト実行委員会は毎年開催しています。これまでは都内の会場だけでしたが、今年からは地方にもセミナーの舞台を広げました。2016年の地方開催は札幌、新潟、熊本、静岡、岡山の5カ所。11月29日に熊本大学で開いたセミナーには、4月の大地震を経験した学生約30人が集まり、企業で活躍する先輩女性の経験談に耳を傾けました。

「周囲に"信頼の貯金"をつくる」

kumaoto07_480x294jpg.jpg
熊本大学で開いた女子学生のためのキャリアセミナー。働くというテーマに関心がある男子学生も2名参加した

4月の熊本地震では現地の大学生も被害や避難生活など大きな影響を受けました。「女子学生のためのキャリアセミナー in 熊本」は、被災した大学生たちの力に少しでもなれたらとの思いで企画し、熊本大学キャリア支援課と共同で開催しました。キャンパスには修繕中の校舎など地震の爪痕がまだ残っていますが、文学部、教育学部、法学部、工学部、医学部、自然科学研究科の大学1~4年生と大学院1年生の学生が元気な姿で参加。自らの将来について考える機会となりました。

セミナーではまず日本経済新聞女性面の佐藤珠希編集長が「自分らしく社会で活躍するために今、知っておくべきこと」と題して講演しました。女性を取り巻く仕事環境の現状と今後について説明し、これからのキャリア形成に当たって押さえておくべきことや女性が活躍する会社の見分け方などを解説。長い仕事人生を自分らしく働き続けるために意識すべきこと、大切なポイントを学生たちに示しました。

聴講した学生からは「周囲に"信頼の貯金"をつくるという話が印象的。自分を助けてくれる人を得るために大事にしていこうと思いました」(3年生)「プライベートと仕事は対立するものではなく、私生活の充実と仕事のシナジーを自分で作り出すという考え方は目からうろこでした」(3年生)などの感想が聞かれました。

「達成感ややりがいが人生を豊かにする」

kumamoto03_680x420.JPG
企業で活躍する先輩女性らによるパネル討論。社会人になっての苦労やそれを乗り越える方法など話題は多岐にわたった

社会人によるパネル討論には東京海上日動火災保険の馬原優美子さん、NECソリューションイノベータの村田奈々さんらが登壇しました。馬原さんは熊大の卒業生で社会人8年目、熊本で勤務しています。村田さんは理系女子のエンジニアで社会人4年目、勤務先の福岡から駆けつけてくれました。

大学の後輩たちを前に馬原さんは「学生時代は社会に出るのが不安で、できれば働きたくなかった」と当時の心境を素直に打ち明けました。しかし「東京海上日動に入社して実際に働いてみると達成感ややりがいを感じられ、今は充実した日々を過ごしている」と働くことに対する考え方の変化を語りました。熊本地震の際には損害保険の意義を改めて認識するとともに、人と人とのつながりを感じる機会も多くて「この仕事をやってよかった」と心から思ったそうです。馬原さんは3歳のお子さんがいる母親でもあり、産休・育休を経て職場に復帰しました。「育児をしながら長く働いて、しっかりと経験を積んでいきたい」と仕事への意欲を話してくれました。

kumamoto04a_mahara680x400.jpg
東京海上日動火災保険の馬原優美子さん

村田さんは学生時代からキャリアを積んで働く女性に憧れ、夢と希望を持って入社したタイプです。新入社員時代は研修時のテストに何度も落ちましたが、「絶対できる」との思いを持ってめげることはなかったといいます。エンジニアとして顔認証技術を使ったイベント向けシステムや、SNS(交流サイト)から収集されるデータを分析するシステムなどの開発に携わっていて、「初めて自分がプログラムした製品が実際に納入先で動いたときは達成感を得て自信になった」と振り返りました。女性社員が少ない職場ですが、「雰囲気もよくて働きやすい」といいます。社員の女性比率は少しずつ増えているそうです。

kumamoto05murata680x400.jpg
NECソリューションイノベータの村田奈々さん

「学生時代に感じた差、就職後の努力で埋められる」

パネル討論の最後には学生たちへのメッセージをいただきました。馬原さんは「就職活動では偏見を持たずに色々な会社を訪問するのを勧めます。事前の情報と現場で感じる雰囲気は違うので、ここで働きたいという会社を見つけてください」とアドバイスしました。村田さんは「会社でも社会でも女性活躍を支援する動きが強まっているのを実感しています。自分がやりたいことを見つけ、就職がゴールではなく、その先まで見据えて活動してください」とエールを送りました。ほかにも「学生時代は就活にも苦労してコンプレックスを持っていましたが、いま思うのは人との違いはごくわずかでしかないこと。社会に出て努力したら、その差はすぐに埋められる。長い目で将来設計をしてください」との声もありました。

kumadai_koryu680x400.JPG
交流会では学生たちが社会人の先輩女性に積極的に質問していた

セミナー後は交流会を開きました。参加した学生たちは登壇した社会人の先輩女性たちに自分の進路や悩みなどを相談したり、質問したりしていました。「先輩たちも同じような不安を抱えていたのを知り、将来は自分次第だと思いました」(3年生)「実際に働いている方の話を聞いて、働くイメージがわいてきました」(3年生)などの声が聞かれ、多くの学生がセミナーから何かをつかんだ様子でした。

会員登録すると、イベントや交流会への参加、メールマガジン購読などご利用いただけます。