過去開催イベントのレポート

プロに学び、ジブンで作る新聞紙面

京都女子大学×日経ウーマノミクス・プロジェクト

 2016年秋。京都女子大学と日経ウーマノミクス・プロジェクトが連携した「特別講座」が京都・東山にある京都女子大のキャンパスで始まりました。この特別講座の狙いは日本経済新聞社で働く記者や編集者が、京女生に新聞活用の仕方や女性が活躍できそうな企業の見分け方を解説して、就職活動などに役立ててもらうのがひとつです。さらに京都に本社や支店を構える企業を京女生が実際に訪問します。キーパーソンに直接取材して、自分で原稿を書き、その成果を日本経済新聞社の編集のもと12月、日経新聞朝刊のエリア広告別刷り(京都近郊に配布)として掲載します。見て、聞いて、考えて、悩んで、楽しみながら……。通いなれたキャンパスと世界的な観光地としても知られる京の街中を何回も往復し、手足を動かしながら頭を働かせる「体験型」の実践講座です。その特別講座の一コマを紹介します。

女性が活躍できる会社はどれ?

 10月5日。大型の台風18号が西日本を通過する中、教室には3回生を中心に18人の京女生が集まりました。この日はまず、日経新聞で女性面を担当する佐藤珠希編集長が「いまなぜ女性の活躍が必要なの?」と呼びかけ、国内で広がり始めた女性活躍推進の動きを時系列で紹介しながら、これから働き手がどんどん減っていく日本の姿を示して、女性の活躍が経済成長の重要な柱になるわけをひもときました。こうした基本知識は就職活動にも知っておくべきであることから、熱心にメモを取る姿が見られました。

 「ではみなさん、女性が活躍できる会社は(1)~(4)のどれだと思いますか」。佐藤編集長が四択のクイズ形式で質問します。(1)男性社員の残業はやむをえないとするが、女性社員にはなるべく残業をさせないよう上司が気遣う (2)育児中の女性社員には、出張や負荷の高い仕事を与えないよう上司が配慮する (3)育児中の女性社員であっても、家庭の状況やキャリアプランを上司が個別にヒアリングし、本人の意思を確認しながら時には責任ある仕事をまかせる (4)育児休業や短時間勤務制度を長期間にわたり利用している女性が多い――です。学生のほとんどが手を上げたのは事例(3)でした。これまでは事例(4)がモデルのように思われていた時期があったのかも知れませんが、女性は真剣に仕事に向き合う意志を持ち、着実に自立志向を強めているようです。

 佐藤編集長は最後に、これからのキャリア形成で押さえておきたいキーワードのひとつに「ワークライフ・インテグレーション」を掲げました。仕事とプライベートを概念でとらえるのではなく、両者を「統合」し、私生活の充実と仕事のシナジーを自分でつくりだすこと。この考え方は真の意味での「ワークライフバランス」の実現につながりそうです。

数字を知るのも会社選択のひとつ

 特別講座は続いて「成長企業の見分け方」を大阪編集局経済部の小林茂担当部長が解説しました。小林担当部長は入社以来25年、上場企業を主に財務面から取材してきたベテラン記者です。40歳を前に奮起して、自費で週末には大学院に通いながら会計の勉強をやり直したそうです。現在は日本証券アナリスト協会のアナリスト資格ももつ専門家でもあります。日本の経済成長率をみる上で欠かせない実質GDP成長率の推移といったマクロ分析に始まり、世界の経済成長率との比較がグラフやデータで表示されます。そして企業の成長率を見分けるものさしとして掲げた3つのポイントが売上高、純利益、時価総額です。

 特に関西に拠点を置く上場企業の時価総額ランキングをみると、電機・電子部品、医薬品、住宅メーカーが上位にランクインしている特長がわかります。さらに京都に本社を構構える電子部品大手の京セラ、村田製作所、日本電産の3社を具体例に比較しながら、この3つのポイントから解説を重ねました。小林部長が成長企業を見分ける4つ目のポイントとして付け加えたのがROE(自己資本利益率)です。ROEの値が高いほど株主にとっては儲けが大きくなるためです。講座内容は数字が豊富で、だんだんと専門的になっていきましたが、受講生の中には「会計の講義で聞いたことがある」との反応もあり、退屈ではなかったようです。「みなさんが実際に見聞きして、よさそうだなあと思った会社を選ぶのが一番。その際に数字を知るのも会社選択のひとつと思ってください」。これが小林担当部長からのエールでした。

 この特別講座に参加する京女生はこれからワークショップとして、京都企業に出向き、取材・執筆する場面へと進んでいきます。ご期待ください。さあ、あなたも自分の殻を破って、一歩前へ進んでみませんか。

女性の視点でアドバイスする佐藤編集長
豊富なデータを基に解説する小林担当部長