その02 フィードバックセミナーをルポ

メソッド化と2段階での生活改善。
「まるのうち保健室」に行って
今日から理想の
身体づくりを始める。

オッツカちゃん オッツカちゃん メモ帳

各種測定やアンケートから導き出される自分の身体に関する判定結果と、それに向けた改善セミナーをワンコインで受けられる「まるのうち保健室」。前回のセミナーリポートに続いて、今回は「Will Conscious Marunouchi」プロジェクトを運営する三菱地所の村田紗江さんと一般社団法人ラブテリのアシスタントで、「まるのうち保健室」の公認カウンセラーである豊永彩子さんへのインタビュー。なぜ「まるのうち保健室」を始めたのか? 生活を改善するためのセミナーのポイントは? 人気セミナーの裏側を聞くことができた。

摂取カロリーは戦後レベル。
まるのうち保健室から働く女性の課題が浮き彫りになった。

初めに、このプロジェクトがどのような背景で発足したのかを教えてください。

村田:「まるのうち保健室」も今年ですでに3期目。スタートは2014年で、「Will Conscious Marunouchi」というプロジェクトとして動き始めました。働く人の健康を考える必要性はこれまでも言われてきましたが、14年は「女性の活躍」がよりいっそう聞かれるようになったころ。忙しく働いている女性たちに、健康的にイキイキと働いてほしいという願いがあり、丸の内という、働く女性の多い街から彼女たちを応援することを始めたんです。

プロジェクト全体ではどのような取り組みを行ったんでしょう?

村田:大きくは2つです。女性の健康をハード面とソフト面、両方から支えていくことでした。ハード面は主に、丸の内エリアにおいて女性専用クリニックなど女性が健康のために利用できる施設を整備し、周知させる取り組みをしました。
 ソフト面での取り組みが、この「まるのうち保健室」に代表される、ヘルスリテラシーの向上ですね。女性たちが自分の身体を詳しく知ったうえで、意識改革や生活改善をしていけるよう、「まるのうち保健室」を実施することにしました。

豊永:私たちラブテリは、元々は妊娠・出産にまつわる女性の健康状態に関して大学や企業とともに研究を実施していたのですが、その中で妊娠・出産がピークとなる年齢層の働く女性に関し、栄養状態の悪さが指摘されていました。働く女性のみに関するデータが不足していたために、きちんと裏付けされた改善案を出しきれずにいたんです。そこで「まるのうち保健室」で身体や食事の基礎知識を参加者一人ひとりに指導するとともに、働く女性たちの身体に関するデータを収集 。データと専門知識から導き出される課題や改善へ向けた方法を考案し、提示していきたいと考えていました。

これまでにわかった働く女性たちの課題とは、どんなものですか?

豊永:やはり栄養・睡眠・運動の3つが不足していることが、大きかったです。特に栄養不足は顕著で、アンケート(BDHQ食事調査票による過去1ヵ月間の食事調査結果)から算出された女性たちの1日の平均摂取カロリーは、戦後日本人の平均摂取カロリーレベルと変わらなかったんです。

戦後レベル!

豊永:ちょっとびっくりしますよね。睡眠時間も世界平均より大幅に短いことがわかりましたし、参加者の8割の方が「座り仕事が中心」「座っていることがほとんど」というアンケート項目に該当する結果となったんです。

何をどれだけやればいい?数値で具体的に示されるからできる、生活改善のメソッド化。

そんな3つの不足解消へ向けて、「まるのうち保健室」が目指したのはどんなことですか?

村田:まずは計測後にフィードバックを行い女性たちが、自分自身の身体を知る機会を設けました。たとえば体重からだけではわからない、本当の体組成データを知ること。栄養バランスの偏りを可視化し、改善に向けたアドバイスを行うこと。これらが職場のそばで、ワンコインで測定できるという手軽さをフックに興味を持ってもらおうと考えました。

たしかに、雑誌やインターネットで知ったダイエットや健康法を試してみようとすることはあるけれど、その前に自分の身体をきちんと知る機会って多くはないですよね。

豊永:そうですよね。でも、そこをおろそかにしてはいけないんです。
 そうして自分の身体の状態、足りていないものや控えるべきものを知ったうえで、理想的な身体にしていくための具体的な方策を示すことにしました。徹底した「メソッド化」です。やるべきことは人によって、身体の状態によって異なるのですが、その時々何をすべきかが曖昧すぎては結局行動が起こしづらい。たとえば「カフェイン含有量の多い飲料は具体的にこういうものがあり、それらを就寝3時間前からは控えましょう」とか。「このフォームでスクワットを1日10×3回目安で行ってください」とか。具体的な食材や手段、数値を示すなど、わかりやすく、誰でも実践できるようにした情報をみなさんにお伝えするようにしました。

©2015 Luvtelli Tokyo&NewYork.

村田:メソッド化は「まるのうち保健室」での大きなポイントです。現在は「まるのうち保健室」でわかった働く女性の傾向をもとに、みなさんの生活習慣を改善するための効果的なメソッドを3年かけて開発予定。日常生活にて取り入れやすい活動から始め、忙しい毎日の中でも活用できるメソッドを確立し、それを実践してもらうことで、働く女性のパフォーマンスを上げていくことを目指しています。

すぐにできることと、長期的に目指していくこと。
理想の身体づくりは、2段階で始める。

ただ、「わかっているんだけど、忙しくてできない」というのが働く女性としての正直な気持ちなのでは、という悩みもあるのですが……(苦笑)

豊永:気持ちはとてもわかりますよ(笑)。急に生活の全てを変えるというのは、難しいです。ですので、私たちのご提案スタンスとしては、2つの段階で変えていくことを考えているんです。
 たとえば今の食生活に偏りが見られる、不足している食材がある、ということが分かった場合、いきなり栄養バランスの取れた献立を考えてつくりましょう、というのは無理な話。でも、「たんぱく質が足りないから、おやつは甘いものではなくヨーグルトにしてみましょう」とか「鉄分が不足しているから、3食のどこかでこの食材からできたものをプラスしましょう」といった具合に、何か選び方を変えるとか、1つプラスの食材を手にとれるようにするとか。「これならできる」と思ってもらえることを第1段階としてやっていただけることを目指しています。

選び方を変えたり、プラスしたりで、今の生活スタイルのままできることをするのが1つ目の段階で、さらに理想的な状態に近づけるのが2段階目ということですか?

豊永:そうですね。さらにそこからステップアップをして、食事なら自分で栄養バランスを意識しながら食事をつくれるようになることが、第2段階です。睡眠に関しては、カフェインやブルーライトを抑えてまずは睡眠の質を上げ、のちにできれば、睡眠時間を増やしていけるようにしたいところ。運動も同じで、運動習慣がない人はオフィスや家の中でできるスクワットなどから始めて、次は何か運動習慣を身に付ける、といったことを目指していければいいと思います。

©ロコモチャレンジ!推進協議会

なるほど。急に睡眠時間を増やしたり、運動する習慣を身に付けたりというのは、忙しい方にとってはハードルが高いですからね。

村田:丸の内にある飲食店やプロジェクトのパートナー企業を巻き込んでの企画も実施していますよ。働く女性にとって理想的な食事をサポートするコラボメニューの開発やMAPを作成してのオススメメニュー紹介などはすでに取り組んでいます。

豊永:パートナー企業主催でそれぞれの得意分野を生かした部活動やセミナーも開催予定です。「働き女子アーモンド部」というアーモンドの知識や食生活への取り入れ方を学んでいく部活。それから「働き女子の健康生活のすすめ」という、女性の身体と健康について学びながら美の追求を目指すセミナーなどが開かれます。その他にも、それぞれの企業が持つ強みや専門知識に関連したものを現在検討中。「まるのうち保健室」で生活全体の改善を考えたのちには、さらに自分に必要だと思う部活やセミナーに、ぜひ楽しみながら参加していただきたいですね。

なるほど! 自分でやらなければならないことだけでなく、飲食店や企業など、利用できるものがたくさん増えてくると、生活改善も少し楽しくなりそうです。
そうやって主体的に楽しめるのが「まるのうち保健室」の意義ということですね。

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