フルマラソンを乗りきろう!

経験ゼロからのチャレンジ

その1

まずは「走れる身体」を知る。
身体測定からのメニューづくり。

おしゃれで軽快なウエアとシューズ。かっこいいな、と思える女性ランナーの姿をよく見かける。週1回以上ジョギング・ランニングをする成人女性は推定172万人(2014年・笹川スポーツ財団調べ)、その人口は年々増えているという。とはいえ、近所や公園を走るレベルではなく、いざフルマラソンに挑戦するとなると、文字どおり二の足を踏んでしまう人も、準備に戸惑う人も多いのではないだろうか。
ならば、フルマラソンに挑戦しようとしている女性をサポートしよう!ということからスタートしたこの企画。日経ウーマノミクス・プロジェクトの会員を対象にトレーニング参加のモニターを募集し、2016年12月に応募者の中から嶋田幸子さん(47)が選ばれた。2月に開催される『東京マラソン2017』に参加する予定という。では、大会までの約2カ月、私たち取材班も彼女と一緒に、トレーニングの様子からマラソン当日までを駆けてみることにしよう。

キッカケは“ノリ”で一念発起。
フルマラソン経験ナシから、42.195kmは可能なのか?

2016年12月中旬、R-body project社が運営する東京・大手町のコンディショニングセンター『R-body Institute』に、仕事帰りに現れた嶋田さん。トレーニング前に、運動習慣に関して聞いてみた。「太っちゃったのが気になってジムに通い始めたんですけど…なんとなく走っている感じですかね。あとは月1回ゴルフをやるくらいかな」とのこと。2月のフルマラソンに向けても、特に行っているトレーニングはなく、仕事もパソコン中心のあまり動かない業務なんだそうだ。フルマラソンは未経験とのことだったが、今回走ることになったきっかけを聞いたところ、思わず笑ってしまうような答えが返ってきた。「いやぁ…。いわゆる“ノリ”とでも言うんですかね。職場の人たちと“みんなで『東京マラソン2017』に応募しようぜ!”って話になって。倍率が高いから当たらないだろうと安心していたところ、やる気のあった職場のみんなは見事に外れて、運動がそんなに好きじゃないはずの私だけが当選しちゃって(笑)。周囲の盛り上がりに後押しされて、覚悟を決めて走ることにしました」
なるほど。人間、本当に何か新しいことを始めたり、大きなチャレンジをしたりするのは、こんなうっかり追い詰められた状況なのかもしれない。ノリで42.195kmはちょっとキツい気もするが、そういう想いを全力でサポートするのが今回の企画の趣旨である。マラソンを走るのは彼女だけど、心は取材チームと二人三脚。頑張りましょう、嶋田さん。

ポイントは基本動作。筋トレや走り込み
よりも、まずは身体を正しく知ろう。

決意を固めたはいいものの、ただ闇雲に努力したって走りきれるものではない。ましてや無理がたたって、故障してしまったのでは本末転倒だ。自分の身体にあったトレーニングのために、プロのトレーナーの教えを請うていこう。R-bodyでの第1日は、これからマラソン完走へ向けてトレーニングをするために、まずは嶋田さんの身体を徹底的にチェックすることからはじまった。
身体測定の内容は、実にさまざま。その一部を紹介しよう。

棒を持ったまま高く上げ、膝を曲げる。
筋肉と関節の可動性が十分にあれば
手をあげたまましゃがむことが出来るのだが
嶋田さんはまず腕を上げることが
できない…!

片足立ちのバランスを見る。
写真のように上げている足が、がに股に
なっているのはNGなんだとか。

片足片手を上げて体幹チェック!
見た目よりかなり難しいらしく、
嶋田さんは足を上げ切らずにすぐ落ちて
しまう。

腕を伸ばしたり、足を上げたり。嶋田さんは「え!できません!」「きゃー難しい」なんて言いながら、無事、全11のチェックを終えた。ちなみにこれらはどんなことをチェックしているのだろうか。トレーナーの⼤浦拓也さんによれば、「⼈間の基本的動作」に関して⾒ているんだとのこと。「たとえば歩いたり⾛ったりする⾏為は、⽚⾜⽴ちの連続です。他にもしゃがむ動作や腕を伸ばす動作。こういった基本的なものをチェックすることで、⾝体の歪みや正しく機能していない部分などを⾒つけ出していきます」

どれだけトレーニングで速く走れるようになろうとしても、身体そのもののバランスが悪く、適切でない位置の筋肉を鍛えていては意味がない。まずは自分の身体が正しく動いているかどうかを知ることは、とても大切なことなのだ。

女性のウイークポイントは体幹。
身体の中心を鍛えて、安定した身体に。

ここで指摘されたポイントは大きく2つ。ひとつは、島田さんの姿勢だ。

本来は横から見たときに、「耳、肩、太ももの骨、ひざ、くるぶし」の5点がまっすぐになることが望ましい。しかし嶋田さんの写真はちょっとバラバラ。特に耳が肩よりもグッと前に出ている。前から見たときも同様で、腕をおろしたときに、正面に手の甲が見えている。本来は手の甲は横に向いて、正面からは親指が見えている状態が理想であり、嶋田さんは肩が内側に縮こまるように入り込んでいる状態といえるのだそうだ。

フィードバックでは、猫背などの不調に関しても、きちんと「どういう仕組みなのか?」がとてもわかりやすく説明してもらえる。

ズバリ嶋田さんは「猫背」なのである。パソコン作業の多い人は特に、腕を前に伸ばした姿勢で固定されがち。そのまま肩が内側に入る姿勢が普通の状態になり、背中全体が丸まると、猫背が完成されてしまうのだ。

もうひとつ、いくらかのチェックにより指摘されたのが、「体幹」の弱さだ。ここでいう体幹とは、上半身と下半身をつなぎ、支えているお腹あたりの筋肉のこと。嶋田さんはここの筋肉が弱いために、様々な動作で身体を支えきれず、それにより疲れやすくなってしまうことが指摘されていた。
ちなみにこの体幹。⼀般的に、⼥性は弱い⽅が多いのだそう。ちょっとここで、これを読んでいるアナタも⾃分の体幹をチェックしてみませんか。⽤意するものは、姿⾒。姿⾒の前で以下の写真のようなポーズを。頭から背中、脚にかけてまっすぐになるよう意識するのがポイントだ。

この姿勢が取れたら、 そのまま横を向いて姿見でチェック!腰の部分が極端に下がっていたり、逆に上がってしまっていたりした人は要注意。体幹が弱めな可能性があるんだそうだ。インナーマッスルなどを鍛えることで、身体の不調などを改善できるかもしれない。

さぁ、残り2ヵ月。
完走へ向けて独自トレーニングスタート!

身体測定、聞き取り調査と、そのあとに簡単なストレッチを行ったら今回は終了。これらの内容をもとに、嶋田さん専用のトレーニングメニューができる。R-bodyでの定期的なトレーニングに加え、自宅や日常でできるメニューも提供される。さぁここから、嶋田さんの闘いは本格始動するのだ。
本番まで、約2ヵ月。経験ナシ、ノリで応募したフルマラソンだが、努力を重ねる嶋田さんを、取材班は全力で見守っていこうと思う。そのリポートはきっと、マラソンをはじめとするスポーツに取り組もうとしている多くの女性にとって、役立つ情報になると信じて。

記事一覧ページへ