いよいよ東京マラソン当日!
トレーニングの自信とともに、嶋田さんは完走を目指す。
写真提供:オールスポーツコミュニティ
2017年2月26日、午前9時10分。東京マラソン2017の号砲が鳴ると、約 36,000人のランナーたちが都庁前をスタートした。これまでこの企画でトレーニングをサポートしてきた嶋田幸子さん(47)も、そのひとり。当初は「ノリで応募したら当選しちゃって」と語っていたフルマラソン経験ゼロの彼女が、ついに42.195キロ先の東京駅前のフィニッシュを目指して走り出した。今回のリポートは、そんな彼女のフルマラソン前々日と当日に密着。ついに完結編です!
『東京マラソンEXPO』は一大イベント。
本番はすでに、ここから始まっていた。
フルマラソン本番2日前、東京ビッグサイトに現れた嶋田さん。ここで開催されている『東京マラソンEXPO2017』でナンバーカードを受け取るのが目的だ。が、そこは単にナンバーカードを受け取る手続きだけの場所ではない。東京マラソンに関する展示や撮影スペース、さらには協賛企業による応援ブースなどなど。広い会場が東京マラソン一色で埋めつくされている。いやがうえにも、ランナーの意欲が高まる。取材スタッフの期待も高まる。
ひととおり会場を巡る。ランニングウエアやシューズの展示に興味津々の嶋田さん。機能的であるだけでなく、とってもオシャレ。走ってみようかな、という気にさせるグッズがずらり。大塚製薬のブースでは、この春に新発売となる新商品『ボディメンテ ゼリー』が、事前に申し込んだランナーに提供されていた。「スポーツをした後の身体に必要な栄養素を摂取できるゼリー飲料です」とのこと。もちろん嶋田さんもしっかりゲット。
会場全体にあふれる応援ムードに、嶋田さんのモチベーションは、ますます高まったようだ。
「ここ最近は、これまで以上にトレーニングに励んできて、健康状態にも気をつけています」
と笑顔で話してくれた。
さらには「だいたい1キロを6分くらいで走るつもりです」と具体的な戦略を話してくれる場面も。目標をたててトレーニングを重ねることで、あらためて自分の身体や目指すべきところが見えてきた嶋田さん。その気持ちのまま、2日後の本番、がんばってください!
3ヵ月蓄えた自信を携え、いざスタート!!
マラソン当日は、初チャレンジの嶋田さんを応援するかのような、絶好のコンディション。2月とは思えない暖かい日差しが注いでいる。
黒とピンクのウエアの嶋田さん。
「昨日はゆっくり過ごして今日に備えることができました」
冬の朝にもかかわらず顔が上気して見えるのは、ウエアの色のせいだけではないようだ。
「コースの最初が下り坂なので、そこでバテないようにしたいことと、後半の道は石畳になっているところがあるため、そこで足をとられないように、というのもありますね。あとはもう、今日までトレーニングしてきたんで、きっと大丈夫だと思っています」
と話す彼女の言葉に、しっかりとした自信を感じる。大会会長の小池百合子都知事の号砲で、まずは招待選手らがスタート。ややあって、嶋田さんのブロックも動き出した。
写真提供:オールスポーツコミュニティ主役は遅れてやってくる?
ペースは落ちても、表情は笑顔で。
国内最大規模の36,000人が走っていれば、いろいろなランナーを目にする。毎年メディアで取り上げられるような個性的な格好の人。一般ランナーなのに信じられないくらい速い人。沿道に手を振りながら走る人…。一方、沿道で声援を送る姿もさまざま。大声で応援したり、旗やうちわを振ったり、楽器を演奏したり…。東京マラソンが全員参加型の市民マラソンとして、すっかり定着していることが実感できる。
コースの各所には、協賛社が提供する給水所が設置されている。
「冬のマラソンですが、とにかく水分補給だけはしっかり!」
というトレーナーからのアドバイスを、嶋田さんは覚えているだろうか。取材陣一同、まるでわが子を見守る気持ちになっている。
スタートから6時間以上が経過。ここは41キロ地点。嶋田さんのペース配分からして、もうそろそろ…という時間になっても、その姿は見えない。多くのランナーが、あと1キロちょっと、という達成感に満ちた表情で通り過ぎていくのだが。予想以上の気温上昇に、体調が悪くなってないかしら。心配性のライターがしきりに時計に目をやっているそのとき。
カメラマンが大きなひとこと「あ!嶋田さんです」。
「遅くなっちゃってすいませ〜〜〜ん!」
と笑顔で叫ぶ嶋田さんは、とても元気だった。もちろん身体は疲れているだろうが、その表情には余裕すら感じられる。残り1キロ、取材班はコースを先回りしてフィニッシュへ向かう。
タイム6時間35分(ネットタイムは6時間19分)。嶋田さんは初マラソンで目標の完走を達成した。その姿はこれまで何度か見たなかでも、ひときわ美しかった。
見事42.195キロを完走!
そして運動後のケアも忘れずに。
フィニッシュ地点には、トレーニング(詳しくは【その1】【その2】【その3】へ)の指導をしてくれた『R-body Institute』のトレーナー・大浦拓也さんも駆けつけてくれた。たった数カ月でも、大きな目標を一緒に乗り越えたふたりはお互いに嬉しそうだ。
談笑しながらも、大浦さんがひとこと。
「運動後は血流をよくすることを忘れないでくださいね。ストレッチはしっかりと。お風呂にはゆっくり入ること。そうすれば筋肉痛なども軽減できます」
アドバイスを念押しすることも忘れない。
「いやぁでも、いま座ったら二度と立てないくらい、ヘトヘトです」
と嶋田さん。
「周りの応援の声がずっと途切れず聞こえてきて、走りながらすごいなと印象深かったです。
ペースダウンしちゃって、きつかった瞬間もありましたけど、頑張れました。後半は走りながら周りを見る余裕も何か考える余裕もなくなってくるんですけど、その分途中で手に取れるドリンクや食べ物は格別においしく感じました(笑)。
いつもと違う状況だと、いろんなことへの感じ方も変わるんですかね。そういう普段は気づかないことを体感できる面白さもありました」
ちなみにこの翌日、大浦さんのアドバイスを守ったものの、嶋田さんはベッドから起き上がれないくらい疲れていたらしい。しかしそれはおそらく、達成感と満足感のある素晴らしい疲労感だったのではないだろうか。まずは自分の身体を知り、そして目標と計画を立てて、それを達成する。今回のチャレンジを通じて嶋田さんが手に入れたものは、きっと大きいはず。いや、嶋田さんだけでなく、取材陣にとっても有意義な企画だった。がんばる誰かを応援することは、応援する側の刺激や励みにもなるのだ。そうした輪をこれからも広げていきたいと思った。