過去開催イベントのレポート

農村を変える女子力~可能性をどう広げるか~

「農村を変える女子力」

 「農業女子」という言葉をご存知でしょうか。全国で今、輝いて農業をしている若い女性たちのことです。農業改革が叫ばれる中、農村や農業に従事する関連産業でも新しい価値観をもつ女子力への期待が高まっています。そこでJA全中などが主催する「ふるさとの食にっぽんの食」全国実行委員会は2月9日、名古屋市で「食料フォーラム2015」を開き「農村を変える女子力」をテーマに話し合いました。その一端をご紹介します。

 当日のパネルディスカッションには、慶応義塾大学の金子勝教授、農林水産省経営局女性活躍推進室の佐藤一絵室長、農業ジャーナリストの榊田みどりさん、専業農家を営むJAとっとり女性協議会の山田繭子さんが登壇し、元NHKアナウンサーの山根基世さんがコーディネーターを務めました。

 佐藤さんは農水省が推進する「農業女子プロジェクト」の旗振り役でもあり、東京で農業女子をPRするイベントなどを手がけました。同プロジェクトには現在全国20~60代の女性約400人の登録があります。農機具メーカーと組んで女性が使いやすいトラクターやなどの開発にも取り組み、農機具メーカーの発想や意識を変えつつあります。

 旅行会社の元添乗員だった山田さんは現在、鳥取県琴浦町で野菜の栽培などに励む食育アドバイザーでもあります。軽トラで毎日、畑と直売所を往復する中で感じるのは、農業におけるコミュニケーションの大切さだと言います。商品にならない規格外の野菜を無駄にすることなくどうやって売っていくか。女性は加工や販売など細かい仕事に向いている面も多いそうで、農業における「6次化」の可能性を説いていました。

 「農業は出荷すれば売れる時代から、いかに売るかの時代に入っている」と強調した榊田さんは、女子力こそが食と農の距離を縮め、農業・農村の固定観念を変えていく原動力になると話しました。売るためには商品に付随する情報やサービスが大切になるため、そこに女性ならではの感性や能力が活かせる余地が多いとみています。

 唯一の男性パネラーとなった金子さんは、農村からの人口流出がとまらない現状を憂いながら、「地方消滅」が現実化しないためにも、都市や地方で暮らす人々が危機感を共有し、農村志向の女性たちを今のうちに農村に定住させるためのモデルも重要になると述べました。収入や子供の教育面で農家に安心感を与えられるような環境づくりをはじめ、農業における意思決定の場に、もっと女性の参加を促す仕組みも大切になると話しました。

 映像で紹介される日本各地で芽生え始めた新たな経営手法やフランスでの小さな農業の事例報告に現われる農業女子の姿に、約200人の女性参加者らは時折うなづいたり、メモを取ったりしていました。当日は千葉県鴨川市の「鴨川自然王国」で農業を営む歌手のYaeさんもステージに立ち、「半農半歌手」としての生活や、農業を土台とした生き様などを軽妙な語りと歌でつづりました。

金子勝さん
佐藤一絵さん
山田繭子さん
榊田みどりさん
山根基世さん
Yaeさん
討論会では農業女子の可能性を広範に議論した