フルマラソンを乗りきろう!

経験ゼロからのチャレンジ

その3

外側からのトレーニングと、内側からの栄養摂取が、
走るためのカラダをつくる。

フルマラソン完走に向けてのカラダづくり。前回はトレーニング参加のモニター、嶋田幸子さん(47)のトレーニングの様子をリポートしたが(詳しくは【その2】で)、今回は少し専門的なアドバイスをお届けする。1つめは、『R-body Institute』トレーナーの髙田章史さんによる、走るためのカラダづくりの基本。そしてもう1つは、大塚製薬が発行する小冊子『アスリートのためのスポーツ栄養学』から、アマチュアランナーにも参考になる栄養摂取・水分摂取の方法について見ていこう。

カラダづくりは姿勢づくり。
正しい姿勢であってこそ、トレーニングも効果アリ。

フルマラソン、42.195kmを走りきるのは肉体的にも精神的にも並大抵のことじゃない。だからこそ、「できるだけ苦痛のない、故障しない走りができるカラダづくりが肝心」というのがR-body Instituteのトレーニング方針だという。トレーニングという言葉からは、ガンガンと筋肉を鍛えたり、走り込んだりするのを想像してしまうが、「普段の生活から気をつけてほしいことがあります」と髙田さんは語る。

「イチにもニにも大切なのは、正しい姿勢です。正しくない姿勢のまま筋肉をつけたら、全体的にバランスの悪い筋肉のつき方をした身体に仕上がってしまう可能性もあります。おかしな姿勢やおかしな筋肉のつき方になると、日常生活では違和感がなくても、そのまま運動をしていると負担が蓄積していくことになります。とくにマラソンのように長い距離を走るときには、脚などへの負担が大きくなってケガをしてしまうことにもなりかねません」

このシリーズ企画で、何度か出てきたポイントではあるが、やはり姿勢は全ての土台なのだ。脆い土台の上に何を築いたところで、それは崩れやすい。土台づくりをきちんと行うために必要なのはやはり姿勢の意識なのだ。

姿勢の影響は日常にも。
負荷のない生活を心がけよう。

ではここで、正しい姿勢とはどのようなものなのか、髙田さん自身がモデルとなって解説してもらおう。

耳、肩、太ももの骨、膝、くるぶし、が一直線上にくるのが、正しい姿勢だ。そして、手の甲は、身体の外側を向いていることが望ましい。

一方でやりがちな悪い姿勢がこちら。肩が内側に入り、首から頭が前に出て、手の甲も前を向いている。まさしく猫背だ。「ここまで姿勢悪くなんかないよ〜」との声も聞こえそうだが、この姿勢の人は、実はオフィスでよく見られる。そう、パソコン作業をしている人だ。キーボードに手を置くには肩が内側に入り、ディスプレーを見るために頭も前のめり。脚も組んじゃえば、身体はぐにゃぐにゃである。

そういうライター自身も心当たりがある。この記事を書いている最中も、自らの姿勢が気になって仕方がない次第なのだが…。

人間の頭はだいたい4〜7kgの重さがあるため、頭が前のめりの姿勢を支えるためには首や肩に力が入る。これが肩こりの原因だ。さらにこの姿勢で高いところのものをとろうとすると、上半身が動きにくくなるため腰を反って手を伸ばそうとする。ここからくるのが腰痛だ。

「嶋田さんにはフルマラソンのためのトレーニングをしてもらっていますが、姿勢を正すためのトレーニングが必要なのは、激しい運動をする人だけではありません。姿勢の変化は日常生活に支障をもたらすことだってある。カラダづくりは日常生活においても意識してほしいことなのです。自分の身体に不調を感じたら、いきなり運動したり、マッサージに行ったりするよりも、どこが不調の原因かを探ってみることが大切です」

と髙田さんは言う。

なるほど。強いカラダづくりとは、正しい姿勢づくりから。姿勢と運動がセットになってこそ、成果は上がっていくのだろう。美しいランニングフォームで東京の街を走りぬける姿を思い描きながら、嶋田さんはこの日も、姿勢を正すトレーニングに取り組んでいた。

糖質制限は危険?
運動をするためには、エネルギー源となる糖質は重要。

(C)大塚製薬

トレーニングが外側からだとすれば、内側からのカラダづくり、栄養面の管理も大切だ。そこで嶋田さんには『アスリートのためのスポーツ栄養学』(発行・大塚製薬、監修・ 樋口満)を参考にしてもらうことにした。

「食いしん坊なので、同世代の女性よりカロリーは高めかも(笑)」「栄養バランスは気にしてないですが、食品の産地や育成法にはなるべく気をつかうようにしています」。

嶋田さんから聞けたのは、多くの女性とほぼ変わりない食事に対する意識の言葉。フルマラソンに向けて、特別なことはしていないとのことだが…。少し気をつけるだけでいい。走るカラダに役立つヒントを、この小冊子から見つけることができそうだ。

(C)大塚製薬

たとえば1日を通しての食事で、気をつけることは次のとおり。朝食では水分を十分に補給しながら、糖質、脂質などのエネルギー源となるものを意識的に取る。昼食はたんぱく質などを多めにバランスよく。トレーニング前後は消化がよくエネルギーに変わりやすいものを摂取し、トレーニング中はこまめに水分補給を。寝ている間に身体は再生するため、夕食は鉄、カルシウム、ミネラル、たんぱく質、ビタミンなどの要素を取るのがいいのだそうだ。

(C)大塚製薬

とくにトレーニング前後は、すぐエネルギーに変わる糖質が重要。最近では、糖質制限ダイエットの流行で糖質不足の女性が多いとか。しかし、エネルギーがなければトレーニングのパフォーマンスも下がる。しっかり取って、しっかり動けるようにしたい。また、トレーニング直後は、クエン酸を含むものを。疲労回復に一役買ってくれる。

「とても参考になりそうです」と、嶋田さんの納得度は高かった様子。
「すぐに実践できそうなことがありますね」

この前までは「風邪ひいたらどうしよう、ケガしたらどうしよう、とマイナスなことばかり考えていた」嶋田さんだが、いまは「車道から見る東京の街を満喫しながら走りたい。フィニッシュの達成感と充実感を味わいたい」と、ポジティブな意欲が垣間見えるようになった。

さぁ、フルマラソン本番は目前。外側からと内側からのカラダづくりで、完走を目指しましょう、嶋田さん!

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